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カテゴリ:永遠の桃花~三生三世~全58話
三生三世十里桃花 Eternal Love 第54話「よみがえった記憶」 素錦(ソキン)の企みにより、白浅(ハクセン)は自分が夜華(ヤカ)にとって素素(ソソ)の身代わりでしかないと思い込んだ。 夜華との愛にすっかり自信を失い、酒をあおって酩酊する白浅、そんな姑姑の姿を見た白鳳九(ハクホウキュウ)は胸が痛む。 「姑姑、青丘のため、どうかお身体を大切に…」 「そうね~もし破談にしたら、この青丘で女帝を続けるしかない~もう行って…」 白浅は寝台にばったり倒れ込んだ。 すると揺れる炎が白浅の目にはまぶしく、仙術でろうそくを全て消してしまう。 しかし寝台に置かれた結魄(ケッパク)灯だけは消すことができなかった。 苛立った白浅は起き上がって結魄灯を払いのけると、床に落ちた結魄灯が割れ、吸い込んでいた素素の記憶が辺りに広がってしまう。 白浅は仕方なく割れた破片を拾おうと手を伸ばしたが、うっかり指先を切った。 その時、図らずも素素の記憶が傷口から白浅の身体に吸い込まれ、たちまち素素として過ごした歴劫の記憶がよみがえって来る。 …私が素素なのね?素素は私だったんだわ… その頃、人間界では照歌(ショウカ)が未だ白浅の訪れを待っていた。 人形の素素は照歌の心にあるのが青丘の神仙だけと承知し、大奥様からいくら照歌の夜伽を命じられても頑なに拒んで来たという。 翌朝、白鳳九は姑姑の様子を見に来た。 すると白浅から九重天にいた時、狐狸の姿になって一攬芳華(イチランホウカ)へよく行ったのかと聞かれる。 鳳九は戸惑いながら行ったと認めると、白浅は素素を訪ねて来るのが鳳九だけだったと漏らした。 「素素が天君に見つかって天宮へやって来た時、脅しに行ったわね? 姑姑の許嫁を奪ったと思ったからでしょう?」 「姑姑がなぜそれを?私と東華帝君(トウカテイクン)と司命(シメイ)しか知らないはずなのに…」 「…ふっ、だって私は阿離(アリ)の母親だもの…素素は私よ」 「ぁ~姑姑?お酒の飲み過ぎでは?…姑姑は神仙で素素は人間なんですよ?」 「…あれは上神に昇格するための情劫だったのよ、素素は私の修練だったってわけ」 素素としての記憶を取り戻した白浅はふらふらと正房に出た。 迷谷(メイコク)は飲み過ぎだと心配したが、白浅は自分なら大丈夫だと卓にあった最後の酒をまたあおる。 「やるべきことがある…私が修練で人間だった時、素錦に目を奪われたの、修練はもう終わった 素錦の目に私の目は合わないはずだし、やっかいだろうから返してもらおうと思うの」 素素の苦悩を知っている白鳳九は本当に姑姑が素素だというなら取り返すべきだと賛同した。 すると白浅はひとりで出て行ってしまう。 「姑姑が素素なら悲惨だわ、素素は天宮で苦しめられ、濡れ衣を着せられたの…」 「だったら必ず取り返さないと」 話を聞いた迷谷も納得したが、鳳九は急に白浅が心配になって飛び出して行った。 白浅は池に封印していた玉清崑崙扇(ギョクシンコンロンセン)を召喚し、その足で天宮に向かった。 すぐ後を追った白鳳九だったが、門衛が青丘の小殿下を知らず、足止めされてしまう。 その間に白浅は洗梧宮(センゴキュウ)の素錦の寝殿に乗り込んでいた。 ちょうど殿内から出て来た辛奴(シンド)は拝礼してから引き止めようとしたが、白浅の仙術で拘束されてしまう。 素錦はちょうどうとうとしていたが、急に寝殿に入って来た白浅に気づいた。 やはり素素の事が気になるのだとほくそ笑む素錦、しかし白浅から衝撃の事実を告げられる。 「素錦?私の目を300年も使っているようだけど、具合はどうかしら? …どうしたの?使っているうちに元の持ち主を忘れたの? 300年前、私は上神に昇格するための情劫に遭ってね…両目を失った それを思い出したから取りに来たの」 「あなたががが…あなたがあの素素?」 素錦はあまりの恐ろしさに声が震え、涙があふれ出した。 「で、その目を自分で取り出すの?それとも私が掘り出しましょうか? …自分でやるなら早くなさいっ!」 白浅は腰が抜けたまま呆然としている素錦に声を荒げた。 しかし素錦は到底、信じられない。 「素素は間違いなく人間だったわ!神仙じゃなかった…人間だったもの!あり得ない…」 「人間でも神仙でも関係ない、300年前の私は少し気弱だったようね? お前のような者に目を奪われ、罪を着せられたのだから…」 すると白浅は屈み込んで素錦の顔をのぞき込みながら、どうやら自分で取り出すのは難しそうだと言った。 「最近、祝い事でお酒を飲み過ぎてね~手が震えているから痛いかもしれないけど大目に見てね」 驚いた素錦は逃げ出そうとしたが、白浅が門に結界を張って阻止した。 「楽しみだわ~お前はずっと私の前でか弱い女を装って来た お前の本性がどんなものか、早く見たいの 目を奪われたあの日、夜華はこう言ったわ…″借りを作れば必ず返すものだ″とね お前が目を失った理由は互いに知っている、私の目が今そこにある理由も互いによく知っている …私が自分の物を取り返すのは当然のこと!300年経てばお前の物になるとでも?!」 激情に駆られた白浅は扇を振り上げ、ついに素錦から自分の目を取り戻した。 「うわあああーーーーっ!」 「300年前の出来事は天君が秘密裏に進めた…だから私も秘密裏に取り戻した お前が私にしたことは2つ、目を奪ったことと誅仙台(チュウセンダイ)での悪事よ 目は返してもらったけど、もう1つはどうする? 誅仙台から飛び降りてみる?または天君に直訴するのはどう? ″擎蒼(ケイソウ)を封じた東皇鐘(トウコウショウ)を私の弱い仙力で見張ります、天宮には戻りません″とね」 「…いやよ、絶対に嫌!」 「嬉しいわ~やっと本性を見せてくれた…自分で言わないなら私が天君に話してあげる~ でも私は考えがころころ変わるたちなの~もっと大きな懲罰を天君に願うかもしれないわ …悪には悪の報いがあるものよ」 白浅は結界を解いて寝殿を出ると、辛奴を解放した。 「薬王を呼びなさい」 東華帝君は夜華の従者・天枢(テンスウ)が若水にいることを訝しんでいた。 司命星君は婚儀を前に皇太子が翼(ヨク)族を警戒しているのだろうと楽観していたが、東華帝君は納得できない。 何か理由があって夜華が隠していると考えた東華帝君はやはり若水へ行こうと決めた。 するとちょうど門衛に止められている白鳳九を見かける。 そこで東華帝君は司命に様子を見に行くよう命じた。 司命星君は門衛に白鳳九の身分を保証し、中に入れた。 すると鳳九は姑姑を助けに来たと訴え、皇太子が愛した素素が白浅だったと明かす。 実は素素は姑姑が上神になるための情劫だったというのだ。 かつて素素は素錦を誅仙台から落として目を奪われたが、それは濡れ衣で白浅は目を取り返しに来たという。 司命星君は思わぬ一大事に呆然、鳳九はその間に姑姑を探しに走り出した。 一方、白浅に目を奪われた素錦は激昂し、辛奴と一緒に正殿に向かっていた。 すると途中で分支の頭領たちに出くわし、急いで天君の所へ連れて行って欲しいと訴える。 そこに白鳳九が現れた。 「素錦!姑姑は?」 「見ての通り私の目を奪ったわ!天君に訴えてやる!」 「なんて酷い女なの?誅仙台で姑姑に濡れ衣を着せたくせに! 姑姑が自分の目を取り返すのは当然のことよ!」 「でっち上げだわ!素素の正体が誰であろうと私には関係ない!あの時、私は失明した! 人間だろうと上神だろうと私に償うべきなのよ! ふん!青丘の高貴な生まれだからってそんなに偉いの?天族の私をいたぶる気?!」 「なんて邪悪な女!青丘を中傷するなんて!」 「私を殺そうとした女から目を奪って何が悪いの?!上神なら許されるとでも?オホホホ~! 言っておくけどここは九重天、青丘の者がこの私を悪者にできると思わないで! 何があろうとあなたの姑姑に過ちを認めさせてやる!目を奪い返すわ!」 素錦は頭領たちにあの時の素素が白浅だったと教え、自分の目を奪ったと言いつけた。 これに激怒した鳳九は素錦につかみかかったが、頭領たちは素錦をかばい、青丘の小殿下を礼儀知らずだと罵る。 「案ずるな、天君は分かってくださる、私たちもついている」 鳳九は白浅を守るため素錦たちを追いかけることにしたが、その時、東華帝君が現れた。 「私と来るのだ…」 その頃、自分の目を取り返した白浅は蓮池にいた。 するとちょうど婚儀の準備に向かう仙娥たちが通りかかり、白浅に拝礼して去って行く。 白浅はやがて蓮池を抜けると、そのまま誅仙台に登った。 …夜華、あなたに分かる?300年前の痛みが昨日のことのようだわ …大義とか道理とか、何もかも私を守るためだったとか、そんなのどうでもいい …私が覚えているのは一攬芳華での孤独な夜や、わずかな望みさえ少しずつ消えて行ったことだけ 「はあ~夜華…あなたとは一緒になれない」 白浅が十里桃林に帰って来た。 折顔(セツガン)は酒蔵の酒を飲み尽くしてねだりに来たのかとからかったが、白浅の表情は堅い。 すると白浅は黙って小さな化粧箱を出した。 「おお~300年越しで自分の目を見つけるとは驚いたな だが忘れ薬を飲んでも昔の痛みを覚えているとは、もっと驚きだ」 「仙体から取った目は49日を超えると使えなくなるのよね?」 「神仙が使っていたとは思いもよらなかったな~」 「戻して欲しいの」 「戻すことはできる、まずは目についた邪悪な気を取り除く、それまで待て」 「…分かった」 「小五、この目を持っていたのは誰だ?」 しかし白浅は話すほどのことではないと言って帰ってしまう。 一方、人間界の照歌は青丘の神仙への恋煩いで床に伏せっていた。 「素素…私はずっとある者を待ち続けた…私が11歳の時、会いに来たのだ… 私が大人になったら嫁ぐと言っていた…だが現れなかった…神仙は長命らしい 私の短い一生など神仙には数日に過ぎないのだ…ゴホゴホッ…どうやら私はもう待てない」 素素は照歌が独り身を貫き、約束を破っていないと安心させた。 すると照歌は神仙に責められずに済むと漏らし、自分が死んだら亡骸を焼いて灰にし、数珠と一緒に葬って欲しいと頼む。 そして照歌は大きく息を吐き、早逝した。 夜華が歴劫から目を覚ますと、そこは崑崙虚の中庭だった。 すると閉関していた墨淵(ボクエン)が現れる。 墨淵は夜華と蓮の池を眺めながら、夜華が父神の子で自分の弟であると明かした。 実は父神がある事故で眠りについた夜華の元神を金蓮に入れて墨淵に託し、この池で目覚めるのを待っていたという。 「ここで白浅が修行していた時、金蓮の世話をするのが好きだった 今にして思えば天意だったのかもしれん、大切にすべきはそなたたち2人の縁だ」 弟の復活を待つこと数十万年、墨淵はついに宿願を果たした。 正殿では天君が央錯(ヨウサク)、楽胥(ラクショ)夫妻と一緒だった。 そこへ素錦が頭領たちに支えられながら駆けつけ、自分を助けて欲しいと訴える。 するとすぐに東華帝君が白鳳九を従えてやって来た。 天君はひざまずいた素錦に立つよう命じたが、素錦は立てば罪を認めたことになると拒否する。 「白浅上神は私の目を奪っただけでなく、誅仙台で私に陥れられたと言うのです! 罰として若水で東皇鐘を見張り、二度と天宮へ戻るなと…そう私に命じました!」 頭領たちはいくら桑籍(ソウセキ)の件で借りがあるとは言え、こんな横暴は許せないと追従した。 何より天族のために滅んだ素錦族にも申し訳が立たないという。 そもそも女帝ともあろう者が目を奪ってそそくさと姿を消すとは、何か後ろ暗いからに違いない。 鳳九は一方的に白浅を非難され、思わず反論した。 「姑姑は天族の面子を守ってくれたのよ!なら世の中に素錦の悪事がばれても構わないの? か弱い者から夫と目を奪い、誅仙台から死に追いやったとね!」 「なんて酷いことを!目を奪われた私を悪者にするなんて!」 素錦がわめき散らすと、鳳九は唖然とした。 「あなたたち天族は何て残酷なの…姑姑を傷つけて、さらに罪を着せるだなんてっ!」 「無礼者!」 天君が怒号を響かせた。 すると東華帝君も確かに今の発言は無礼だと白鳳九に釘を刺す。 鳳九は東華帝君まで素錦の味方なのかと失望したが、東華帝君は珍しくこの件に首を突っ込むことにした。 「これは天族と青丘の問題だ かつて素錦は天妃だったゆえ、夫であった天君が口を挟むのは良くないかと…」 そこで東華帝君はあらゆる一族と関わりがなく、後宮も持たず俗世を離れている自分がこの件を裁くと申し出た。 天君は東華帝君にも鳳九との関わりがあると知っていたが、恐らく青丘の立場を考えて身を退けという意味だと捉え、了承する。 …素錦のことは本人の運命に任せるしかあるまい… 東華帝君は素錦と頭領たちからも同意を得ると、早速、7万年前の経緯を聞くことにした。 つづく ( ๑≧ꇴ≦)あああ〜!こんな大事な場面なのになぜその衣装なの?白浅!(←そこか?w お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.09.27 12:38:20
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