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カテゴリ:夢華録 全40話
梦华录 A Dream of Splendor 第31話「意外な救世主」 東京(トウケイ)は嵐に見舞われ、大きな被害を受けた。 池蟠(チハン)は率先して船着場の復旧に尽力していたが、横暴な官吏たちから理不尽な仕打ちを受ける。 そんな池蟠を援護したのは偶然、通りかかった趙盼児(チョウパンアール)だった。 「皆が立ち直ろうとしているって時に何なの?!卑しいのは人ではなく、人を見下す心よ!」 「その通り!」 パンRの言葉は群衆の心を打ち、皆がさかんに囃し立てた。 すると焦った提点(テイテン)は汴河(ベンガ)に帽妖(ボウヨウ)が出た時2人の女が逃げたと話し、あろうことかパンRと孫三娘(ソンサンニャン)がその2人だと因縁をつける。 群衆は帽妖と聞いて及び腰になったが、その時、突然、琵琶の音が響き渡った。 船着場に沈如琢(シンジョタク)の元から逃げ出した宋引章(ソウインショウ)が現われた。 引章はパンRと三娘が賊なら、共に茶坊を開き、同じ屋敷で暮らす自分も責めを負うべきかと迫る。 「ならば私に″風骨″の揮毫(キゴウ)を下さった柯(カ)老相公も、その場にいた蕭(ショウ)宰相も同様ですね」 提点は帽妖事件に重臣が関わっているはずないとあしらったが、池蟠は帽妖事件なら皇城司(コウジョウシ)の担当だと揚げ足を取った。 「いつから開封(カイホウ)府の提点が担当することになった?」 その頃、参内した高鵠(コウコク)は門で驚くべき男と出くわした。 「欧陽旭(オウヨウキョク)?!なぜお前がここに?!」 「無事に抱一(ホウイツ)仙師にお会いできて昨日、帰京しました」 池蟠はパンRが生き閻魔こと顧千帆(コチェンファン)の許嫁だと明かした。 驚いた提点は態度を一変、酒を飲み過ぎて人間違いしたと謝罪したが、パンRはお互いに権勢を盾にした者同士だと笑う。 「私たちは確かに卑しい商人です、書生の高潔さや官吏の武勇はない でも私たちが酒や茶を売らなければ、都や大宋の繁栄はなかったはず 都に抃河が必要なように、大宋にも商人が必要ではないでしょうか?」 パンRは民と心を合わせることができれば提点の名も轟くだろうと諭した。 高鵠が屋敷に戻ると高慧(コウケイ)が涙にくれていた。 実は都に戻った欧陽旭から文が届き、以前、西京(セイキョウ)に送った腹当ての半分を返してきたという。 婚約解消のため用心棒を送った時、恋文を取り戻すよう命じたが腹当てのことはすっかり忘れていた。 「残りの半分には私が刺繍した″慧″の文字が…」 パンRと三娘は引章が逃げてきた理由を知った。 引章は顧千帆に敵を討って欲しいと頼んだが、パンRは自分と顧千帆も終わったと明かす。 実はあれから顧千帆が姿を消してしまい、酒楼は買い取れず、茶坊も嵐で壊れていた。 パンRは危うく引章の姉との約束を破るところだったと反省したが、引章は自分の虚栄心や嫉妬心が原因だという。 「私は悟ったわ、風骨の2文字は士大夫だけでなく、女子の立身の礎でもあるとね 茶坊であれ酒楼であれ、己の力を頼りに盗まず、奪わず、媚びず… 稼いだ銭に貴賎の区別はないはずよ!」 引章はすっかり大人になって帰ってきたが、パンRはもはや商いをする気力を失っていた。 「銭塘(セントウ)に帰るわ」 しかし三娘は反対、パンRを叱咤する。 「東京に残ったのは顧千帆のためではなく、意地を見せるためだったはずよ?! どうして男に執着し、初心を忘れるの?!」 パンRはようやく目を覚まし、自分にも意地があると奮起した。 池蟠はパンRたちに追いつき、和解を申し出た。 パンRは無視したが、池蟠は自分の話を聞いて欲しいと訴え、しつこく追いかけ回す。 その時、偶然、杜長風(トチョウフウ)が通りかかった。 三娘の危機だと誤解した杜長風は棒を振り回し、運悪く池蟠の頭に当たってしまう。 一方、皇城司では未だ顧千帆が昏睡していた。 知らせを受けた陳廉(チンレン)が慌てて戻ったが、予断を許さない状態だという。 蕭欽言(ショウキンゲン)が連れ帰ろうとしたが、孔午(コウゴ)が司使の命に従って断っていた。 しかし何度も訪ねてきたパンRまで追い返したと聞き、陳廉はパンRが顧千帆の許嫁だと明かす。 「茶坊の見張り役を呼べ、それからパンR姐に近頃、会ったか、私の母に聞いてこい!」 パンRたちは医館で治療を受ける池蟠に付き添った。 すると池蟠は船着場でのパンRの説諭に感銘を受け、本気で手を組みたいという。 実は池蟠は東京十二商業組合の会頭でありながら酒楼組合に加われずにいた。 永安(エイアン)楼という酒楼を持っていたが客足が少なく、いくら銭を積んでも重鎮から見下され、毎年の竈(カマド)神祭りでも在席さえ許されないという。 「3人を永安楼の主として迎えたい、損失は私が負うが、儲けは半分ずつだ」 しかしパンRはあの日の屈辱を忘れられず、医館を出て行ってしまう。 池蟠は慌てて追いかけ、人目もはばからずひざまずいて叩頭した。 「3度、叩頭させたから私は4度だ、これでどうだ?…銭塘には帰らないでくれ!」 「銭塘に帰る?!誰が?!」 三娘に思いを寄せる杜長風は慌てて口を挟んだ。 池蟠の話では3人が銭塘に帰ると話していたという。 驚いた杜長風は教坊司に籍がある宋引章は都を離れられず、引章を独りぼっちにするつもりかと反対した。 パンRは三娘と引章の意思を確認して条件を出した。 「では私が店主で三娘が料理長、引章は宴での音曲を担当 接客を担う招娣(ショウテイ)には給金の支払いを… 切り回しや働き手、長場は取りまとめるけど、配下も含め手を出さないこと 期限は1年、不満が生じたら直ちに退かせてもらう、退いても責めは負わず、引き止めも禁じる」 すると池蟠は何も書いていない紙に血判を押し、パンRが自分で文面を書けばいいと言った。 「池蟠、なぜ急に私たちを信用し始めたの?」 「そっちこそ、なぜ私に助け舟を?」 池蟠は確かに時折、愚行に走り、偉そうな態度を取ったりするが、同志と共に永安楼を天下の名店にしたいと考えていたという。 「酒楼組合の重鎮が憤るくらいにな!」 パンRは池蟠にも意地があるのだと共感し、申し出を受けることにした。 池蟠はパンRたちを永安楼に案内した。 永安楼は豪華なたたずまいだったが閑散としており、客がいないため使用人も賭場で遊んでいる始末だという。 一方、高鵠は娘を欧陽旭に嫁がせることにした。 思えばこれも高慧の自業自得、忠告を聞き入れて早く目を覚ましていれば、こんなことにはならなかっただろう。 高慧は欧陽旭に掛け合うと言ったが、高鵠は止めた。 欧陽旭は今や翰林(カンリン)学士、何より恐ろしいのは欧陽旭の後ろ盾だという。 永安楼はもともと見せ物小屋で、池蟠が安値で買い取り、酒楼に改造していた。 永安楼には今もその名残が残っていたが、放置されたまま荒屋のようになっている。 池蟠はパンRを上階に案内、幼い頃、父とここから相撲を見たり、人形芝居を楽しんだりしたと懐かしんだ。 「ここに座って顧千帆…いや、隣に住んでいた奴と一晩中、磨喝楽(モホロ)人形と遊んだものだ」 池蟠は当時、自分にとって楽園だった見せ物小屋を壊せず、今もこうして残しているという。 するといつの間にかパンRが階下の演舞台に立っていた。 つづく ( ̄▽ ̄;)何だかパンRが1番の問題児のような気がしてきたわw お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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