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カテゴリ:玉昭令 全52話
玉昭令 No Boundary Season 2 第7話 温孤(オンコ)が幽族の新王に即位したおかげで和議の話はとんとん拍子に進んだ。 しかし丞相は調印式に端木翠(ダンムーツェイ)ではなく高伯蹇(コウハクケン)を連れて行くと決める。 端木営が後方で待機だと知った展顔(ヂャンイェン)は困惑した。 「高伯蹇にそんな大役を?」 端木翠の話では丞相の配慮で幽族と戦ったことがある觳閶(コクショウ)と端木翠は外されたらしい。 展顔は丞相らしからぬ決定に首を傾げ、最近の丞相の変化を訝しんだ。 人族と幽族の和議は幽族が場所を指定し、人族が屋舎の設営を受け持つことで合意した。 そこで江文卿(コウブンケイ)は楊鑑(ヨウカン)を幕舎に呼び出し、幽族が裏切った場合に備える必要があると訴える。 「お前に頼みがある、お前は法術に詳しいな?幽族の力を削ぐ陣を知らぬか?」 楊鑑はちょうど有効な陣を編み出したところだったが、制約が多いのが難点だと説明した。 しかし江文卿はその陣を張るよう指示、どちらにせよ幽族が裏切らなければ杞憂に終わるという。 「さすがは義父です」 和議を明日に控え、阿弥(アビ)は帰郷してから慌てることがないよう、仲間たちの進路希望をまとめていた。 縁談を望む者もいれば学問の道に進みたい者もいたが、阿弥は端木翠について行くと決めている。 すると端木翠は戦が終われば将軍と配下ではなくなり、姉妹だと言った。 「では一生、姉妹でいましょう」 江文卿は日増しに体調が悪くなり、今日も激しい頭痛に襲われた。 急いで机にある香袋で痛みを紛らせる江文卿、すると展顔がやって来る。 「何だか妙な匂いがしますが…何の匂いでしょう?」 江文卿は展顔に勘づかれたかと警戒したが、展顔は香の匂いだろうとはぐらかした。 …濃厚な香でも消せない別の臭いが混ざっている… しかし幕舎に怪しい点は見つからず、端木翠が話していた新しい敷物だけが目立っていた。 「頭痛に悩む知人を思い出しました、頭痛に効く按摩を習ったので施術しましょうか?」 「ではやってもらおう」 そこで展顔は丞相に鎌をかけた。 「…義父、痛くありませんか?」 「ああ~ちょうどいい、顔児、そのツボだ~(はっ!)」 江文卿はうっかり口を滑らせたが、端木翠の配下なら自分を義父と呼んで構わないと誤魔化した。 展顔は薄々、丞相の正体に気づき、丞相と自分の義父は似ていると牽制した。 実は義父を助けたいと思っているが、何をしたいのか考えが分からないという。 すると丞相は急に厳しい顔になり、按摩を続ける展顔の手を止めた。 「…知られたくない理由があるのだろう」 「それが過ちなら?」 「表面だけで物事を判断するな、大局を考えた結果かもしれぬ 世の中には犠牲を伴って初めて得られるものがあるのだ」 「義父はなぜ何も教えてくれないのですか?力になれるかもしれないのに…」 「我が子を巻き込みたくないのだ、お考えあってのこと」 「どうしても止められないと?」 「…それは義父本人でないと答えられぬ」 江文卿は展顔が自分の正体を疑っていると気づき、和議の日は兵営に残るよう命じた。 和議の当日、丞相は会場の10里外に端木営と觳閶営を残し、警固につく楊鑑営だけを連れて行くことになった。 待機を命じられた端木翠はやはり同席したいと嘆願したが、丞相は頑なに拒む。 そこで端木翠は伝令兵として阿弥を楊鑑に付かせると決め、楊鑑も快諾した。 一方、兵営の留守番を命じられた展顔は丞相の幕舎を探ることにした。 すると留守にもかかわらず、頭痛のためだと説明していた香が焚かれている。 …何か隠している(はっ!)これは死肉の臭いか?!… 展顔は不自然な新しい敷物をめくってみると、何かが埋められていた。 觳閶は初めての後詰(ゴヅ)めにどこか居心地が悪かった。 すると端木翠は和議が成立すれば戦がなくなり、平穏な日々が待っているという。 しかし觳閶はのどかな暮らしが性に合わないため、辺境への移動を申し出るつもりだと話した。 「生まれながらの将軍ね…あなたがいれば民は安泰だわ」 「…初めて褒めてくれたな」 「口に出さなくても尊敬していたわ」 「…展顔のような良き理解者に出会えて良かった」 「あなたも出会える」 「そう願うよ」 温孤は人族の地を見たいという母の夢を叶えるため、調印式に同行させた。 そして温孤と丞相がそれぞれ盟約書に印を押し、人族と幽族の和議が成立する。 一方、敷物の下を掘り起こしていた展顔はついに江易(コウイ)の亡骸を発見した。 …まさか本当に江丞相の遺体が埋まっていたとは、義父の仕業なのか? …何をする気だ? 展顔は楊将軍の話を思い出した。 高伯蹇は機密のため同行者の名簿を見せてくれず、大手柄を立てると豪語していたという。 …和議で手柄を立てるとはどういうことだ? 確か丞相は″世の中には犠牲を伴って初めて得られるものがある″と言っていた。 「大変だ、争いが起こる!」 丞相の計らいで和議を記念し、祝杯を挙げることになった。 まずは丞相が杯を空けたが、温夫人は突然、息子の杯を払い落としてしまう。 「飲んではだめ!…封喉(ホウコウ)という毒が混入しています 酒と匂いが似ているため普通は気づかないでしょう、でもお忘れなく、私は医者です」 温夫人あらゆる毒に通じ、嗅いだだけで判別することができた。 しかし丞相が無事だったことから高伯蹇が言いがかりだと憤慨する。 「ならば飲んでみてください」 温夫人は自分の杯を持って丞相の席の前に立ったが、その隙をついて高伯蹇が隠し持っていた短剣を抜いて幽王に襲いかかった。 すると温夫人が咄嗟に飛び出し、息子をかばって刺されてしまう。 温孤と紅鸞(コウラン)は丞相にはめられたと気づき、法術を放った。 しかし楊鑑が張った陣のせいで攻撃力が衰え、打撃を与えることができない。 その時、楊鑑率いる人族軍と蚊男率いる幽族軍は屋外で待機していた。 すると突然、屋舎から閃光が見え、何か異変が起こったと気づく。 「丞相を守れ!」「王上を守れ!」 人族軍と幽族軍は屋舎に雪崩れ込み、調印式は戦場と化した。 江文卿は水時計を確認、幽族の力を抑えられるのは1刻が限度だと気づく。 一方、温孤は倒れた母を腕に抱いたまま呆然としていた。 温夫人はわずかに息があったが、紅鸞と2人でしっかり生きて欲しいと伝えて絶命してしまう。 その頃、展顔は懸命に馬を駆けていた。 しかしこのままでは間に合わないと考え、咄嗟に照明弾を上げる。 待機していた端木翠は端木営の信号に気づき、和議の場で何かあったと直感した。 「展顔だわ…信号の道具を渡してあるの、急いで向かえと警告している」 ついに陣の威力が切れた。 母を殺された温孤は激情に駆られるまま龍気を放ったが、丞相は咄嗟に柱に隠れてしまう。 巻き込まれた高伯蹇は丞相に助けを求めたが無駄だった。 江文卿は裏で高伯蹇だけが頼りだと懐柔し、和議が見せかけで幽王を殺す計画だと明かしながら、あっさり見捨ててしまう。 すると温孤は母を殺した丞相に再び襲い掛かろうとした。 しかし楊鑑が阻止、人族軍と幽族軍が対峙する。 「温孤!信頼を裏切るとは卑怯だぞ!」 楊鑑はひとまず争いを収めようとしたが、丞相が皆殺しにしろと命じた。 義父の思わぬ言葉にたじろぐ楊鑑、その一瞬の隙をついて蚊男が襲いかかる。 「危ない!」 その時、咄嗟に飛び出した阿弥が楊鑑の身代わりとなって蚊男に刺された。 「阿弥!」 「…戦が終わり故郷に帰る日を迎えることは…やはり…できませんでした…将軍のことを頼みます… 楊将軍もどうかご無事で…」 端木翠と觳閶が現場に到着した。 2人は何が起こったのか分からず呆然となったが、その時、端木翠は楊鑑の腕に抱かれた血だらけの阿弥を見つける。 端木翠は一目散に阿弥の元へ駆け寄ったが、阿弥は二度と目を覚まさなかった。 「阿弥…阿弥!」 愛する阿弥を殺された楊鑑は激高、温孤に襲いかかるも龍気には敵わない。 一方、江文卿はこの混乱に乗じ、独りでこっそり逃げ出していた。 展顔が和議の場に到着すると、ちょうど前から丞相がやって来た。 「お前がなぜここに?!」 「丞相…いいえ、義父」 展顔は丞相の天幕で江易の遺体を見つけていた。 動揺した江文卿は再び激しい頭痛に襲われ、慌てて香袋を取り出す。 展顔はその香袋を作ったのが義母だと知っていた。 「もう隠せません、正気に戻ってください」 「正気に戻れだと?くっくっくっく…」 江文卿はようやく沈淵まで来たのは神位を取り戻すためだと白状した。 千年前には行われなかった和議を結べば歴史が変わり、冊封を行えなくなる。 「神仙になるのは千年後の啓封(ケイホウ)のため、天下のためであり、三界のためである」 しかし展顔は民のためだと言いながら、義父のせいですでに多くの無辜が死んでいると非難した。 「神仙になるのは天下のためではない、私欲を満たすためです」 「…お前は色恋に溺れ、端木を追って沈淵に入った、お前の心に啓封の民はあると? 己の職務と責任を忘れているのでは?」 すると展顔は巨闕(キョケツ)を抜いて義父に突きつけた。 「私は良心に恥じることはしていない」 端木翠はひとまず両族の争いを止めた。 興奮おさまらない楊鑑は阿弥を殺されたと嘆き、一方、温孤は盟約を破ったのは人族だと言い返す。 聞けば丞相が温孤に毒酒を飲ませようと企み、それに気づいた母のおかげで助かったというのだ。 端木翠は信じられなかったが、確かに温孤が裏切るとも思えない。 その時、丞相を人質にした展顔が現れた。 つづく _(:3 」∠)_ 沈淵、長過ぎ問題 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.01.24 15:18:30
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