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■古都
僕の目の前のバス。このデザインは、どこかで見たことが・・・ バスの正面上部の行き先表示板を見ると・・・ 「京都外国語大学前」 「国立京都国際会館前」 バスをよく見ると『京都市交通局』のエンブレム。 なるほど、おさがり。 一瞬、自分がどこにいるのか分からなくなるような出来事だった。 中国で日本のモノを見つけることはよくあったけど、だいたい小物だった。しかしバスは大きい!しかも何台も西安駅前にならんでいる。 バスというお古を買ってきて、行き先表示はそのままにしてある。中国らしい。 しかし、古都京都(平安京)と古都西安(長安)。たまたまだろうか?どこかに洒落のきく取引商でもいたのか? 僕はその京都市交通局のおさがりバスで世界遺産の兵馬俑へ向かった。バスは田舎道を走り、西安駅前から約1時間で到着した。 この兵馬俑は、たまたま畑仕事していたおっさんが見つけた、そのおっさんは現在この観光地の副館長、とネタのような話もあるけど、れっきとした秦始皇帝陵の一部である。いまや世界遺産となっている。 秦始皇帝の陵墓の周りに、何千とも言われる(等身大の成人男性だけで8000体以上、戦車並みのもので100体以上)兵馬俑があり、圧倒させられる。 しかし、馬鹿馬鹿しい。秦始皇帝は中国史における最初の皇帝だが、その力を見せつけるためにここまで作らせるのか・・・。 僕の目の前にあるのは一部らしいが、人間のカタチをした圧倒的な数の兵馬俑を前に僕は唖然とした。同じ方向に向かっている人間の形をした兵馬俑を見ていると、少し怖くなった。そして涙も出た。 天安門広場、万里の長城、そして兵馬俑。圧倒的な大きさや迫力、圧倒的な馬鹿らしさを前にすると、僕の涙は出るようだ。 今回は、圧倒的な迫力と馬鹿らしさから涙がでたと思う。 馬鹿馬鹿しくても、ここまでやれば圧倒される。 西安の街でも日本人のバックパッカーたちにたくさん出会った。 西安駅前の同じホテルにも4人の日本人がいた。 目的は知らないけど、彼らも一様に西を目指していた。東へ向かうのは僕だけだった。 最後の街になる西安で、僕はとてもリラックスしていた。旅行が終りに向かっていく中で、宿泊、食事を確保する程度のコミュニケーションは取れるようになっているし、次の目標も北京へ戻るだけ。 ただ純粋に旅の中の時間を過ごしている。 西安は北京や上海ほど都会でもなく、成都ほど田舎でもない。普通の街。古都らしく街の通りは整然としている。 兵馬俑から戻るバスの中で、道路を行く自転車の一団を見ながら、ふと思った。中国と言えば・・・「自転車!」なのに、中国で自転車に乗る経験をしていない。話のネタになるかな?とも思い、自転車を借りてこの整然とした西安の街を走ってみることにした。 ホテルの1階に行き「自転車を貸してくれ」と告げると、座っていたおっさんが、面倒くさそうに申込用紙みたないものを指差した。 僕は黙ってその用紙に名前を書き、お金を払った。 すると今度は「パスポートを出せ」と言う。 なぜ自転車を借りるのにパスポートを預けないといけないのか分からないが、ホテルの中のレンタル屋だし大丈夫だろうと思って渡した。 自転車を返したら、パスポートも返却すると言う。 自転車に乗り、西安の街を風を切って走るなんて「気持ちいい」と思いかけたけど、すぐに大したことない気がした。自転車に乗れば「風を切る」のは当然だし、街路の風景が新鮮なのも西安だから当たり前。 それより自転車のサスペンションが悪すぎてお尻が痛い。 しばらく走って西安の城壁内の南の方まで来た。 スポーツショップを見かけたので、入ってみることにした。ふと、自転車をどこに置こうか?悩んだ。歩道は無駄に広いが自転車は全然止まっていない。よく見ると、見える限り自転車の放置がない。 みんな店にどうやって入るのか?ちょっと考えたが「まぁいいだろう」と店の前へ自転車を置いて店内に入った。しばらくして店から出ると、僕の自転車の前で公安(警察)と警備のようなおっさんが何やらやっている。 僕が自転車に近づくと何やらギャーギャーわめいている。中国語は分からないと言っているのに、中国語のみでわめいている。 中国人はどこでもこんな感じだ。 しばらくすると、紙切れを出してきて「金を払え」と言っている。紙切れを見ると「自転車の駐輪禁止 罰金5元」といったことが書いてあった。 何で、買い物する店の前に自転車を置いてて罰金なのか?と思って、いろいろ日本語で対抗したが、反発していると思われて、公安の数が増えてきてややこしくなりそうだったので、若干、腹立たしいけど素直に5元を支払ってその場を離れた。 たった5元、日本円で60円程度だけど、腹が立つ。5元あれば中国なら道端で「ぶっかけメシ」みたいなものなら食べれる。値段の問題ではない、納得したものかどうか?正当なものかどうか?が支払いには必要だ。 今回は僕が西安の街のルールを知らなかっただけだろう。きっと西安には「自転車」に関する条例がびっちり決められているに違いない、と思って諦めるしかない。 「自転車で駐車禁止も珍しいだろう」というネタが増えた、と思うことにした。 自転車も飽きたので返却に行くと、変わらず無愛想なおっさんがTVを見ていた。僕に気付くと不機嫌そうにこちらを一瞥して「自転車はそこに置いとけ」と指差してから、すぐにTV画面に目を戻した。 「ありがとう」など期待してないが、パスポートは返してもらわないと困る。 僕は腹が立って「パスポート返せ!」と怒鳴ると、おっさんは面倒くさそうに僕を見ながら、手元の引き出しを開けて、僕の方へパスポートを投げた。 あきれて「アホかっ!」と言ってその場から離れた。投げられた自分のパスポートを床から拾い上げる瞬間は、とても悲しい気分がした。 こんなことは、この国だからあることだ。この国で旅行をしていくためには慣れていくべきことだし、ずいぶん自分も慣れてきている、と思っていた。 しかし、外国ではパスポートは命の次に大切だ。こうも軽く扱われたのでは腹も立つし情けない気分になる。 呑気に過ごしていた古都、西安だったけど、ここでも中国を感じた。 京都ではないのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.09.13 21:26:41
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[1995中国旅行(編集期間'07年8月-10月5日)] カテゴリの最新記事
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