心筋梗塞予防・トランス脂肪酸について
「知っていますか?トランス脂肪酸」というお話を聞いてきました。講師は独立行政法人国立健康・栄養研究所基礎栄養プログラムリーダーの江崎治さんです。国立健康・栄養研究所とは、どういう食事・運動が健康によいのか研究しているところだそうです。 トランス脂肪酸については、カルボキシル基がどうとか、と言われても高校卒業後理科系と縁のなかった私には、そんな単語が教科書に出ていたなあ、という程度。詳しくは、以前トラックバックいただいた、こちらのブログをご覧ください。みやこの日記 江崎先生のお話は、主に心筋梗塞を防ぐ視点からでした。アメリカでは20年間、78,778人のナースを対象に調査が行われ、トランス脂肪酸摂取量と心筋梗塞が比例していることがわかりました。(年齢、喫煙、アルコールなどの影響を補正したデータに寄る)トランス脂肪酸は自然界にもありますが、問題になるのは、工場で不飽和脂肪酸にとろみをつけたり、固形にする過程で副産物としてできるものです。家庭での調理でトランス脂肪酸ができることはないそうです。 バターや肉など動物性の飽和脂肪酸の摂取が少なすぎると脳出血を起こすそうです(多すぎはもちろんよくありません)。動物実験では、トランス脂肪酸は脳出血を増加させ、バターは減少させる結果が出ていますが、人間では、トランス脂肪酸をとって血液検査をするような試験は短期間しかできないので、トランス脂肪酸が心筋梗塞・脳出血を起こすことは、学問上は「仮説」です。 トランス脂肪酸は、フレンチフライ、チキンナゲットなどのファーストフード、コーンチップ、ポテトチップ、ポップコーンなどのスナック菓子、デニッシュ、パイ、クッキー、ドーナッツなど、ショートニング、マーガリン、クラッカー、ホットケーキ、ケーキなどに多く含まれています。といっても、これらの食品がすべてトランス脂肪酸を多く含むわけではなく、メーカーによってばらつきがあります。製造方法に寄るということです。 トランス脂肪酸が多いメーカー名を教えてほしい、表示してほしいという声が出ましたが、論文の段階ではメーカー名は公表できないのだそうです。危険を避けるには、同じメーカーのものばかり食べないことだそうです。 悪い食習慣が心筋梗塞を増やす危険は、喫煙に比べれば小さく(喫煙する女性が心筋梗塞を起こす危険は非喫煙者の8倍)、運動不足や肥満、飲酒なし(意外ですが、全然飲まないより少し飲むほうが長生きするそうです。ただし、飲みすぎはだめ)より、少し高いくらいですが、工場での生産方法さえ変えれば、トランス脂肪酸の量は少なくすることができます。そこで、望ましい方向としては、デンマークのように、工業的に生産される食用のオイルや脂肪製品は、すべてトランス脂肪酸量を総脂肪の2パーセント以下に規制し、消費者がトランス脂肪酸の少ない食品をわざわざ選択しなくてもよいようにする、ということです。コストは少しかかるかもしれませんが、魚の水銀を低くしたりすることに比べればずっと簡単なこと、というのは、そのとおりだと思いますので、ぜひ規制してほしいですね。 心筋梗塞予防のための生活習慣も教えていただきましたので、書いておきます。1.禁煙2.1日30分以上のはや歩き3.魚を1日1回食べる4.適度な飽和脂肪酸の摂取5.コレステロールの摂取量は男性750mg/日、女性600ミリグラム/日未満6.葉酸、ビタミンB6の積極的摂取7.未精製穀類の積極的な摂取8.トランス脂肪酸は少なめに