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「落ちこぼれ
和菓子の名につけたいようなやさしさ」 なにげなく手に取った茨木のり子詩集「落ちこぼれ」、はっとするような新鮮な、でも共感することばに満ちています。「落ちこぼれ」ということばを私はそんなふうに捕らえたことはありませんでしたが、言われてみれば「きみしぐれ」や「ぼうろ」みたいにほんのり甘くて口に入れたらほろっと溶けそうな響きですね。 水内喜久雄選・著ということですから、ご本人が選んだ詩集ではないようです。 茨木のり子詩集「落ちこぼれ」 水内喜久雄選・著 はた こうしろう絵 理論社 全部引用したいのですが、著作権にふれるのかな?一部引用だとかえって違ってみえるかもしれませんが、あえて… 落ちこぼれにこそ 魅力も風合いも薫るのに 落ちこぼれの実 いっぱい包容できるのが豊かな大地 本当にそのとおりだと思います。今どんどん包容力がない社会になっているからこそ、このことばをもう一度声に出したいものです。「犯罪を起こす恐れの疑い」のある子どもを監視する社会は索漠としています。 落ちこぼれずに旨げに成って むざむざ食われてなるものか 落ちこぼれ 結果ではなく 落ちこぼれ 華々しい意思であれ ほかに「女の子のマーチ」「わたしが一番きれいだったとき」「自分の感受性くらい」など、詩をほとんど読まない私でも見たことがある詩もあります。さっきから「ししゅう」で変換すると「刺繍」と出るのですが、「詩集と刺繍」という詩もあります。 「汲む」に描かれた立居振舞いの美しい発音の正確な素適な女のひとのことば 初々しさが大切なの 人に対しても世の中に対しても 人を人とも思わなくなったとき 堕落がはじまるのね 堕ちてゆくのを 隠そうとしても隠せなくなった人を何人も見ました このことばにどきんとして、大人になってもどぎまぎしていいのだし、頼りない生牡蠣のような感受性を鍛える必要は少しもないと悟った茨木のり子さんのように、心に留めておきたいと思います。 生きづらいといわれる今の社会の「バイブル」というのがおおげさなら、転んで起き上がれなくなることがないように明かりを灯してくれる詩集です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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