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僕とポケットの中の遺書は、波間を漂う

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May 1, 2006
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その日は、眠りにつく前からおかしくって、

理由も無いのに肺臓の辺りがずきずきと苦しくって苦しくって

勝手に涙が流れて止まらないのです、治め様としても治まってくれず

それでも近頃では随分と、そんな感情だって何処かへ行ってしまって

一時に比べれば、そりゃ回数は減ってきたのですが

突然襲ってくるのに私にも仕様がないのです。





それで、泣き疲れてとうとう眠ってしまったのですが、

其処で出てきた娘さんが、『貴方、近くに、死ぬのよ』

そう教えてくれたのです、其れを聞いて、私は、ほう。そうか。道理で。

合点して全てが繋がった様な気がしました、しかし、死ぬるならば

直前まで其れを知らん方がどんなにか楽だろう、そんな事を思いました





死の兆候かはたまた何かは存じ上げないのですが、そこで

私の下顎の歯が、一本、とてもむず痒いのでした

痛い、痛いと呻いて、余りに疼くので、その歯を摘まんで

ぎしぎしと前後に動かして居りましたら、歯、ぐらぐらと歯茎から外れだして

まさか、まさかと思ううちにぽろりと落ちてしまいました

床に落ち、かたんとぶつかる音

口の中に、血液がいっぱい溜って、鉄の味がしました

あらどうしよう、此れは確か、永久歯という歯ではなかったのか、此れが抜け落ちたら

もう永久に其処には歯は生えないのではなかったか

兎に角、あのむず痒い感じが何とも厭な感じで





気付くと、私はえすかれーたの下に立って居ったのですが、

上から、老夫婦がふたり、ゆっくりと運ばれてきて

白髪頭の、眼の中まで白い、肌の色も白い、真っ白なお爺さんが

私の見ている目の前で突然、死んでしまいました

顔面は硬直し、口を開けたままお爺さんは倒れ、

其のままえすかれーたの一番下で、かたん、かたんと何度も

床に吸い込まれてゆく階段のりずむに合わせて、揺れて居りました

お爺さんの死体が、かたん、かたんと揺れている様が

とても滑稽で寂しかったので、私は暫く其れを見て居りましたが

連れのお婆さんはもうすっかり呆けてしまっているので

何が起こっているのか、解らない様子でぼうっとしています

其処に、スーパーの店員らしき人がずかずかと歩いてきて

お爺さんの死体を、ひょいと掴んで、入り口のドアからぽいと捨ててしまって

私は大変驚愕したので、慌てて外に出て見ると

入り口の所に、お爺さんの死体が転がっているのに、誰も、気に止めません

私は、救急車を呼ぶべきなんじゃないだろうか、どきどきしましたが

ようく考えましたら、お爺さんは既に死体になってしまっているので

救急車を呼ばんとしている自分が、ちょっぴり恥ずかしくなったのです

外は、暑い暑い真夏の様でした

噎せ返る程の湿った空気が、風が、びゅうと吹いた様な気がしました

夏だ、ああ夏だ、

私はそう思ったのでした












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Last updated  May 2, 2006 01:33:06 AM



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