2008/02/20(水)11:38
ハチミツとクローバー 第7話「今、地図のない道を前に」
ハチミツとクローバーの第7話を見ました。
キャンバス/君はス・テ・キ
就職するはずだった会社が倒産するという憂き目に遭った竹本は完全に就職を諦めようとしていた。
それを知った森田や真山は、自分達が責任を持って竹本の将来を考える、などと言い出すと、様々な職業が書かれた紙が入っている箱を用意した。
竹本にやりたいことがないのなら、くじ引きで無理矢理決めてしまおうというのだ。
くじ引きの結果はF1レーサーだった。
そのやりとりを見ていたローマイヤ先輩も、自分がその職業になれると思うことが一番の才能だ、と竹本にアドバイスした。
はぐみは教授の大神から、あるコンクールに絵を出品するよう命じられる。
そのコンクールで賞を取れば、海外留学のチャンスもあるのだという。
はぐみは好きな時に絵を描ければいいのだから留学はしたくない、と大神に答えた。
すると大神は、甘えたことを言うな、と言い放ち、花本の本心を知っているのか、とはぐみに問いかける。
花本の机の上にイタリア留学のパンフレットがあることを知ったはぐみは複雑な心境だった。
森田は竹本の好きなことを知っている、といって1枚の紙を彼に手渡す。
そこには、はぐみの名前が書かれていた。
はぐみのことが好きだと竹本に宣言していた森田は彫刻ではなく、絵のコンクールで賞を獲ることで彼女と向き合おうと決意していた。
「竹本、お前どうすんの?」
「……」
森田の問いに竹本は何も答えることができなかった。
真山は野宮があゆみに興味を示していることを知る。
「山田にあんまり近づかないでもらえませんか?」
「何でお前にそんなこと言われなきゃいけないんだ?」
「付き合いも長いし、大事な友人ですから」
「真山さ、お前、理花さんのこと気に入ってるんだよな?あゆみちゃんのこと、キープしたいんだ?自分に気があるの知ってて、キープしたいんだろ?」
「そんなんじゃありません」
「違うの?じゃあさ、あゆみちゃんのこと生殺しにしといて俺に近づくなっておかしくない?」
「遊び相手だったら何も山田じゃなくてもいいじゃないですか」
「誰が遊びって言ったの?気がないなら、いい加減ちゃんと冷たくしてやれ。中途半端なその態度が一番辛いってことに早く気づけって」
その頃、藤原デザイン事務所には、ある大きなプロジェクトの仕事が舞い込んでいた。それは鳥取での仕事だった。
美和子と野宮は、そのプロジェクトに真山に行かせようとする。
再びはぐみの前にやってきた大神は、コンクールに応募するに気になったかどうか、彼女に尋ねる。
それを断ろうとするはぐみの言葉を遮った大神は、花本の話を切り出した。
実は花本は以前から希望を出していた海外研修を断って、はぐみの側にいることを選んだのだという。
大神はショックを受けているはぐみに、コンクールの傾向と対策が書かれたファイルを手渡すと、描きたい絵はこのコンクールで賞を獲ってからでもいくらだって描ける、と告げる。
「俺ははぐみに自分が叶えられなかった夢を期待してしまっているのかもしれないな。俺さ、お前達のことが羨ましかったんだ」
「え、どうして?」
「好きなことが職業になって、評価されて、原田とお前は建築の世界で輝いてた」
「大袈裟よ」
「それを間近で見てたからなんだろうな。だから、はぐみにも可能性があるんだったら、行けることこまで行って欲しいと思ってる。ま、それも自分のエゴだってこと分かってるんだけどな」
悩むはぐみはキャンバスに向かうのだが、手が動かない。
そして、東京の大学に来ないかと誘ってくれた時の花本の言葉を思い出す。
『俺は、はぐみの絵を沢山の人に見せてやりたいんだ』
竹本の隣に座るはぐみ。
竹本の作ったものは、色んなものでできた塔で、迷ってることとか悩んでることとかが全部作品に出ちゃってしまったらしい。
昔から好きなようにやっていいと言われたら、余計何をしたらいいのか分からなくなっていたという竹本。
「結局僕にはやりたいことなんてないんだろうな。だからさ、はぐちゃんみたいに表現したいことが次から次へと出てくる人ってホント尊敬しちゃうよ」
「私ね、自分の描きたいものだけ描いてたの。自分と得の間には他に何もないと思ってた。でも、違ったの。絵だけ見てればよかったのは修ちゃんがいたからだった。大学に皆に出会えて…絵は自分だけで描いてるんじゃあないんだなって。出会った全てのことが私の絵の中に詰ってるんだなって。竹本くんの作品にもきっとこれまでの経験とか思いとかちゃんと入ってると思う」
「うん、ありがとう」
「私、頑張ることに決めたの。だから、竹本くんも頑張ってね」
はぐみはコンクールに作品を出品することに決めたと大神に報告して、絵を描き始める。
竹本も作品制作に打ち込むのだった。
陶芸をしているあゆみを訪れる野宮。
「陶芸ってさ、面白いよね。もう少しで完成するって思ってても、一瞬で形が崩れちゃうし」
「でも、失敗しても何度でもやり直せますから」
「確かに、恋愛もそうだったらいいのにね。だって、ダメなものはダメでしょ?真山、鳥取に出向することになった」
「え!?」
「お別れの挨拶しなきゃ」
真山は理花への想いが溢れかえり、理花の事務所へ押しかける。
「真山くん、ねぇ、何してるの?」
「当分給料は要りません。役に立つと思ったら此処でまた使って下さい。俺、言いましたよね?必ず戻ってくるって」
「きっと同じことになるから。また私はあなたに頼るだけ頼って傷つけて…」
「いいんです、傷つけても。傷つきませんから」
寝ていた竹本ははぐみからの差し入れに気づき、笑顔になる。
竹本ははぐみの元を訪ねると、はぐみが泣きながら絵に取り組んでいた。
「はぐちゃん…」
《それ以上、言葉が出てこなかった。彼女は必死に戦っていた。自分が決めたゴールに向かって必死に戦っていた。こんなにも泣いている姿からでさえ、感じたのは果てしない強さだった。やりたいことの中で苦しんで泣くのと、やりたいことがなくて泣くのとではどっちが辛いんだろう》
事務所へやってきた真山は辞表を提出し、美和子に理花の所へ戻ると宣言するのだった。
野宮は帰ると事務所を退室し、あゆみも野宮を追いかけて外へ飛び出す。
「野宮さん!!どこでもいいから連れてって」
「じゃ、行こっか」
野宮の車に乗り込むあゆみを見つめる真山。
「真山は追ってくるかもって思った?正直、気分悪いんだよね、こういう使われ方」
「私、やっぱり…」
「そっちが言ったんだからね、どこ連れて行かれても文句言わないでよ」
『皆は何かを目指して必死に走っていた。目に見えない何かに向かって、必死に手を伸ばしていた。そこにゴールはなかったとしても、手が届かないと気づいていたとしても、歯を食いしばりながら必死に前に進んでいた。なのに、僕は一体何をしていたんだろう?ただじっと見てるだけで、手を伸ばそうともしなかった。ただ結果を怖がるだけで足を踏み出すことさえできなかった。皆が懸命に見つけた道を羨ましそうに見ているだけだった。皆とは違うんだと自分に言い訳をして、傷つくのを恐れていただけだった。地図がなければどこに向かえばいいのか分からない。どこに向かうのか決める地図を見てからだと思っていた。でも、それは違っていた。地図がないから迷っているんじゃない、僕には目的地がないんだ。もっと早く進みたくて、もっと前に進みたくて、無我夢中でペダルを踏み続けた』
竹本は作っていた塔を壊して、自転車で自分探しの旅へと旅立つ。