カテゴリ:本
画家ゴーギャンをモデルにした小説。
サマセット・モームは、映画「華麗なる恋の舞台で」を観てから、読みたいと思っていた作家。 映画から予想していたとおり、とても読みやすく、雰囲気も洒落ていて、読み物として面白い作品でした。 実際のゴーギャンとどこまで同じなのか分かりませんが、主人公はとても強い個性を持ち、すごい存在感で描かれています。 英国の40歳の証券会社の社長が、画描きになるために突然失踪する。 その顛末を小説家が追う形で物語は進行。 フランスで、絵を描きながら底辺の生活をするところの描写は冒険小説の魅力。 画を評価してくれた数少ない人物を追い出し、その妻と恋仲になるところは変わった形の恋愛小説とも(?) 小説家が、画家のタヒチでの暮らしを関わった人達の口から聞き取るところはノンフィクション的な魅力。 いろいろな面白さが詰まっています。 主人公の才能を初めて認めた人物の描き方(健気な献身?)は、芸術に対する作者モームの思いが反映されているのではないかなと。 『作品とは、言うなれば芸術家が歌って聞かせるメロディーであり、それを自分の心で正しく聴くためには、知恵と感性と想像力がなくてはならない』 『天才に恵まれた人は、自分の天分を大きな負担に感じているに違いない。だから、僕らは天才には極力寛容に、辛抱強く接する必要があるんだ』 芸術家の「表現したい(しなければ)」という欲求に突き動かされる行動、人生・・ 破天荒な人生を送るから素晴らしい作品が出来るのではなく、そうせざるを得ない何かを感じた(感じてしまった)者が芸術家になるのかもしれません。 『人が水に落ちた場合には、泳ぎ方など問題にならんだろうが。水から這い上がらなけりゃ溺れ死ぬのだ』 『より有意義な生き方を見つけたからというので、人も羨む地位を三十分かんがえただけで投げ棄ててしまうというのは、精神力のなせる業なのではないだろうか。突然の方向転換を決して悔やまぬというのは、強い精神力を要するのではなかろうか』 月と六ペンスより お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 18, 2009 12:39:02 AM
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