ショート・ショート・ショート14-葛藤-
「自粛警察」と称した報道は、「いきすぎた」と言う。その言葉を聞くだけで気が滅入るくらい知られているというのに「犯罪」とは指摘しない。「法を犯したわけでもない」弱者であることを思い知らせようする悪意を正義感として容認しているかのよう。SNSによる誹謗中傷で犠牲者が出た途端に「犯罪」だとは言えるのに。“中立”である正義とは?マスコミに中立など求めていない。ただ、アナウンスとジャーナリズムを誤解しているのは誰?―閑話休題―ショート・ショート・ショート 6 -自粛の周辺-(April 5, 2020) ショート・ショート・ショート10 -代弁者- (May 7, 2020) ショート・ショート・ショート11 -地元住民- (May 9, 2020) ショート・ショート・ショート12 -個の正義- (May 16, 2020) ショート・ショート・ショート13 -常識と倫理-(May 23, 2020) の続き 「お前らが世の中を良くしようと気概はないのか」と詰め寄った“私”の近隣住人たちに“代弁者”は尋ねた。「今の内容は建設会社か役所に伝えたのですか」放置されたままなのかの確認である。「その苦情を私などに言うのではなく直接役所に伝えてくれ」と責任逃れや問題提起し、不要に事を荒立てるつもりは毛頭ない。無意味に不安を煽ることもしたくはない。不安があるなら「申し立て、相談すれば良い」という思いである。「知らねえよ。言っておけ」「何でしたらまだ建設会社の責任者が近くにいるかもしれませんので呼んできましょうか」「いいわ」「では、伝えておきます。メモするものは無いので正しく覚えていられるかわかりませんけど、よろしかったらお名前など」と調査中にメモを取れないなどない。だとしたら準備不足も甚だしい。個人情報の気遣いである。住民は、またも「いいわ」と乱暴に素性を名乗ることを断り、二人して“私”と“代弁者”から離れていった。ゴルフクラブは残されている一人はまた戻ってくるのだろう。 “代弁者”は“私”の中の調査機材の片付けに戻り、「はぁー」と息を吐いた。「一般健康診断のような“測定(検査)”だけで、苦情・申し立ての病気(問題)を抱える“調査”は必要とされないのが“しあわせ”なのかもしれない。けど“測定(検査)”を“調査”結果の不備のように“匿名”で非難される覚えはない」そんな“代弁者”の思いを“私”は受け止めた。