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2007/01/19
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カテゴリ:オリジ小説
自転車で帰ったあの日以来、敦也君の事をまっすぐにみつめられなくなった。

あの手のぬくもりが忘れられなくて、敦也君の顔を見るたびに、まるで昨日の事のように帰り道の事を思い出せたからだ。


でも、暫く経ったある日。

急に、学級会議が開かれ、先生が話をしはじめた。

「みなさんに、悲しいお話があります。
北上敦也君が、お父さんのお仕事の事情でこの学校をさよならする事になりました。
敦也君、みんなに一言挨拶できるかな。」

先生が、敦也君に話を促し、敦也君は前に立って、恥ずかしそうに俯いた。

「みんな、今までありがとう。
すごく、仲良くしてくれてありがとう。
僕はもうすぐいなくなっちゃうけど、僕の事忘れないでね。」

そう言った顔は、すごく悲しそうだった。

もちろん、私も涙が止まらなくて、お父さんのお仕事がうまく行っていればよかったのに、とか、私も一緒に引越ししたかったのにな、とか。
色んな事を思った。


そして、あっという間に時間は過ぎ、敦也君が引越しする日になった。
その日はちょうど日曜日だったので、みんなが見送りに来ていた。
みんな、思い思いに敦也君を見守っていた。
私は、何を言ったら分からなかったので、遠くから敦也君を見ていた。

その時、敦也君が私の名前を呼んだ。
引越しのトラックは、もうエンジンがかかっていて、すぐにでも出そうな予感がした。

敦也君は、トラックの窓から身を乗り出して、私の手を一生懸命ぎゅっと握ってくれた。
そして

「ありがとう。」

と、ただ一言呟いた。

私も、ありがとうと小さく言って、そのままトラックを見守った。



これが、私の中で、一番最後に北上敦也君と手を繋いだ記憶である。





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Last updated  2007/01/19 03:39:16 PM
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