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2022.12.10
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风起陇西(ふうきろうせい)
第二十一計「刀を借りて人を殺す」

荀詡(ジュンク)は赤岩峰(セキガンホウ)で馮膺(フウヨウ)を待ち伏せ、曹魏(ソウギ)と通じて機密を漏洩した罪で捕縛すると告げた。
馮膺は青雲(セイウン)殿に到着した折、使用人に謝礼を渡していたが、裴緒(ハイショ)が押収したところ、品物の中に馮膺直筆の密書が忍ばせてあったという。
本来なら上官を捕らえる権限がない荀詡だったが、今回は丞相の将令があった。

諸葛亮(ショカツリョウ)の大軍が南鄭(ナンテイ)に到着、しかし入城せず野営となった。
狐忠(コチュウ)は李厳(リゲン)将軍に一報を伝えたが、実はもう1つ報告があるという。
「馮膺が捕縛されました…計画の1歩目として曹魏に情報を送ろうとして現場を取り押さえられたとか
 間諜が情報を取りに来る前でしたが、文が馮膺の直筆だったのです」
しかも馮膺を捕縛したのは丞相の将令を持っていた荀詡だった。

一方、諸葛亮も楊儀(ヨウギ)から馮膺捕縛の知らせを聞いた。
馮膺が裏切るなど考えられない諸葛亮、しかし楊儀の話では荀詡が燭龍(ショクリュウ)の事案に疑念を抱き、圧力を受けつつも調査を続行、不審点を見つけて馮膺が情報を渡す現場を押さえたという。
楊儀は証拠となった馮膺直筆の文を渡し、確かに我が軍の兵力や戦術を漏らしていると訴えた。
「危うく魏延(ギエン)将軍の部隊が全滅するところでした」
「…馮膺とは旧知だ、何か裏がある」
諸葛亮は馮膺の拘禁を命じ、戦の後に自ら尋問すると決めた。

李厳は何としても馮膺に口止めせねばと焦った。
そこで狐忠に指示し、陳恭(チンキョウ)にこの事案をもみ消してもらい、馮膺の連絡係を自分の元へ寄越すよう伝える。
狐忠は早速、連絡係を介して馮膺と接触、決して李厳将軍の名を明かすことはないと確約を取った。

一方、諸葛亮は皇帝が後方支援に李厳を指名したことが気がかりだった。
すでに戦は目前、情報中枢である司聞曹(シブンソウ)の平穏を保つためにも南鄭に楊儀を残し、陳恭を補佐するよう命じる。
その頃、司聞曹では馮膺を捕らえて意気揚揚とする裴緒の姿があった。
しかし荀詡は重要な案件にもかかわらず簡単に解決できたことに違和感を禁じ得ない。
高堂秉(コウドウヘイ)の死後、馮膺の衣から出て来た壁土と木片、裴緒が気づいた密偵の連絡法、さらに赤岩峰で馮膺が送ろうとしていた直筆の文、なぜやすやすと手に入ったのだろうか。
「全てが順調すぎる、まるで何もかも仕組まれていたような…」
そもそも馮膺が間諜なら蜀漢の情報系統は筒抜け、白帝(ハクテイ)が生還できるはずがない。
荀詡は考えあぐねた結果、馮膺はわざと捕まったのだと結論づけるしかなかった。
「だとすれば目的はただ一つ、より重要な者を守るためだ」
そこで荀詡は馮膺に関する文書を全て持ってくるよう裴緒に頼んだ。

↓(´-ω-`)むむ…


目下、司聞曹を司っているのは陳恭、そこで陳恭は捕縛された馮膺を連れ出し、楊儀と秘密裏に会わせた。
すでに楊儀から″資中(シチュウ)県の乱″について証言を聞いた陳恭は誤解していたと謝罪、確かに当時、馮膺は上からの命で曹魏に軍機を流したが、敵を誘き出して夏侯淵(カコウエン)の部隊を滅ぼすことが目的だった。
「父が国に殉じたと分かりました…本望だったでしょう」
陳恭は馮膺が自分のために高堂秉殺しまで引き受けたことに感謝し、進んで汚名を負ったことに敬服した。
陳恭とわだかまりが解けた馮膺は安堵、必ず生き抜いて欲しいという。

陳恭によれば青萍(セイヒョウ)計画の仕上げは自分が曹掾の座を奪い、李厳将軍を脅して蜀漢の中枢を掌握することだった。
「李厳将軍と丞相を対立させるのが最低目標です
 そうすれば曹魏は漁夫の利を得て蜀漢を滅ぼし、東呉を呑んで天下を統一できる」
確かに郭淮(カクワイ)も悪くない算段を立てたが、陳恭が命を受けて動いていたとは思いもよるまい。
街亭(ガイテイ)の事案後、郭淮が青萍計画を始動させたと知った馮膺と楊儀は敵の裏をかくことにした。
曹魏の標的が李厳だったため成り行きに任せ、反間計を弄したのだ。
陳恭は父の死の理由に憤りながらも信念は揺らがず反間計は成功、そこで荀詡を採用し、荀詡は天水(テンスイ)に到着後、陳恭と手を組んで見事に高堂秉をあぶり出し、しかも気づかれぬまま青萍計画の段取りは進んだ。
今や李厳も罠にかかり、遅かれ早かれ失脚は免れない。
問題は李厳が持っている皇帝の密詔だった。
そこで陳恭は郭淮から燭龍に密令が下ったことにして柳瑩(リュウエイ)に対処させるという。

陳恭は馮膺が難を逃れる術があるのか心配した。
しかし馮膺は自分が曹魏の間諜でこそ李厳を死地に追い込めるという。
実は馮膺はこの計画を始める時から死を覚悟していた。
「陳恭、お前は郭淮に信頼されている、曹魏の心の臓を突く司聞曹の刃となったのだ
 これから重要な役割を担うことになる」
すると陳恭は複雑な表情を見せた。
実は先日、郭淮が黄預(コウヨ)を遣わし、手ずから荀詡を殺せと命じたという。
郭淮は陳恭が曹魏に従う最後の証拠を欲したのだ。

↓(´-ω-`)むむむ…


陳恭は馮膺が人員を決める際、荀詡は性格的に向かないと何度も反対していた。
やはり郭淮に弱みを握られることになったが、馮膺は適任だったと否定する。
荀詡だからこそ司聞曹の目を盗んで事を成し、計画通り進めてくれたおかげで陳恭も任務を果たせたのだ。
すると楊儀は荀詡の役割も終わったと言った。
個人の死より漢の偉業が優先、馮膺と楊儀は郭淮に疑われぬよう荀詡を殺すしかないと迫る。
「情に流されるな」
一方、荀詡と裴緒は馮膺が関わった文書を徹底的に洗い出していた、
そしてついに建安23年に起きた″資中県の乱″にたどり着く。
荀詡はようやく陳恭が馮膺に恨みがあると知ったが、陳恭が公私混同するとは思えなかった。

黄預は荀詡を誘き出すため配下に西郷(セイキョウ)城外の関所を襲わせた。
もし陳恭が義兄弟の始末にしくじった時は五仙道を破滅させた恨みを晴らす絶好の機会が訪れる。
一方、陳恭は李厳の別荘にいる柳瑩と接触、しかし皇帝の密詔はまだ見つからなかった。
最近は李厳の許可がなければ書斎に入れず、手をこまねいているという。
陳恭は密詔の破棄が任務だと釘を刺し、柳瑩にあらかじめ司聞曹が出した通行許可の令牌を渡した。
「任務を終えたら速やかに発て…この地を離れ、生き延びてくれ」

↓(´-ω-`)ん__


天水は激しい雨だった。
今にも氾濫しそうな黄河を眺めながら、郭剛(カクゴウ)は叔父に燭龍からの連絡がないと告げる。
しかし郭淮は陳恭の能力を信じていた。
「こたびも諸葛亮は天の時を得られぬだろう」
魏延(ギエン)を率いて斜谷(ヤコク)を攻めるのは目くらまし、真の狙いは陳倉(チンソウ)だ。
陳倉城は小さいが堅固、守りやすく攻め難い。
郭淮は郝昭(カクショウ)に死守させると同時に援軍として王双(オウソウ)を遣わしていた。
諸葛亮は陳倉で兵糧を備蓄し、後方支援の拠点にしたいのだろう。
陳倉を奪えなければ祁(キ)山で我が軍と相対、李厳はその隙に計画を実行し、蜀軍は数月で内部から崩壊するはずだ。

陳倉を攻め始めて20日、蜀軍は敵の固い守りに手こずり、数名の将軍を失っていた。
諸葛亮が陳倉を陥せないと踏んだのか、郭淮は渭水(イスイ)に到着後、北岸に陣を張ったという。
真の狙いは陳倉ではないが、諸葛亮は撤退しないと決めた。
「王双を討ち、故(コ)道から祁山へ抜け、魏延の先鋒と合流しよう
 待ち構えているなら勝負といこうか」
諸葛亮はここ最近の風向きが川を渡るのに有利だと指摘した。
そこで船に新式の連弩(レンド)を乗せ、郭淮の度肝を抜くという。
「廖(リョウ)将軍、引き続き陳倉を攻め、力ずくで奪え…案ずるな、私に考えがある」

つづく





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最終更新日  2022.12.10 21:39:55
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