ただ見して逃げるなんて
「クール久しぶりだな、スリランカはどうだったい?」AとBの間いつもの大理石の階段に黒づくめのク-ルが座っていた。「ごきげんだったわよ、と言いたいところだけど、危なく身ぐるみはがされるところだったわ。」「おや、てことはまだ服を着てたってことかい?」「もちろん、下着はつけてなかったわ。帽子に全財産を入れてたのよ。」「ははーそりゃーいい。で、賊はどうしたい?」「はいどうぞって足を広げたら帰っちゃったわよ。」男は15分も腹を抱えて笑い転げていた。「なんて無礼な奴だ。ただ見して逃げるなんて。」「そうじゃないのよ、しばらくしてそいつは戻ってきたのよ。でもちょうど警官がいてその場で捕まったわ。どうやらゴムを取りに行ってたらしいの。1ダースも持ってたってよ。惜しかったわ。」男はその日1日中笑い転げ、3日ほど会う奴ごとにしゃべりまくった。4日目には男の知らない奴でもその話を知っていた。ただその頃には警官がゴムを3ヶほど使ったということになっていた。