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カテゴリ:旅について
事前情報との落差で期待を裏切られることも 一年前の今日(8月13日)は、ペトラ遺跡を歩いていた。とても暑い日だったが、乾燥した空気のせいで蒸し暑さは感じなかった。ペトラ遺跡のハイライトは、侵食された細長い谷底の道を歩いた後に突然見えてくるエル・ハズネ神殿の景観だ。 宮田珠巳の旅行エッセイ「ときどき意味もなくずんずん歩く」(幻冬舎文庫:平成23年3月 第13版)には、次のようにある。 「ペトラというのは、ヨルダンにある紀元前四世紀から紀元後四世紀頃まで栄えていたとされる古代王国ナバティアの遺跡で、断崖絶壁に挟まれた岩の裂け目のような細い通路の先に、突然バラ色に輝く神殿エル・ハズネが現れる神秘的な光景があまりにも有名である」 「神殿が見えてくる瞬間」 この著者は、午前七時に入ったのでこれくらいだったろうが。昼頃入った自分は、エル・ハネス神殿前に立つまで、何度観光客用の馬車と出会ったことか。至る所に落ちている馬やらくだの糞にも閉口した。乾燥した糞が舞飛んでいてマスクは手放せなかった。 もちろん、エル・ハズネ神殿だけでなく、その奥にも神殿や石柱が続いて、世界有数の遺跡であることには違いない。しかし、観光化によって古い時代のたたずまいや神秘性が失われていくのは残念なことである。 7年半も単独で自転車による世界旅行をした石田ゆうすけは、「いちばん危険なトイレといちばんの星空」(幻冬舎文庫:平成22年7月)で、大きな期待をもって見学したペトラ遺跡について次のように書いている。 「古代の人々のその驚異的な仕事にはため息がこぼれるのだけれど、肝心の遺跡そのものにはどうも酔えなかった。言ってはなんだけど、巨大なはりぼてを見ているみたいなのだ。本来柱は屋根を支えるもの。しかしここにあるのは岩を削って柱に似せただけの、いわば「装飾」だ。柱は機能として生きていないのだ」 「エル・ハズネ神殿」 人によって感じ方は千差万別だろう。有名な遺跡ほど写真やテレビ映像などによってすり込まれたイメージがあるために、実際に見ると期待を裏切られる場合も多いようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012/08/16 03:09:54 PM
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