「スタンドアップ」
今日は先日風邪で体調不良のため半日休んだ残りの有休半日を使い映画を見に行った。一緒に行ったのは、以前の職場から付き合いのあるFさんFさんは看護師で、同じ職場にいたときも患者さんの把握は的確で、記録内容や患者さんへのアプローチも思慮深く信頼していたスタッフの一人である。彼女は二人のお子さんの母親で、実生活でもしっかりした方でまた映画への造詣も深く、映画好きの私にとって映画についてじっくり語り合える数少ない知人の一人だ。本当は評判のクラシカルな恋愛映画「プライドと偏見」を見に行くつもりだったが、上映時間が合わず結局Fさんが見たがっていた「スタンドアップ」を見た。シャーリーズ・セロン演じるジョージー・エイムズは暴力を振るう夫より二人の子を連れ逃げるように両親のいる故郷である北ミネソタの町に戻る。しかし夫に殴られ顔にあざを負った娘に父親の対応は冷たい…。実は彼女の息子は彼女が高校生の時に産んだ私生児でその時より父親と彼女との間には深い溝ができていたのだ。窮屈な親との同居を解消するためにジョージーは旧友のグローリーの勧めで鉱山という“男の職場”で働き始める。(実はそこは父親の職場でもあった)「男から仕事を奪うな!」と罵られ、卑猥な言葉を投げかけられ、過去のボーイフレンドからもセックスを強要されるなど、慢性的な侮蔑や嫌がらせの中で泥にまみれながらも二人の子供を養うため働き続けるジョージー。彼女の生き方に背を向ける息子や理不尽と感じつつも生活のために口をつぐむ同僚達…、慢性的な耐えがたい屈辱のなかである日彼女は意を決して“立ち上がる”・・・実話に基づく物語だそうだが、自分にとって「ミリオンダラー・ベイビー」以来久しぶりに強く感銘を受けた作品だった。決して派手なテーマではないが秀作で、一緒に行ったFさんだけでなく他の多くの観客も心を動かされ涙を流していた様だ。主演のシャーリーズ・セロンは『モンスター』での怪演が記憶に新しいが、この映画では逆境に耐えながらも愛する子供のためそして自分のためにプライドを持って精一杯生きてゆく母親役を演じ、その姿は本当に美しい。またシャーリーズ・セロンを主役に抜擢した女流監督のニキ・カーロにも今回興味を持ち、彼女の監督作品『クジラの島の少女』もそのうち是非鑑賞してみようと思う。男性が見ても充分感動できる作品だが、女性特に幼いお子さんを持つ母親には是非見て欲しい映画であった。PS:珍しく原題「North Country」より邦題の方が しっくりくる映画でもあった