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2021.04.12
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梦回 dreaming back to the qing dynasty
第39話「さよなら、胤祥」

寝所で茗薇(メイビ)が急に飛び起きた。
隣で寝ていた十三皇子はふと目を覚まし、悪夢でも見たのかとなだめる。
「夢の中で茗蕙(メイケイ)が私に死ねと言うの…」
「すべては終わった、茗蕙は罰される、もう案ずるな」
十三皇子は皇兄の政務の補佐で忙しく、茗薇を放っておいたことを反省した。
茗薇に無理がたたっているのも宮中の生活が原因だろう。
十三皇子は新帝の朝政が落ち着いたら都を離れるつもりだと言ったが、茗薇は茗蕙との恩讐がまだ終わっていない気がしていた。

翌日、茗薇は茗蕙に面会し、自分への憎悪の理由を聞いた。
すると茗蕙は長女でも庶出である自分と正室の子である茗薇とでは扱いに雲泥の差があったという。
嫡子というだけでお姫様のように誰からも愛され、大切にされて育った茗薇、一方で茗蕙はまるで存在しないように差別されていた。
「あなたがこの世にいる限り、私は何者でもない…」
しかし茗薇は何の落ち度もなく殺された人がいると追求する。
茗蕙は元青(ゲンセイ)のことだと気づき、駆け落ちを土壇場で断った薄情な男など死ぬべきだと言い放った。
「あなたの阿娘は我が子ばかり大事にして、私は雑草以下の卑しい存在だった!
 あの人が憎くて仕方がなかったの!」
「私と親しい人たちも陥れたわ!」
「私が陥れた?笑わせないで…皆あなたのせいでとばっちりを受けたのよ
 十三爺、趙鳳初(チョウホウショ)、七香(シチキョウ)、四福晋(フジン)もそうよ
 あなたを助ける者は死ねば良い!元凶はあなたよっ!」
茗薇は勝手な言い分にカッとなり、思わず茗蕙の首に手をかけてかんざしを抜いてしまう。
すると茗蕙は自分を殺せと迫り、茗薇の腕をつかんでかんざしを自分に刺そうとした。
急に恐ろしくなった茗薇は慌てて手を離すと、茗蕙が急にえずき始める。
茗薇は茗蕙が身ごもっていると気づき、このまま十四皇子にも知らせず、子供まで道連れにするつもりかと驚愕した。
しかし茗蕙は自分を裏切った十四皇子とは無関係だと開き直り、子供に自分と同じ悲劇的な人生を歩ませたくないという。
「だから私とこの子を一緒に殺して!…憐れみはいらない!」
親となっても憎しみを手放せない茗蕙、茗薇はさすがに愛想を尽かし、そこで帰ることにした。
その時、茗蕙が悔し紛れに暴言を浴びせる。
「あなたは命を狙われている、どうせ私が死んでも命の危険は続くわ!」

茗薇がしょんぼり御花園を歩いていると、偶然、納蘭(ノーラン)蓉月(ヨウゲツ)と出くわした。
そこで蓉月は茗薇をお茶に誘う。
実は先帝の崩御で子のない妃嬪たちは本来、尼寺に送られるが、皇太后の厚情により叔母と一緒に残れることになったという。
「良かったわね」
「私、前はあなたに意地悪したのに…」
「でも私を助けてくれた、あなたが幸せなら嬉しいわ」
すると茗薇は茗蕙と面会したと話した。
「悪人だけど可哀想な人なの、復讐にとらわれ、情に目もくれず、恨みで自分を縛っていた」
蓉月はお人好し過ぎると痛い目に遭うと警告したが、茗薇は後宮では誰もが茗蕙と同じように自分を見失ってしまうと指摘する。
耳が痛い蓉月だったが、ふと思い出して叔母からもらった茶を勧めた。
「安神(アンシン)茶よ、飲むと落ち着くの…」

茗薇は蓉月と別れ、皇太后へ挨拶にやって来た。
すると皇太后は全て茗蕙の仕業だとも知らず、茗薇を非難して来たと過ちを認める。
しかし茗薇は皇太后も先帝と同じように兄弟の反目を恐れていたと察し、君主と国母が親である前に天下や民を思うのは当然だと理解を示した。
皇太后は道理をわきまえた茗薇に安堵し、自ら香炉に小さな袋を入れる。
「白檀よ、皇上がお嫌いゆえ、哀家(アイジィァ)もずっと使っていなかったの…」
茗薇はふと宮女だった頃、四皇子が白檀の香りで咳き込んだことを思い出した。
「魚寧(ユーニン)…哀家を恨まないでね」

慈寧(ジネイ)宮をあとにした徐薔薇(ジョショウビ)は、道すがら自分がなぜ紫禁城を好きなのか気づいた。
現代にいた頃は建築が理由だと思っていたが、今なら分かる。
それはここで生きた人たちだ。
四皇子は茗薇を殺そうとしたこともあったが、十三弟のために茗薇を諦めて礼節を守った。
無情に見えても本当は天下と兄弟を思う情け深い皇帝…。
そして十三皇子は帝王の資質と風格を持ち合わせながら、四兄を支える道を選んだ。
きっとその方が自由に生きられるからだろう。
十四皇子は尊大で四兄や十三兄と張り合う実力があったが、他人の物は欲しくないという理由で御膳立てされた皇位をつかまなかった。
薔薇は自分のこの目で見て来た彼らこそ、数百年語り継がれて来た紫禁城の伝説であり、魂なのだと実感する。
…私はその中に身を置き、歴史を変えず、1人の観客として見て来た
…彼らの生き様を感じ、歴史の匂いを嗅いだわ
…ここにも生があり死があり、涙と笑いがあった、そして悲劇と夢も
…それこそが時代や王朝が変わっても、変わらぬ人の情なのね

茗蕙の処刑の日となった。
すると刑場に皇帝ではなく十四皇子が現れる。
茗蕙は皇位を譲っただけでなく、妻殺しの汚名まで着るのかと驚き、皇帝が十四皇子を破滅させるつもりだと憤った。
そこで十四皇子は皇帝が執行を任せた意図は別にあると教えたが、茗蕙は皇帝の見事な計略だと冷笑する。
十四皇子は茗蕙の頭の中にあるのは結局、蔑まれた日々への恨みつらみしかないと確信し、執行の札を握りしめた。



実は雍正(ヨウセイ)帝は十四皇子を呼び、茗蕙を救う機会を与えていた。
同腹の兄弟ながら馬が合わなかった十四弟、しかし謀反の日に争っていたら、今ここに座っているのは十四弟だったろう。
『十四弟、茗蕙を愛し始めていたのだろう?茗蕙もお前に尽くしていた、死罪だが酌量の余地はある
 あの者を殺すべきかどうか、お前に決定を委ねよう』

十四皇子は皇帝の情けを無下にした茗蕙を見限り、ついに執行の札を投げた。
無常にも転がり落ちる札に茗蕙は覚悟を決める。
しかし処刑人が刀を振り上げたまさにその時、突然、皇帝が十三皇子と茗薇を連れて現れた。

茗薇は茗蕙が身ごもっていると教え、助命を嘆願した。
しかし茗蕙は否定し、茗薇からの同情に耐えられず死を望む。
寝耳に水だった十四皇子は本当かと聞いたが、茗蕙は黙ったままだった。

「少しは私に情があると思ったが、どうやら…」
「あるわ、あるけど…
 私が先帝を殺したと思っているんでしょう?だったら私の子など要らないのよね?!」
「聞きもしないで、なぜ要らぬと分かるんだ?!」
すると皇帝は茗蕙に陥れられた茗薇が命乞いするのも何とも不思議な話だと漏らした。
茗薇は憎しみにとらわれた人間は目が曇って苦痛と怒りから抜け出せなくなると話し、茗蕙を許すことで自分も解放されるという。
そこで皇帝は十四皇子に再度、茗蕙を生かすか殺すか決めるよう命じたが、十四皇子は判断に迷った。
茗薇は子供のために過去を捨て真っ当に生きてほしいと願ったが、その言葉はかえって茗蕙を惨めにし、頑なにしてしまう。
「なぜ来たのっ?!そう、私をあざ笑うためよね?!茗薇…全部あなたのせいよ!
 全てがあなたのせいなのよーっ!私の一生がお笑い種だと言いたいのーっ?!」
茗薇に八つ当たりして泣きじゃくる茗蕙、その時、茗薇が突然、倒れてしまう。

徳妃は太貴妃の尼寺行きを見逃す代わりにある条件を出していた。
そこで太貴妃は茗薇との関係が良好な蓉月に安神茶を渡し、悩みの絶えない十三福晋に差し入れるよう勧める。
蓉月は何も知らず茗薇と一緒に安神茶を飲んだが、なぜか無事だった。

茗薇はすぐ帥府園(スイフエン)に運ばれ、太医の診察を受けた。
太医によると十三福晋は猛毒に犯されており、すでに手の施しようがないという。
実は安神茶だけなら毒性はなかったが、徳妃が焚いた白檀の香と合わせることで猛毒になるよう仕組まれていた。
皇帝は茗蕙の仕業だと思い込み激怒、即刻、死罪だと息巻いたが、茗薇が止める。
「皇上…どうか茗蕙を殺さないでください…因縁が残ってしまう…
 茗蕙を許してこそ…この恩讐が終わるのです…それが正しい決断です」
すると茗薇は疲れたと言って十三皇子の胸の中で眠り始めた。

その夜、胤祥(インショウ)は茗薇を腕に抱き、最後の時間を思い出の杏の木の下で過ごした。
「今生だけじゃない、君と私は来世でも来来世でも永遠に一緒なんだ」
「…私に会いに来てね」
すると茗薇の死期を悟ったように、書斎に飾った灯籠が自然と灯って回り始めた。
「小薇…行かないでくれ」
茗薇は胤祥の涙をぬぐい、泣いてはだめだという。
「泣き顔は見たくない…
 全力で頑張るあなたの姿が一番、好きよ…だから約束して…しっかり生きていくと…」
「分かったよ、約束する、必ず君の望み通りにする…」
そこで茗薇は胤祥の口元を抑え、笑顔を作った。
「クスッ、その笑顔でいて…安心して…だって私は…私は家に帰るだけだもの…
 でも信じてる…あなたは必ず私を見つけてくれるって…待ってる、会えるまでずっと…」
「会いに行くよ、必ず君を見つける」
「胤祥…あなたが植えた杏の花…いい香りがする…」
それが茗薇の最後の言葉となった。



薔薇はふと目を覚ました。
…ここはどこ?(はっ)私の部屋だわ…
驚いた薔薇はベッドを飛び出し、ロフトから駆け降りたが、あの灯籠は消えていた。
「胤祥!胤祥?!」
愛する胤祥と過ごした日々は夢だったのか。
胤祥の顔も声もすぐそばに感じていたのに、気がつけば愛する人の姿はどこにもなかった。

薔薇は久しぶりに紫禁城へ出かけた。
史実は何も変わっておらず、愛新覚羅(アイシンギョロ)胤祥は十三皇子で和碩怡(ワセキイ)王、正福晋は兆佳(ジョーギャ)氏で尚書・馬爾漢(マルハン)の娘となっている。
しかし茗薇はまるで存在していなかったかのように痕跡が残っていなかった。
…でもこれが一番いい結果のはずね…
一方、茗薇を失った十三皇子は宮中を去ることに決めた。
順児(ジュンジ)は新帝の即位後すぐに旅に出るのはどうかと心配したが、十三皇子は自分がいなくても皇帝は大丈夫だという。
「小薇が待ってる…」

薔薇は紫禁城の広場を懐かしそうに歩いた。
…胤祥、そっちで元気にしている?…
2人は時空を越え、ちょうど同じ石畳ですれ違う…。

つづく


( ;∀;)うわっ、片尾曲ってこの場面を歌っていたのね
まさかここにきてホロリと来ちゃうなんて…
でも茗薇がじぇじぇを許しても、じぇじぇの怨讐は解けてないよね?w
いや〜ここに来てこんな深い話?( ̄▽ ̄;)





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最終更新日  2021.04.12 22:33:00
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