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フィギュアスケート時々バレエ~浅田真央とパトリック・チャン応援記

フィギュアスケート時々バレエ~浅田真央とパトリック・チャン応援記

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2009年02月23日
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日曜日はハンブルクバレエ「人魚姫」名古屋公演(ソワレ)を観て参りました。
主要キャストは、詩人・イヴァン・ウルバン、人魚姫/詩人の創造物・シルヴィア・アッツォーニ、エドヴァート/王子・カーステン・ユング、ヘンリエッテ/王女、エレーヌ・ブシェ、海の魔法使い、オットー・ブベニチェク、でした。
いやはや、とにかくいろんな意味で予想を大きく超えた、凄い舞台だったと思います。
2万3千円という破格のお値段にも納得、かな(笑)。とにかくいろんなことを考えさせられる「人魚姫」でした。
ノイマイヤーの「人魚姫」な訳ですから、普通とは違う舞台になるんだろうな~、と思ってはいましたが、とにかくユニークな演出でしたねぇ。時代設定も、特定の時代を指してはいない感じでしたし?舞台装置なんかも殆ど無い。コンテンポラリーの要素が強く、幕が開いて暫くは、あれ、もしかして失敗したかも、なんて思っちゃいました。人魚達の独特な腕使いは、あれは海中を泳いでいる、ということなんでしょうけど何と言ってもヒロインの衣装が、私には不満でした。平安時代の長袴みたいな感じで、脚が全然見えないんですもん。バレリーナの「脚フェチ」の私としてはかなり不満でしたが(笑)、人魚である以上脚が見えてはおかしい訳ですからこればかりは仕方が無いですよね。海中で自由を謳歌していた人魚姫に、彼女の人生を一変させてしまう大きな出来事が起こります。船上でゴルフ!をしていた王子が海に落ちたゴルフボールを捜しに海中に潜ってきて彼と人魚姫が出会ってしまうのです。海の魔法使いが嵐を起こし人魚姫は王子を助け岸に上げます。え~、話が前後しましたが、そもそもこの物語はアンデルセン本人と思われる詩人が最初に登場し、最初から最後までキーパーソンとなるような重要な役割を演じます。そもそもこの詩人は、エドヴァートという男性に恋をしていて、その彼がヘンリエッテと結婚し、彼のもとからは永遠に去ってしまう・・という詩人の哀しい「失恋」が幕が上がって最初の場面で演じられます。哀しみに暮れる詩人の目から流れ落ちた涙が、海に流れ落ち、その涙が人魚姫を創った、という感じなのです。少なくとも詩人は人魚姫に自己を投影しており、彼のエドヴァートへの想いが人魚姫を創り上げた、そんな感じなのです。当然、人魚姫が恋に落ちた王子と、詩人が愛していたエドヴァートは、同一人物が演じます。詩人の恋敵となってしまったヘンリエッテと人魚姫のライバルとなる王女も、同一人物が演じます。つまり詩人のやるせないエドヴァートへの想いが人魚姫を創り、詩人自身の魂が乗り移ったかのように、同じように王子(エドヴァートと同一人物)に恋し、彼の思い通りに行動する訳ですね。ある意味人魚姫は詩人の傀儡である、と言えなくもないかも知れません。特に最初の内はね。話が進むにつれ人魚姫は詩人の創造物としての地位を超えて、彼女自身の物語として、人魚姫の自立?が始まるのですが。
この演出は、もしかしたら好き嫌いが分かれるかも知れませんが、私は嫌いではありません。

さて、人魚姫によって岸に戻して貰った王子ですが、彼の意識が戻った時眼の前にいたのは、修道院学校の生徒であった王女でした。王子は当然彼女が助けてくれたものだと思い込み、王女と恋に落ちます。その様子を見ていた人魚姫はいてもたってもいられなくなり、魔法使いの手によって、人間の姿にして貰います。人魚姫の脚を隠していた青い長袴のような衣装が剥ぎ取られ、人間の脚を手に入れた人魚姫。しかし慣れない「脚」では思うように歩くことさえままなりません。つい先程までは海の中を自由に泳ぎまわっていた彼女ですが、人間に姿を変えられた彼女はまるで生まれたばかりの赤ん坊のようです。とそこへお約束?の王子とその一団が現れますが王子は人魚姫のことを全く覚えていないようです。王子は彼女を哀れに思ったのか自分の着ていたコートを着せてやり自分の船へと連れて行きます。王子は風変わりな彼女に好意は持っているものの、人魚姫のことを「女性」だとは全く意識していないようです。
とにかく王子のそば近く居られることになった人魚姫ですが、船の上では更なる試練が彼女を待っていました。なんと王女がそこにいたのです。王女はショッキングピンクの眼にも鮮やかな衣装を身に纏い、素晴らしいポワントワークを披露して、王子はすっかり彼女の虜です。一方の人魚姫ときたら・・彼女は上手く歩けないものですから、車椅子に乗せられていました。車椅子に乗った彼女と、ポワントワークで「脚」の魅力を思いっきり披露する王女。素晴らしく好対照な二人です。惨めな人魚姫と輝かしい人間の王女・・
人魚姫は閉所恐怖症に苦しめられます。それはそうですよね。無限大の広がりを持つ海中から狭い船の上の生活へと180度世界が違ってしまったのですもの。舞台に設けられた狭い四角い部屋の中でもがき苦しむ人魚姫は本当に惨めで悲惨で可哀相な姿です。人魚姫というよりはまるで「醜いアヒルの子」そのもののよう。船の上、人間の世界においては彼女は完全に「異分子」で、愛する王子は彼女のことなど眼中にもない様子です。王女も人魚姫に対しては全く悪意など持ってはいません。というかそもそもこんな風変わりな少女が、自分のライバル足りえる、なんて思ってもみないのです。この三人が絡む場面では、人魚姫のとてつもない孤独と、王女のとてつもない残酷さ(悪意など一切無いだけに余計)、が痛いほど感じられ、孤独とは?残酷さとは?などということを考えずにはいられませんでした。ぼろ雑巾のような人魚姫とショッキングピンクの衣装の王女、二人のあまりの境遇の違いに愕然とさせられましたよ。
そして王子は、人魚姫の気持ちに全く気が付かない。王女と同じく、風変わりな少女、面白い少女、くらいにしか思ってはいない。彼もまた、悪意がある訳では決してない。けど・・悪意が無くとも、人間というのはいかに残酷な生き物であることか!自分でそれと気付かなくとも、どれだけ人を傷つけて生きていることか!そんなことを思わずにはいられませんでした。
王子と王女の結婚が決まり、人魚姫はこともあろうにブライドメイドの役を務めることになってしまいます。その時海の魔法使いが現れて、彼女にナイフを渡し、王子を殺すよう命じます。王子の心を彼女に向けさせることはもはや不可能となった今、王子を殺したらまた人魚の姿に戻してやると告げられるのです。私だったら一も二も無くこの誘いに飛びついていたことは間違いありません(笑)が、純粋過ぎるほど純粋な人魚姫に、どうしてそんなことが出来ましょう。けれど、彼女の姉妹達が現れ、彼女に海に戻ってくるよう説得します。魔法使いはあの長袴のような衣装(人魚の尾びれらしい)を見せて、彼女の心を揺さぶります。王子への愛と、人魚に戻りたいという思いの間で揺れる人魚姫。魔法使いは半ば強制的に彼女にナイフを渡して去って行きます。ブライドメイドの彼女は渡されたナイフを衣装の間に隠すようにしてオロオロしています。ロングドレスにタキシード姿の紳士淑女達が登場し(どうでもいいけどこの中に1人もの凄い美女がいた!)、そして遂にウェディングドレス姿の王女と海軍の制服?姿の王子が現れます。結婚の誓いのキスをする二人(またまたどうでもいいけどこの二人は今回3回くらいキスしてたんじゃないの?)。人魚姫、万事休す!夜、つかの間彼女と王子は二人きりになる。このシーンでだったかな?ゴルフボールが現れて王子はあの、海で溺れかけた時のことを思い出す。このゴルフボールは王子が海へ落としてしまい拾おうとして海に潜っていき、人魚姫と出会うきっかけとなった大切なもの。なんだか人魚姫のことを思い出しそうになるけれど、結局彼は彼女のことを思い出すことはない。彼を殺そうかどうしようか迷っている人魚姫にちょっかいを出し、からかう王子。この場面じゃなかったかも知れないけど、人魚姫も一度は王子に刃を向けるのだけど、幸か不幸かそれは成功しなかった。そして最後に二人きりになったその時も、遂に彼女は彼を手に掛けることは出来なかった。自分を少しも愛してはくれず、いやそれどころか「女」「異性」とさえ思ってはくれていない相手を・・
最後のチャンスを逃した彼女は苦しみだす。文字通り、床を転げ周り、断末魔の苦しみに喘ぎ出す。それは命を失おうとしている苦しみから来るものなのか、はたまたどうしても王子に気持ちを通じさせることが出来ない自分自身に対する苛立ちから来るものなのか、それは分からなかった。或いはその両方ともなのか。このシーンでの人魚姫の演技は圧巻。ほんと神懸かってましたね。純粋で不器用な彼女は人間の世界において最後まで「美しく」はない。けど皮肉なことにこのシーンがもしかしたら一番「人間ぽかった」かも知れない。慟哭し、床を転げまわる彼女。文字通り七転八倒した挙句、最後倒れる。倒れ伏す人魚姫。暫くして・・詩人が久しぶりに(と言うのもなんですが)現れる。そして、人魚姫が倒れていた床が段々上昇して行き、暗くなった舞台には星が灯り始める。星が煌く中を人魚姫を乗せた舞台は上昇して行き、人魚姫は立ち上がる。詩人と共に。彼女は天に昇ったのだろうか。それとも詩人がそうさせたのか。いずれにせよようやく訪れた静寂の中、星の瞬く世界で人魚姫はもう一度命を授かったようだった。





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最終更新日  2009年02月24日 06時50分00秒
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