テーマ:観てほしい舞台(10)
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〈彼〉は市井の下駄職人の三男坊として生まれた。大正十四年のことである。それから、〈彼〉は八歳で遠藤曲馬団に入団した。
これは、江戸川乱歩本編では「サーカスの怪人」に、たった一行、「元サーカス団員遠藤平吉」と叙述があるのみの世紀の怪盗、「怪人二十面相」を主人公にした北村想氏の傑作架空伝記小説「怪人二十面相・伝」の書き出しである。 この小説では「二十面相は二人いた」と設定されている。戦前に活躍したのが初代、戦後登場するのが二代目平吉二十面相である。 この小説を基に「語り」として再構成されたのが、2005年、伊丹AI・HALLで上演された、AI・HALL+北村想プロデュース「MONO語り 怪人二十面相☆伝」という作品である。 母親に捨てられ、孤児になり、サーカス団に引き取られた平吉は、そのサーカス団で、天才曲芸師、後の初代怪人二十面相、武井丈吉と運命の出会いをする。同じ孤児でもあり、ロマンと論理的思考力の持ち主丈吉に心酔する少年平吉。しかし、やがて丈吉は劇場犯罪を夢想し、サーカス団を去ることになる。丈吉は鍛錬を重ね、「怪人二十面相」と名乗り、世間をアッと言わせる奇想天外な方法で、痛快に、次々と金持ちからお宝を頂戴する。名探偵明智小五郎、登場。天才二十面相と奇才明智との直接対決。知恵と権力を手懐け「社会的正義はこちらにある」と悪魔の論理を振りかざす明智に対して、「賭けるものは身体ひとつ。命がけの遊びをしている」と切り返す丈吉。クライマックスの国立美術館。まんまと明智を出し抜いた丈吉二十面相。屋上の気球で明智の弟子、小林少年と対峙。気球の大爆発。小林少年を助け出した後、致命傷を負った初代二十面相丈吉は消息を絶つ。この丈吉二十面相の一連の「命がけの遊び」を静かに、しかし、熱い想いで受け止めている者がいた。そう、あ のサーカス団の少年平吉である。ここで「MONO語り 怪人二十面相☆伝」はカーテンフォール。 後に、復員した平吉は師匠の想いを受け継ぎ、二代目「怪人二十面相」を襲名する。平吉二十面相の活躍は「怪人二十面相伝」の続編小説「青銅の魔人」にくわしい。 さて、今回、上演する北村想氏書き下ろしの「MONO語り マスク・THE・忍法帳」は、AI・HALLプロデュース「怪人二十面相☆伝」のスピンオフ、「外伝」である。二代目明智小五郎こと小林少年との対決の表舞台ではなく、これは裏の舞台。「影」の物語。ある謎の人物から依頼を受け、お宝奪還に奔走する二十面相平吉のとあるエピソード。二十面相の知られざる裏の仕事。迫り来る刺客。はたしてお宝奪還なるや否や。 「MONO語り」はエンゲキの新しいジャンルだと思っております。語らせていただく「MONO語り」が一瞬でもお客様の心に触れることが出来ましたら幸いです。 想像力の欠乏したCG映画に食傷気味の皆々様、ぜひ、ご来場ください! 空の駅舎 中村賢司
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Last updated
2008.06.29 11:54:43
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