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テーマ:伝統こけしの魅力(99)
カテゴリ:肘折系
「鴎座」2019年の表紙-佐藤文吉の呪力のこと こけしは祖父文六の作風から徐々に自身の作風が確立される。1961年ごろは文吉のピークと呼ばれ矢内謙次は「頭は丸みを帯び大きく、細めの胴とよくマッチ」「目は細く、長く、大きく彎曲し、筆致鋭く、太い眉とのバランスの妙」「甘美派であっても、アルカイックスマイルが横溢」と絶賛した。その後、身内の不幸がつづき表情は強烈となってゆく。しかし1965年以降、文六の復元に挑戦したこともあって再び生気を取り戻している。その後も強烈な表情がつづくが、天童以後、特に1980年以降になると表情は柔かくかつ深い明るさを帯びてくる。系統としては遠刈田系。佐藤丑蔵の影響もあって肘折系とする考えもある。 文吉晩年の呪力 以上は、こけしには無縁な俳句月刊誌「鴎座」の会員向けに書いたものである。これは意識的に文吉晩年のものを選んだ。文吉独特の強烈な表情は見るものをたじろがせるので、やさしくなった晩年に絞ったわけである。しかしそうはいっても文吉の呪力はいささかも衰えていない。 私は呪力とは魅力と考えている。ただ呪力と魅力を同一視する考えは少ない。文吉の場合は「情味」という言葉で表現されることが多いだろう。 「魅」とは物の怪(もののけ)のこと。「魅力」とは「物の怪の力」つまりは呪力である。しかし一般に魅力とは「人の心をひきつけ夢中にさせる力」で可愛い、美しいとほぼ同義となっているのでやはり呪力がいい。なお「魅力」は明治時代に生れた和製漢語で中国語にはなかったのだが、いまでは魅力が中国に逆輸出、「魅力」(mèilì)となっている。(『精選版日本国語大辞典』参照) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年09月09日 18時08分39秒
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