カテゴリ:カ行
イエスより 神にノーと 叫ぶ日々
モンモウ病という畸形の病気。伝染性ウイルスか、風土病か、その論争に巻き込まれる医者たちの余りに滑稽で悲惨なリアリズムの世界、それが「きりひと讃歌」です。 医師の小山内桐人を中心に、彼を踏み台にする教授、手を差し出して救えない同朋、彼を支えようとする何人かの女性たち。犬のような姿に迫害を受ける桐人の波乱万丈の生涯。ここに繰り広げられるドラマは、あの山崎豊子の「白い巨塔」と同様、医学会の腐敗と堕落、政界などとの裏での癒着はもちろん、そればかりか、人種差別、生命の尊厳までもが描かれています。そして、桐人の迫害は、名前からしても、キリストを連想させます。モンモウ病と同じ病が全世界のいたるところで見つかっていく中で 、医師会だけでなく、それまで包み隠しにし闇に葬っていた白人社会や教会も暴かれていきます。 この物語の主人公はモンモウ病にかかった桐人ですが、私たちは、彼の同朋でありながら、自らの立場と自分の意志の狭間でジレンマに陥り、さらには狂気なる行動にもいたる男、占部を身近な人間として感じざるを得ないでしょう。彼の悲劇を演じる一語一句の台詞を噛み締めて、この作品を読み返してみたいものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年10月08日 00時04分05秒
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