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2004年05月14日
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カテゴリ:story
とか言っても最近は土日もないけど(爆)。
でもなんか気分が軽いもんであります。

これから出勤!とりあえず最近読んだ本でも挙げて後でまた!

『髑髏の結社』ハイルヒトラー!きつかった~!でもまだ上巻だけ!
『約束の地』反動で2日で読了!やっぱ楽だわ。楽が一番
『神宮の森の伝説』ノスタルジーだなあ。アマチュアリズムが尊かった時!

-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-

さて金曜17時。今の所嵐もなく順調。でも明日も仕事だけどね(泣)。

ちょっと本の話は後回しで静かな週末、こんなのを。


◆マッターホルン/思い出のバー1

まだ半分学生という身分の頃、東京でバイトの仕事を終え横浜に帰る途中、週末には大岡山でアパート暮らしをしていたラグビーのキャプテンの所に転がり込んで良く飲んだ。学校に行っていたとは言え日中はほぼ働いていたのに、どうやってそんな時間を作っていたのかもう覚えていないのだが(笑)学校近辺で待ち合わせたサークル仲間2,3人で転がり込み、特に社会の差別や弱い人々の事について話しながら酒を飲んだ。みんな血気はやる学生だったのだ(笑)。

文学や演劇や学生運動の話なんかもした。清水幾太郎の変わり身はどうゆうことなのだ!?とか。日本が西洋文化一辺倒なのはおかしいとか、本多勝一はどうしたことだとか、南方熊楠は良いぞとか(笑)。

熊谷の自宅から通っている物知りタイプのプロップは、知識ばかり豊富で頭デッカチだと非難された。福岡出身の次期キャプテンは、大家さんの子供の家庭教師をしてアパート代を安くして貰っている真面目一筋だった。アパートの部屋にコカ・コーラホームサイズの瓶が50本は溜まっているというバイスキャプテンは北海道生まれの豪傑で「そんなこと言ってもしゃーあんめぇ!現実にあんだろうが!未来を変えるしかなかろう?」

山形出身の先輩は寡黙な人でもくもくと酒を飲む。ある量を超えると急にニコニコしながら怒り出した。この部屋の主であるキャプテンは三重の人であったが、ちょっと斜に構えて石原裕次郎タイプの不良を装おう、でも実は正義の味方タイプであった。一番の長老は4年生のおじいちゃんとあだ名されたスクラムハーフで、酔うとマルクス経済学の話を始めた。自ら反主流派と名乗っていた。

「いいかお前ら大学生だってエリート意識なんかもっちゃあいけねえ。社会に出たら大学での勉強を生かすことを考えなきゃあな」自分だって大学生なのになあと苦笑しつつも、多くの学生がエリートコースに乗って就職して行くのを横目で見ながら(爆)僕らは実はこのおじいちゃんに結構影響されて反主流派を名乗っていたりしたのだ(笑)。それは結局狐のすっぱいブドウだったのだけれども(苦笑)。

「お前はなあ考え方がプチブル的なんだよなあ。他は良いんだけどなあ。」「何言ってるんですか私は勤労学生、プロレタリアートですよ。先輩なんか仕送り学生生活じゃないすか。」「いや考え方は生まれや状況には左右されないんだ!」(爆)

その大岡山の駅前から伸びる商店街の一本隣道に、マッターホルンというバーがあった。我々の母親より年上の女性が一人でやっているバーで、近くの東京工業大学の先生が良く飲みに来る一種変わったバーだった。キャプテンはアパートと大岡山商店街の途中にある銭湯の帰り。洗面器を持って良くビールを飲みに入っていたらしい。ある日「なかなか話の面白い岩下さんという女性がやっているんだ。一緒に行こうぜ。」と誘ってくれた。

それ以来、キャプテンの部屋で飲んで下ごしらえをすると、みんなでマッターホルンに繰り出すのが恒例となった。そしてまたキャプテンの部屋に雪崩戻ってグースカと寝るのだ。週末になるとそんな感じだった。冬は3人でこたつに下半身を突っ込んでキングギドラ状態で寝、夏は窓を全開にして蚊取り線香を点けた。朝方になると近くの天○教団のドンドンと太鼓を叩く音で目覚めた。先に寝た奴はみんなに悪戯され僕も一度起きたら金髪になっていた。

マッターホルンはバーと言っても下町の商店街。バイト代が出ると我々学生でも週に1、2回は行ける低価格の設定だった。室内はひっそりとして全体に暗く、良く言えばムードのある、昭和20~30年代の雰囲気が漂っていた。壁には店名であるマッターホルンのポスターと共に、ユトリロやロートレックのポスターが飾ってあった。瓶ビールにニッカに角瓶、それにチーズとクラッカーがメインメニューだった。それでもクリスマスの時はバーらしく、華やかにツリーを装飾し、ケーキを一切れづつ出してスコッチを振る舞ったりした。

岩下さんは岸恵子をちょっと老けさせた感じの、恐らく60代位の女性だった。福岡からいろいろあって一人で上京してバーを開いた。嫁いだ先の古い家の因習と女性の自立を目指す考え方と合わずに苦労をしたらしい。「あなた方の先輩がこの店を作る時手伝ってくれたのよ。」とかで、見たこともない先輩方の善行?もあり、終電の無くなった我々を泊めてくれたり何だか良くして貰った憶えがある。僕らも重い荷物の移動や棚卸なんかを手伝ったりした。

物事を筋道を立ててキチンと言う女性だった。丸山真男を読んだりしていて負けたと思った。僕ら学生の前で酔っ払った大学教授の話を「それは先生、考えが片寄ってるわよ」と的確に論破し、普段、東工大のエリート達の前で小さくなってる三流ラガーマンである僕らは心の中で拍手喝采していた。

逆に僕らも中途半端なことをいうと厳しく叱咤された。政治文学社会。何だか角瓶を飲みながら講義を受けている様だった。「あなたたちは若いんだから、そうよ。もっと社会を変えてゆく考え方を持たなくっちゃ」

おじいちゃんはこの岩下さんと良く話が合った。コピーライターという職業がクローズアップされて来たある日、いきなり「マッターホルンは僕らの教室だ!」という名キャッチフレーズを作り、一人で悦に入っていた。岩下さんやキャプテンや僕らがしらけていたのに(爆)。

大岡山商店街の角を曲がると、マッターホルンの玄関に裸電球が付いているのが分る。消えているとそれは休みということだった。「今日は電気が付いてたら良いけど、消えてたら養老の滝にして安く飲もうぜ。」練習帰りにそんなことを言っていたことを思い出す。

(^_^;)

そして月日は過ぎ、みんな学校を卒業して大岡山には誰もいなくなった。キャプテンのアパートの部屋は何代か後輩に受け継がれていた筈なのだが、いつしか知っている顔もいなくなっていた。横浜に住み続けた僕は何回か行くチャンスがあったのだが、しかし間が悪いのかいつも裸電球は消えていた。「元気かなあ」その度にちょっと岩下さんの事を考えた。「やめちゃったのかなあ?もう歳も歳だからなあ」

それから何年か後、社会人として恵比寿で働くある日の事、都内に勤めるあのおじいちゃんから連絡があった。「岩下さんが店を閉めるらしい。さよならパーティを開くそうだから一緒に行こう。」会社から駆けつけた懐かしい大岡山商店街。マッターホルンの玄関には裸電球が煌々と光っていた。嬉しくなった。

店内には見たことのある色々な人々の顔があった。常連だった東工大の先生二人はもう白鬚の名誉教授になっていた。東工大の俊英達も皆メーカー勤めのサラリーマンになっていた。何度か話をしたことのある院生はニコ○の研究室に努めていた。司法試験を目指していた人は試験に受かって数年後にガンで亡くなっていた。ラグビーの仲間は皆地元に帰ってしまい。おじいちゃんと僕の2人だけだった。

それでも岩下さんは喜んでくれた。「もう歳だから仕事も辞めて大人しくしようと思って。もちろん勉強は続けるわよ」相変わらずの学究心だったけど、何だか前よりもズッと小さくなってしまった様に見えてちょっと悲しくなった。

パーティーは盛況だった。以前クリスマスの時に来てお客の我々を騒然とさせた(爆)岩下さんの姪にあたると言う早稲田に通っていた美人の双児も(妹さんは旦那様を連れて)やってきた。「ああこの姪がお店を継げば良いのになぁ」だんだん酔ってくる頭で一瞬不埒な事を考えた。

夜も深け常連が名残惜しそうに帰るのを知りつつ、未練がましい僕らは結局ずるずると最後を通り越して明け方まで飲んでしまった。そして朧げな記憶によれば、お店の鍵を閉める岩下さんを二人でタクシー乗り場まで送って行き、さようならをすると五反田まで歩いてカプセルホテルに転がり込んだ。今思い出した、寒い寒い冬の日だった。翌日はひどい二日酔いで出社したのだった。

それから何日かして岩下さんからお礼のハガキが届いた。クセのある文字のハガキを見ながら僕は、学生時代の何かがひとつ無くなったんだなあとしみじみと感じたのだった。

でもあの僕らの教室は、岩下さんや東工大の連中や僕らラグビーの仲間のカウンターでの侃々諤々は、この先も忘れることはないだろう。

(´_`)

…もうさよならパーティも10年以上も前のことであります。今日机の一番下の引き出しを掻き回したらその時に貰ったマッチが出て来た。急にこの話書いておこうと思ってしまった。岩下さんはどうしているだろう。連絡…して見ようかな…。

2004514
せっかく仮名で書いてたのに、バレバレだわ(爆)





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最終更新日  2004年05月16日 21時09分28秒
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