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风起陇西(ふうきろうせい) 第三計「金蝉(キンセン)殻(カラ)を脱す」 荀詡(ジュンク)は陳恭(チンキョウ)の潔白を信じ、一緒に燭龍(ショクリュウ)の正体を突き止めることにした。 そこで陳恭は天水(テンスイ)郡守治で郭剛(カクゴウ)の目を盗み、早馬の記録を調べ始める。 結局、燭龍につながる早馬はなかったが、書房に郭剛が現れた。 陳恭は咄嗟に別の名簿と取り替え乗り切ったが、郭剛から思いがけない話を聞く。 実は燭龍から新たな報告が届き、西蜀の司聞曹(シブンソウ)が新しい密偵を送ったと知っていた。 しかも密偵の名が荀詡で数名の兵を連れているという。 司聞曹が白帝(ハクテイ)の裏切りだと考えるのは当然、郭剛はその目的が白帝の暗殺だと分かっていた。 「西蜀は大混乱だろうな、ふっ」 荀詡は郭剛が自分の情報をすでに知っていると聞いて思わず茶を噴き出した。 情報が早いのはやはり燭龍が司聞曹に食い込んでいるからだろう。 すると陳恭は燭龍が曹魏(ソウギ)の早馬ではなく、自分たちの経路を使ったのだと気づいた。 しかし谷正(コクセイ)は自分だけの連絡係、表向きは車馬行(シャバコウ)を装っている。 何より谷正は″白帝″という秘匿名しか知らず、決められた場所に情報を置くだけで、接触することはまずなかった。 その頃、谷正は尾行されているとも知らず、うっかり市場の指定の場所で暗号を確認していた。 間軍司(カングンシ)の梁倹(リョウケン)たちは谷正が見ていた石を拾って戻ったが、石の裏に彫られた暗号の意味までは分からない。 司馬・糜冲(ビチュウ)は引き続き監視するよう命じ、谷正から片時も離れないよう命じた。 郡守がくれた燭龍の新しい情報も信用できるが、今回は情報が粗い。 「荀詡という男、恐らく谷正と会うだろう、包囲網を敷け」 一方、蜀漢では司聞曹を引き継いだ輔漢(ホカン)将軍・李厳(リゲン)が丞相府長史・楊儀(ヨウギ)の案内で南鄭(ナンテイ)へ到着していた。 李厳は勅命により綱紀粛正を行うと宣言、北伐の失敗を招いた司聞曹を厳しく非難する。 そこで裏切り者である白帝の名前を明かすよう迫ったが、曹掾(ソウエン)・馮膺(フウヨウ)は将軍だけに明かしたいとごまかして時間を稼いだ。 孫令(ソンレイ)は主記室の従事、しかし事務方は書き物ばかりで面白みがなく、出世の見込みもなかった。 そんな中、思いがけず李厳が人員を刷新すると知り、孫令はその夜、義兄・馮膺に実務に就きたいと頼んでみる。 馮膺は自分さえ地位が危ういと一蹴したが、突然、楊儀が訪ねて来た。 実は楊儀は馮膺が白帝を生かすため荀詡を遣わしたと気づいていた。 「そこまで言うなら認めましょう…事態は想像以上に複雑です 白帝の功は数知れず、真相が分からないまま白帝を異郷で死なせたくないのです」 しかし楊儀は政権争いが苛烈極まりないと嘆いた。 1人を守れば大勢が死に朝廷が揺らぐことになるだろう。 楊儀は馬車でそのまま成都に帰って行った。 「巣を覆せば卵は残らぬ…忘れるな」 すると夜も更けたというのに孫令が現れ、楊儀の言う通り白帝が死ねば丞相失脚を阻止できると説得する。 馮膺は孫令が自分たちの話を聞いていたと知り唖然、決して機密を漏らしてはならないと釘を刺した。 一方、陳恭と荀詡は手始めに谷正を調べることにした。 荀詡は司聞曹の密偵として自分が直接、問いただし、もし問題があれば谷正を捕らえて2人で逃げようという。 そこで陳恭は小隴(ショウロウ)山に隠れている密偵たちを下山させ、荀詡に呼応させると決めた。 その夜、谷正は酒楼の窓からこっそり矢文を放ち、″赤帝″に情報を渡して翌朝、屋敷に戻った。 一晩中、心配していた妻は安堵したが、実は白帝から再び任務を命じられたという。 何でも洛陽(ラクヨウ)の間諜が正体を暴かれ、重要な情報を蜀漢へ届けて欲しいと言って来た。 「こたびは自ら行かねばな…」 燭龍の情報で曹魏に潜入した侍衛隊長の姓が金(キン)だと分かった。 間軍司は直ちに各城門から出入りした者を洗い出し、確かに金侍衛隊長の一行が入城したと分かる。 そこで糜冲は小隴山の捜索を決定、城外の軍営に応援を要請し、梁倹には引き続き谷正の見張りを任せた。 その頃、西蜀の密偵たちは林良(リンリョウ)の案内で下山していた。 しかし中腹あたりで曹魏軍の姿を目撃、自分たちを捜索していると知る。 林良は別の山道を行くことにしたがもはや手遅れ、10人は身動きが取れなくなった。 そこで密偵は自分たちがおとりとなり、林良を先に逃してくれる。 山腹には猟犬を連れた曹魏軍がじわじわと迫っていた。 一方、谷正は間軍司の尾行をまき、聴松(チョウソン)院に到着した。 2階で待っていたのは″黒帝(コクテイ)″と名乗る間諜、2人は互いに自分の玉符を差し出し、合致することを確認する。 その頃、小隴山にいた糜冲の元に梁倹から谷正に逃げられたと急報が届いた。 「谷正と白帝が会うと…」 驚いた糜冲は符(フ)将軍に捜索を任せ、生捕りにするよう指示して城内へ戻る。 ちょうど同じ頃、天水郡治を出た陳恭は物陰にいる林良に気がついた。 「どうしてここに来た?!」 「一大事だ!」 谷正は黒帝に蜀漢の匂い袋の残り香があることを見逃さなかった。 「洛陽の者ではないな?…蜀漢を離れて半月足らずといったところか? 何が目的でこんな手の込んだことを?」 荀詡は仕方なく身分を明かし、馮膺に遣わされたと教えた。 これも谷正を試すためで、裏切ったのなら間軍司を連れて来るだろう。 その頃、林良を逃した西蜀の密偵たちは曹魏軍に包囲され、逃げ場がなくなった。 10人はついにここで国に殉じると決意、敵軍の衣を脱ぎ捨てると一矢を報いるために敵兵に襲い掛かる。 しかし多勢に無勢、精鋭たちは次々と倒れ、最後の独りが自害しようとした。 すると曹魏兵が咄嗟にその前に斬りかかり、生け捕ることに成功する。 一方、谷正は自分がやっとの思いで城外へ運んだ白帝の情報が偽物だったと知った。 実は丞相の敗北後、自分も白帝が罠にかかったのだという考えに至ったという。 「いや、白帝の情報は正確だった…丞相に届く前にすり替えられた」 「あり得ぬ、白帝は暗号文を使っている」 「なぜ知っている?」 「司聞曹が暗号文を使うのは慣例、解読用の木版は…はっ!」 谷正はようやく自分が疑われていると気づき愕然とした。 陳恭は急いで聴松院へ向かうことにした。 しかし旧市街が封鎖され足止めされてしまう。 珍しく激高し梁倹を殴ってしまう陳恭、そこへ糜冲が現れた。 「危険なので私が送り届けてやろう、さあ行こう!」 一方、谷正はものすごい剣幕で荀詡が自分を陥れに来たと非難した。 そもそも白帝の暗号文は誰にも解けないはず、情報自体が偽りの可能性もある。 「そこまで言うなら白帝と谷正先生を同時に尋問するしかない…」 「…荒唐無稽だ!」 谷正はいきなり席を立つと、荀詡は馮膺からもらった短刀を突きつけ引き止めた。 その時、林良が現れ、間も無く間軍司が乗り込んでくると知らせる。 荀詡は谷正が呼んだと誤解、いきなり腹を刺した。 すると谷正は侮辱より死を選ぶと訴え、自ら荀詡の短刀を深く差し込んで自害してしまう。 糜冲は兵士を連れて陳恭を聴松院まで送り届けた。 すると陳恭が約束があると話していた通り、友人たちが女を侍らせ、すごろくで楽しんでいる。 しかし別の部屋では谷正の遺体が発見されていた。 「毒を塗った剣だな…」 糜冲は遺体がまだ温かいことから、犯人はまだ近くにいると推察する。 恐らく陳恭は時間稼ぎのため梁倹に因縁を付けたのだろう。 偶然にしてはでき過ぎている。 その時、糜冲は谷正の腰から玉符を見つけた。 一方、陳恭は事件など何処吹く風、仲間たちとすごろくで盛り上がっていた。 「誰か!酒を2甕(カメ)、持って来い」 すると給仕に成り済ました荀詡が金を受け取り、静かに戸を閉めた。 つづく (  ̄꒳ ̄)ぉぉぉ… 【司聞曹】 司聞司・・・情報収集を担う部署 軍謀司・・・情報分析を担う部署 靖安司・・・他国の間諜に対処する部署 軍技司・・・武器を担う部署 主記室・・・事務方 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.10.03 21:09:53
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