[■アウトカム研究＆臨床統計]の記事一覧 | 形成外科医のアメリカ留学計画

EBMを勉強するためのWebsite

EBMを勉強するためのWebsite■CEBM: Centre for Evidence-Based Medicine　　イギリスの Oxford Univ が主催しているEBMに基づく医療を推進するために必要な知識・技術を学ぶためのサービスを提供している。文献検索方法、収集した文献の妥当性評価、実際の患者への適応など具体的な手順をわかりやすく解説しており、非常に実践的だ。また普段よく目にするEvidence levelも提供している。

外科領域におけるRCT (Randomized controlled trial)の難しさ

RCT (Randomized controlled trial)はEBM研究のなかでも1番エビデンスレベルの高い研究手法だ。例えば、新規薬剤"ミシガンシロップ"の有効性をRCTにより調査すると仮定する。RCTとは、被験者を無作為（random）に、■A群：ミシガンシロップを内服する群■B群：プラセボを内服する群に割り付けて、後のアウトカムを比較検討する試験のこと。（http://library.downstate.edu/EBM2/2200.htm より）データの偏り（bias）を最小限にできるため最もエビデンスレベルの高い研究手法として認識されている。両群に生じたアウトカムの違いがミシガンシロップによる可能性が極めて高いことになる。このRCTは一見理想的であるが外科的手術において導入するときに多くの問題が生じる。下記に主な理由をまとめた。A. Difficult to obtain uniformity in surgical techniques?Unlike in medical trials employing standard drug preparations, surgical techniques can vary greatly from surgeon to surgeon. Surgeons also develop technical “tricks” as their experience with a procedure evolves and often personalize aspects of the procedure. These variations are difficult to quantify.B. Timing of surgical trials ?Because a number of operations are often required before a surgeon acquires ample skills in the procedure (known as a learning curve), it is difficult to decide when to start a RCT. C. Blinding difficulties?Ideally researchers and patients are "blind" to the treatment received (i.e. with drug trials a control group is given a placebo). In trials comparing medical and surgical therapies, blinding may be impossible because sham operations are generally considered unethical.D. Feasibility issues?Rare conditions and urgent and life threatening situations cause difficulties with recruitment, consent, and randomization. ?RCTs are expensive, time consuming, and logistically complex.E. Lack of funding and education in clinical epidemiology?While many medical studies are supported by pharmaceutical companies, it is difficult to obtain funding for surgical trials that are unlikely to provide these companies with financial benefits.?Surgeons' knowledge of clinical epidemiology remains poor despite relevant publications in surgical journals.■参考URL・Controlled Surgical Research Trials: Why Are They Important?■参考文献1. McCulloch P, Taylor I, Sasako M, Lovett B, Griffin D. Randomised trials in surgery: problems and possible solutions. Bmj 2002;324:1448-1451.2. McLeod RS. Issues in surgical randomized controlled trials. World J Surg 1999;23:1210-1214.3. Demange MK, Fregni F. Limits to clinical trials in surgical areas. Clinics (Sao Paulo) 2011;66:159-161.■まとめ・外科系領域においてRCTをおこなうのは難しい

Risk factorとPrognostic factorの違いは？

Risk factorとPrognostic factorの違いは？両者は混同して認識されていることが多いが明確に区別する必要がある。■Risk factor-‘Risk’ factors are those which as associated with causing a condition (like smoking for lung cancer, being premature for chronic lung disease, or soft light and wine for falling in love). →健常者がある病気になりやすい因子のこと（例：タバコは肺癌の危険因子）■Prognostic factor-‘Prognostic’ factors are those which, in people who have the condition, influence the outcome (like resectability of tumour for lung cancer, duration of intubation for CLD, or an unhealthy joint interest in home furnishings for staying in love)→すでにある病気になっている人に対し、将来のアウトカムに影響を与える因子のこと（例：肺癌の進行度は予後因子）■参考URL・Risk vs. prognostic factors■まとめ・対象は健常人：どんな因子を持っていると将来肺癌になりやすいのか？＝Risk factor・対象はすでに肺癌：将来のアウトカムに影響を与える因子は？＝Prognostic factor

手の整容面（Aesthetic Outcome）を評価するツール

来年UMに留学する予定のシンガポールのDrの論文を手伝っている。■Handの整容的な軟部組織再建にフォーカスを絞ったReview paperである。今までに同様な論文がほとんどなく非常におもしろいテーマだと思う。手の皮膚軟部組織欠損を皮弁再建する際に従来は機能面重視で、整容面のpriorityは低く見られていた。機能再建が最優先なことに異論はないが、同時に整容面にも配慮した再建が求められている。さらに個人的には手の整容的再建は機能面にも好影響を与えると考えている。ここで問題になるのが"美しい再建"をどのように評価するか？ということ。そもそも整容面の評価はは主観的要素が大きいため客観的評価（＝数値化すること）が難しい。現に、過去の文献を調べてみると■VAS scale■Number scale (0 = normal; 1-3 = good; 4-6 = average; 7-9 = poor; 10 = intolerable) が使用されることが多く、これらの評価法は便利だがやや信頼性に欠ける。　　　　（VAS scale：もともとは痛みの評価に使用される）さらに、Questionnaireとしては■MHQ（Michigan Hand Outcome Questionnaire）がAestheticのドメイン（評価項目）を持っている。現状としてはMHQでの評価するか、または顔面再建、乳房再建で使用されている評価ツール（Questionnaire）を手に応用して使用するのが最適と考えられる。また、手の再建、手の美容治療では評価法を別々に考えた方が良いかもしれない。さらに手のaesthetic outcomeを獲得するうえで重要なPredictors（色調? 皮膚の厚さ？毛の有無？）を今後明らかにする必要がある。この分野はまだまだ未開拓であり、興味のあるところだ。■まとめ・現状における手の再建の整容評価ツールはVAS scale, Number scale, MHQ

Retrospective cohort studyとCase control studyの違いは？

Retrospective cohort studyとCase control studyの違いは？研究デザインは、情報収集方法から大きく２つに分けられる。(1) 研究開始後に生じる情報を集める「前向きの研究」(2) 研究開始前に集めてあった情報だけを扱う「後向きの研究」両者にはそれぞれ長所と短所があるが、一般的には前向きの研究の方が研究の質が高いとされる。なぜなら前向き研究では十分な計画と準備ができるので、情報の不揃いや、研究の質を損なう可能性のある様々な落とし穴を防ぐこと可能だからである。■ランダム化試験（無作為化比較試験）：Randomized-controlled trial （RCT）・例えば治療法AとBを比較したい・対象患者に治療法A,Bを無作為に割り振り、両者の治療アウトカムを比較する・もちろん前向き研究になる・1番労力がかかる大変な研究だが、エビデンスレベルは高い■コホート研究: Cohort study (prospective & retrospective)・例えば脛骨骨折治療後の偽関節発生率に対してタバコ（要因）が与える影響を知りたい・対象集団（脛骨骨折治療患者）を「喫煙＋：A群」と「喫煙ｰ：B群」に分けてその後のアウトカム（偽関節発生率）を比較する・もちろん前向き研究になる★ここで注意しないといけないのはコホート研究の本質は対象集団を未来に向かって追跡しながら情報を収集すること。コホート研究は2つに分類できる。(a) 前向きコホート:Prospective cohort study と(b) 後向きコホート:Retrospective cohort studyこの(b)の"後向きコホート"という言葉が混乱のもと！前向きコホートは現在から未来に前向き調査する。一方、後ろ向きコホートは一旦過去に戻って、過去から未来に前向き調査をする。（参考URL2より引用）■症例対照研究：Case-control study or retrospective study・最初に、既に疾病にかかった人を「症例(case)」として選ぶ。（例：脛骨骨折治療後の偽関節症例）・次に、この「症例」と性別や年齢などの要因が似た人を「対照(control)」として選ぶ。（例：脛骨骨折治療後に順調に治癒した症例）・「症例」と「対照」の双方に対して、疾病の原因と考えられる要因（例えばタバコ、感染の有無など）を、過去にさかのぼって調査し、両者で比較する。・後向き研究になる・観察（追跡）をせずに過去のカルテなどを調査すればよいので上記他研究に比べて楽★症例対照研究は後向き研究なので、前述の後向きコホートとの混乱が生じやすい！■症例シリーズ報告：Case series・学会等で1番良く目にする研究・ある疾患の患者（例：脛骨骨折偽関節）を集めて一覧化して治療効果や合併症率などを検討する・1群のみで比較対照をしないのが特徴■症例報告：Case report (s)・通常、1 (or 2) 例の珍しい症例を報告したもの（例：脛骨骨折偽関節に●●を合併した1例）各研究デザインのエビデンスレベル（上に行くほど高い）■参考URL・乳癌患者のQOL評価の研究手法、評価方法・治験ナビ■まとめ・コホート研究は対象集団を未来に向かって追跡しながら情報を収集する・一旦過去にさかのぼってそこから追跡する研究法を"後向きコホート"という（このネーミングが混乱の素）・症例対照研究は2群（症例群・対照群）を後向き調査し、追跡はしない・症例シリーズ報告は対照がなく1群のみを後向き調査する