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2007年03月13日
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昭和29年の洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司・紅司兄弟、従弟の藍司らのいる氷沼家に、さらなる不幸が襲う。
密室状態の風呂場で紅司が死んだのだ。
そして叔父の橙二郎もガスで絶命―殺人、事故?駆け出し歌手・奈々村久生らの推理合戦が始まった。


三大奇書の一つと言われているこの作品を読みました。
ちなみに他の二つは、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、夢野久作『ドグラ・マグラ 』です。
竹本健二の『匣の中の失楽』と合わせて四大奇書と言うこともあるそうです。

この中で『ドグラ・マグラ 』はかなり前、中学か高校の頃に読んだ事があります。父の本棚で見つけて手に取ったのですが、ほとんど理解できなくて投げ出した覚えがあります。

だから、この作品も難解なのでは、という不安があったのですが、改訂版ということもあるからか読みやすかったです。

『虚無への供物』は、1964年に塔晶夫名義で刊行されました。
前半を書き上げた時点で乱歩賞に応募し、受賞は逃したものの乱歩の目に留まり、その後に完成したものです。

推理小説でありながら推理小説であることを拒否する、アンチ・ミステリの傑作としても知られています。

ところがそんなことは読んでいるうちに忘れていました。
終盤になるまでは、本格推理として大変面白く読むことができたからです。海外ミステリが好きな人も夢中になれるタイプの面白さだと思います。

ただし、最後には「それでも推理小説を読みますか」と問われている気がしました。そこがアンチ・ミステリと言われるところなのでしょうか。

物語が始まるのは1954年。
『洞爺丸』の沈没事故で二人の犠牲者を出した氷沼家。彼らの一族には呪われた過去があり、不可解な死が続いていました。

やがて氷沼家に連続殺人が起き、登場人物は勝手に推理合戦を始めます。
中には「ヒヌマ・マーダー」と名づけて、事件が起こる前から推理を始めた者もいます。
とんでもないバカミスのような推理もあれば、それなりに説得力があるものもあり。面白いのは推理合戦のさなかに、ノックスの「探偵小説十戒」が持ち出されたり、密室へのこだわりが力説されたりすることです。
それらの仮説が、死を単なる「無意味な死」にしないことに繋がるという考えはユニークでした。

立てられた仮説を別の人が否定し、新たな仮説を披露する。
そのうち捨ててしまったはずの仮説がまた浮上する。

ある時は突き放され、ある時はワナが待ち受けている。

本格推理が好きな人には面白く読めると思います。

戦後という時代の風俗の中に、薔薇、五色の不動尊、誕生石の色などの薀蓄がちりばめられており、文学的雰囲気の中に、いつしかどっぷりと浸かっていました。

鮮やかな色に染め分けられた幻想的な情景も心に残りました。


 








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最終更新日  2007年03月14日 08時29分18秒
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