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どついたれ 銭の世の中 銭だけの奴は
何が残念って、この作品も未完成なのであります。しかも、彼自身が高塚という名で登場する戦争直後のお話。 実は、このお話、描かれている戦争直後ではありませんが、ある事実が裏に潜んでいるんですね。ベルトのバックルを売る男、バックルに漫画のキャラクターを入れようとする男、葛城健二。実は、彼のモデルは「アップリカ葛西」の創業者、大阪で育児用品の卸を営んでいた一介の中小企業経営者、葛西健蔵氏なんですね。彼の父親が営んでいたチトセ家具のチェアーに「漫画の神様」の鉄腕アトムがキャラクターとして使われたんですね。 そんな彼と手塚氏との経緯もあり、手塚氏が経営していた会社の倒産劇の際に、負債者でもあるのに関わらず、手塚氏のために尽力を尽くしたのが葛西氏なんですね。そして、ここに登場する河内のトモやんも八尾のヒロやんも、葛西氏の友人がモデルなんです。 戦後の復興期を、たくましく生きてきた大阪商人の正義感が、のちに手塚治虫を救う事実。そんな二人の出会いで生まれたのが、この「どついたれ」なんですねえ。素敵な裏話があるわけですよ。だからでしょうか、ここに登場する人々、手塚氏を陰で支えた大阪商人の生きざまと友情が生々しく伝わってくるんでしょう。 もし、この作品を未完にせず書き続けていくことができたなら、今頃は真の商人(あきんど)のバイブルになっていたかもしれません。「世の中、銭や~!!」と叫ぶのはかまいません。実際に、そういう世の中になっていることも事実でしょう。でも、実はそう叫びながらも、その根底にある真実が真の商人(あきんど)としてて意義付けられたかもしれないのです。 今や、そんな根底にある真実もへったくれもなく、文字通り「世の中、銭や~!!」の言葉だけのビジネスライクな裏も奥底もない時代になっている気がすると、改めて残念でなりません。この作品が未完成であることが・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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