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カテゴリ:音楽
先日の12月10日に第九演奏会が無事終了! 毎年汗をかいて必死で歌い、「ブラボー!」の最後の掛け声を聞くと、 “今年もやったぜ!”とホッとして肩の荷が下り、 たまらない充実感を感じたのだった。 地方の新聞にこんな記事が載った。 私は毎年ソプラノで、昨年同様今年も男性パートの境目で歌った。 ↓ 指揮者の先生はとても厳しいけど、とても素晴らしい音楽性のある「末廣誠」先生である。 私が初めて第九演奏会に右も左もわからぬ状態で出たのは2014年で、その年には青森市の他に五所川原市での演奏会にも参加し、今年で4年目(出演回数は5回目)になるが、その私にとっての最初の先生がこの末廣先生だった。 この先生は一期一会の先生と言われている伝説の有名な名指揮者なので、まさか再び青森市に来ていただけるとは夢にも思わなかったので正直びっくり、そして楽しみにしていた。 24日にはむつ市でも演奏会があるので、そちらでも指揮するらしい。(私は遠いのでむつ市には不参加だけど) その先生が今年実際の私たちの練習を指導してくださった最初の日は11月4日だった。 最初に言われたのはドイツ語の発音についてだった。 「ベートーベンは古い時代の古典の音楽だからドイツ語発音は今風の口語体ではなく、文語体にするべきだから、全部直しなさい」とまず言われ、我々合唱団はもちろん、普段の指導の先生も大ショックだった。 だって、「今年はより今風のドイツ語発音をめざす」と言って、口語体に力を一層入れて、普段の指導の先生が張り切っていたのだもの・・・ 以前末廣先生に指導していただいたときの2014は文語体発音だったのを記憶してはいたが、2015、2016とも指揮者が1年毎に変わり、いずれも口語体発音で歌ったせいもある。 特に昨年の指揮者はIT関連の仕事で大成している人のせいか、非常に今風の人なので完全に今年と正反対。 因みに文語体発音とは、例えば「兄弟」の言葉を「ブリュウデル」と発音する。 一方口語体発音は「ブリュウダー」と発音する。 つまり楽譜全部の発音をそのように直すということなのだ。 それでも、私は2014に出てるので大して違和感がなかったし、得意の巻き舌がバンバン使えるのでかえって好きでよかった。 その後の指導では、「はっきり言う、皆さんは音程が悪すぎます」と。 ソプラノはそんなに注意されずに済んだが、アルトはピッチが下がってしまって、「まるでオカルト映画みたいですね」と。 ピッチというのは、同じ音程でもわずかな幅があり、どちらかというとオーケストラの指揮者は高めのピッチを希望することが多いと声楽家の先生は言っていた。 テノールには誰なのか一人完全に音痴な(音程が全体に届いていない)人がいて皆気が付いていて耳障りだったが、案の定、気付いたと思われ、末廣先生は歌ってる中を練り歩いて一人ずつの音程を確かめていた。 普段の練習では、個人名指し注意は原則ないので、多分本人には自覚がないものと思われるが、たった一人でもそういう人がいると大変気になるものである。 「音程は音楽の基本的な基本です。ピアノのキーをたたいて、自分でその音を出して歌ってみて、音程が合っていればピアノの音と自分の音がきれいに共鳴して響きます。」そう言い、自ら自分でピアノをたたいてその音を歌い、音程の正しさを示してくれた。 そして、「まあ、あと2週間しかないから今更もう音程を直すのは無理でしょう。せめて歓喜の顔で歌って下さい。」と。 「では、第九の曲はどんな意味を持っている曲ですか?」とさらに問われた。 皆それぞれ、「希望、友愛、平和、人類皆兄弟・・・」などと口々に言ったものの、末廣先生は納得した顔をなぜかしてくださらなかった。 皆言葉がなくて困ってしまった。 先生は「あとはないの?」 そして、「歌っている皆さんのいるところが天上の楽園でなくてはいけない、そして、観客に向かって“歌っている私たちのいるこちらにいらっしゃい、この楽園(エリージウム)は本当に素晴らしいところだよ、人類は皆兄弟(ブリュウデル)になるんだよ”と訴えなければいけない。 そのためには皆笑顔で歌わなければいけない」と。 男性の顔が皆怖いとしきりに何度も冗談めかして言い、最後は女性たちに見られたら少しは笑顔になるだろうからと女性たちが前に出て男性たちを見つめたら、ちょこっとだけ柔らかく、でも怖い・・・ 津軽の男にはまず無理だよ・・・ とにかく、すべてが「ああなるほど!」と目から鱗であった。 そして「ベートーベンの第九は元々器楽中心に作られた楽曲で第4楽章で合唱を後で付けたものであるから、ベートーベンは人間が歌うような楽譜として書いていないのです。ですから、皆さんは長く伸ばすところを絶対に息継ぎしてはいけないのです。でも、それでは死ぬので息継ぎは皆一斉に同じところでブレスしないように、それぞれずらしてカンニングブレスしてください」と。 とにもかくにも前日のゲネプロ(舞台の通し稽古)を終え、当日朝からのリハーサル、そして午後2時からの本番となり、夢中で、指揮者の手を見つめ歌ったのであった。 しかし、前列の女性ひとりが男性パートしか歌わないところで口を動かしていたのには驚いて、目を疑った。 普段話してる人なので彼女に聞いたら「どこ歌ってるかわからなかった」んだって。 そして、打ち上げが夕方始まって、末廣先生にサインしていただいた。 前回来青していただいたときは私が初めてで遠慮してしまい、サインを今回初めていただけた。 ↓ そして、宴もたけなわ、下の写真のような風景が。 この女性はオーケストラの団長さん、男性が末廣先生。 この会話が最高だったなあ~ 因みに絶対に他県の方には意味不明と思うので通訳すると、 女性「先生、早く津軽弁おぼえてね。でも、青森っていいところでしょう?先生のおっしゃるようにうまくできないから弾くふり、歌うふりしなくちゃいけないわ~」 末廣先生いわく「青森の人たちは猫をかぶっているよ。夏にあんなにねぶたで人が変わったように飲んで騒ぐくせに、普段は無口だもの」だそうだ。 宴会は立食でいつもの練習会場のテーブルを自分たちでセッティングして行い、かわいらしいオードブルとお酒やジュースがたくさん(ちなみに会費は2,000円) 御馳走の写真を撮るのを忘れたけど、サンドイッチ、鶏の手羽先、杏仁豆腐、カルパッチョ、お寿司、果物・・・ 途中でいろんな方々と話した。 若い男の子が二人来たが、年齢は19歳と21歳で地元の大学生で、普段の声楽指導の男性の先生が教えている大学の学生さん。 その先生が「第九で歌ったら試験なしに無条件で単位をあげる」ということで参加したそうで、昨年からこの先生のおかげで随分と男女とも若返ってきたので、いいことである。 私「食べ物が目当てでここへ来たでしょ?いっぱい食べていいよ。自炊でしょ?どこ出身?」 男子学生「はい、自炊っす。神奈川県です。卒業したら帰ります。」 私「お話相手がこんなおばさん相手で悪いけど」って言ったら、 男子学生「そんなことないっす、結構いけてます」だって。 私たちおばさん「あら~~~~~~~ 全部食べていいよ、手羽先全部持っていきなさい」って言ったら、 しっかりと紙皿に手羽先をこんもり乗せて行ったのであった。 第九のメンバーには小学生の男の子が一人いて最年少だということと、普段いろいろと学習面やら行動面で問題があるけど、とてもクラシックが好きで第九の練習日には早く宿題を済ませて楽しみに来るという男の子がいた。 今年は青森第九35周年だからなのか、いろんな放送局が取材に来ていたが、先日夜の報道番組で第九の練習風景や本番を交え、その子の普段の姿やお母さんのお話しなど放送されたのを見た。 何も知らなかったので、落ち着きのない子だなと思っていたが、なるほどなあと思った。 彼は来年から中学生なので、今度は女性のアルトパートを卒業して、いよいよ男性のパートを歌うつもりらしかった。 他に車いすの女の子もいたり、とにかく、年齢も、経験もバラバラの人間たちが心ひとつにして一曲にかける4ヵ月は本当にすごいエネルギーの結集だと思う次第だ。 末廣先生いわく、 「第九を歌ったあとは、喧嘩などをしてはいけないのだ、 なぜなら友愛の歌なのだから」
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