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风起陇西(ふうきろうせい) 第四計「笑いの裏に刀を蔵(カク)す」 蜀漢(ショクカン)・南鄭(ナンテイ)。 司聞曹(シブンソウ)では輔漢(ホカン)将軍・李厳(リゲン)の腹心・狐忠(コチュウ)の個別面談が始まっていた。 街亭(ガイテイ)有事の際に軍内にいた軍謀司(グンボウシ)・高堂秉(コウドウヘイ)は白帝(ハクテイ)について見解を問われたが、司聞曹の最高機密なので自分も後に知ったとはぐらかす。 そこで狐忠は″青萍(セイヒョウ)計画″を知っているか探りを入れた。 「耳にしたことは…我が軍の連弩(レンド)の技術を盗むのが狙いだとか」 「それだけではない、司聞司の陰(イン)司尉いわく計画は大きく、多岐にわたる 蜀軍の機密を盗む以外にも上層部に間諜を潜り込ませ、内乱を扇動するとも…」 すると狐忠は白帝の裏切りも計画の一部かもしれないと挑発し、様子をうかがう。 高堂秉は曹魏(ソウギ)が司聞曹に潜入せんと企むのは当然のことだと言ったが、不興を買わないよう口をつぐんだ。 狐忠は最後に曹掾(ソウエン)・馮膺(フウヨウ)を呼んだ。 なぜ荀詡(ジュンク)を送り込んだのか問われた馮膺は靖安(セイアン)司のため国外での任務の経験がなく、それがかえって潔白の証になったという。 「荀詡は白帝の姻戚だとか?」 「それは初耳だ」 馮膺は嘘をつき、どちらにしても荀詡には掟通り毒を飲ませてあると教えた。 天水(テンスイ)は激しい雨になった。 間軍司(カングンシ)の司馬・糜冲(ビチュウ)は白帝への手がかりとなる谷正(コクセイ)を殺され苛立ちを隠せない。 しかしかろうじて小隴(ショウロウ)山で捜索していた配下が蜀兵を生け捕りにして戻ってきた。 糜冲は蜀兵の意識が戻ったら何としてでも供述させ、腕利きの配下2人に陳恭(チンキョウ)を見張らせるよう命じる。 「今日、陳恭は危険を冒した、すぐ尻尾を出すだろう」 吉利車馬行(キツリシャバコウ)が捜索され使用人は収監された。 荀詡(ジュンク)の話では谷正が″赤帝″という間諜と接触、その後は矢文で情報を送っていたという。 「利用されたんだ」 陳恭は呆然となった。 馮膺は確かに谷正が自分だけの連絡係で、他の任務に関与しないと言っていた。 やはり恐れていた通り燭龍(ショクリュウ)は司聞曹の高位にいて、勝手に赤帝の名をでっちあげることができたのだろう。 谷正は何も知らず駒にされていたのだ。 しかしどちらにしても谷正がいなければ陳恭と荀詡は釈明しようがなかった。 「絶体絶命だ…」 そこで陳恭は燭龍の存在を知る天水郡守・郭剛(カクゴウ)をかどわかし、南鄭へ連行することを思いついた。 荀詡は現実味のない話に呆れたが、陳恭には策があるという。 珍しくて精巧な物を好む郭剛はかつて陳恭に公輸子(コウシュシ)の竹鵲(チクジャク)の資料を渡し、復元を命じていた。 竹鵲とは竹や木で作った鵲(カササギ)のことで、史書によれば人を乗せて3日間も飛び続けたという。 荀詡は伝説に過ぎないと言ったが、実は魏軍がかつて偶然、郢(テイ)で公輸子の墓を見つけ、中から竹鵲の原型らしい残骸を見つけていた。 すでに竹ひごの骨組みに羊の皮を貼って翼を作り、あとは実際に飛んでみるだけだという。 「小籠山で飛ぼうと誘えば喜んで話に乗ってくる… いいか、この場所に私と郭剛が降り立つ、お前は谷底で馬2頭と待つ」 荀詡は危険すぎると大反対だったが、結局、これが自分たちの助かる唯一の方法だと認めざるを得なかった。 狐忠は聞き取り調査を終え、幕府へ李厳(リゲン)を訪ねた。 さすがは司聞曹、海千山千の者ばかりだったが、馮膺は興味深いという。 忠誠心が強いとは言えず、楊儀(ヨウギ)から白帝の件を早期に解決するよう命じられても奥の手を残していた。 そこで李厳は馮膺を移動させず司聞曹に残すと決め、補佐として誰かを送り込みたいという。 狐忠はならば楊儀を恨んでいる李邈(リバク)が適任だと推薦した。 実は丞相に罷免されて行く当てもなく、自分を頼って南鄭にいるという。 李厳は直接、李邈と会ってから決めることにした。 「なぜ罷免された?」 「丞相が馬謖(バショク)を斬る際、私は智謀に長ける馬謖を失うは大きな損失だと進言しました」 その時、うっかり楚(ソ)も得臣を誅殺した後に衰退したと口を滑らせ、丞相の逆鱗に触れてしまったという。 「その話は禁忌だった、不興を買ったな」 「おっしゃる通りです、それで長史の楊儀が讒言したのです、私には異心があると…」 李邈は楊儀への恨みを募らせ、司聞曹を粛正するなら策を献じたいと申し出た。 成都に戻った楊儀は丞相に報告、大なたを振るう李厳を非難した。 すると諸葛亮(ショカツリョウ)は敵の間諜を粛清すべきであり、それを行うのが誰であろうと支持するべきだという。 「しかし丞相、李厳には恐らく他意が…」 「まだ憶測に過ぎぬのだろう?…司聞曹の件は李厳に任せれば良い、口を出すな」 結局、馮膺と高堂秉は減棒だけで元の職位に留まった。 そんな中、主記室の従事だった馮膺の義弟・孫令(ソンレイ)は副司尉に昇進する。 一方、西曹掾(ソウエン)・姚柚(ヨウユウ)は偽りが多いと弾劾され、庶民に降格された。 郭剛はちょうど長安から届いた元帝(ゲンテイ)時代の渾天儀(コンテンギ)に夢中だった。 すると務めにやって来た陳恭が現れ、竹鵲の復元が完成したと報告する。 郭剛は予想通り早速、陳恭の家まで視察に来たが、竹鵲を作らせたのには単なる趣味ではなく、実は別の理由があった。 「戻るぞ」 情報によれば蜀軍の軍技(グンギ)司が作る最新の連弩は連射できる矢の数が20本、騎兵も歩兵も使えて殺傷力も高いという。 最新の連弩は″蜀都(ショクト)″と″元戎(ゲンジュウ)″で、魏軍にとって脅威となるのは必至だ。 蜀軍はこの機密を守るため偽の製造場をいくつも設けていたが、燭龍のおかげで製造拠点の特定に成功する。 しかし定軍山の西の山間は断崖絶壁で峡谷があり、製造拠点である総成部へは一本道のみだった。 さらに3つの防衛線があり、この鉄壁の守りを突破する方法がない。 「だが今は違う」 郭剛は陳恭に糜冲へ説明するよう頼んだ。 そこで陳恭は地図を示して断崖絶壁から飛び降りると教える。 「断崖絶壁から行く?飛んで行くと?…陳主簿は鳥か?」 糜冲が冷笑すると、なぜか郭剛と陳恭が失笑した。 郭剛は役所の中庭に運んだ竹鵲を糜冲に見せた。 ようやく鳥という意味を理解した糜冲、確かにこれがあれば敵の意表をついて潜入できるだろう。 すると郭剛は連弩の設計図を盗む任務を梁倹(リョウケン)と陳恭に頼むと決めた。 確かに梁倹は国外の任務を苦手とするが、これも陳恭を引き立てるため、今回の任務で功績をあげさせたいという。 陳恭は郡守の恩情に感謝したが、糜冲が郡守に話があると言った。 糜冲は郡守を回廊まで連れて行った。 実は西蜀の密偵を追っていたところ主簿も現場に現れたという。 そこで梁倹ではなく自分が同行すると申し出た。 郭剛は2人が同時に消えれば西蜀の密偵に気付かれてしまうと心配したが、糜冲はならば馬車の事故で自分たちが死んだと装うのはどうかと提案する。 「よかろう、お前が行け…ただし青萍計画は都督が自ら取り仕切る 連弩の機密を得ることが最優先、個人的な感情を挟み、過ちを犯すなよ?」 そんな2人の話を密かに陳恭が聞いていた。 すると最後に郭剛は陳恭の身の安全を守るよう糜冲に約束させる。 郭剛の信頼に後ろめたさがよぎる陳恭、しかしこんな絶好の機会を逃すわけにいかなかった。 その夜、陳恭と荀詡は美味い酒になった。 糜冲の提案で訃報が流されることが決まり、これで任務を果たしたことになる荀詡も助かる。 「道中で糜冲を殺めて私が奴に成り済ます、そうすれば陳恭はこの世から消える…」 「転機が来たな!」 すると陳恭は荀詡から毒塗りの短刀を譲ってもらった。 一方、糜冲もこの機会に陳恭を泳がせ、怪しい行動があれば始末すると決める。 未だ生け捕りにした蜀兵は意識が戻らなかったが、梁倹に全て任せることにした。 陳恭は寝所に戻ったが寝付けずにいた。 思い出すのは翟悦(テキエツ)との細やかでも和やかな婚儀。 あの時、荀詡の不慣れな媒酌に2人で思わず吹き出してしまったことが懐かしい。 果たして陳恭の計画は成功し、愛しい妻と再会を果たす事はできるのか。 つづく ( ๑≧ꇴ≦)チェンクンのタートルは正義! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.10.03 21:07:25
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