ごめん織姫全然ハッピーじゃない
「ねえ、茶渡君は自分の力が好き?」「……?ああ」自分は人心の機微に聡いと時に言われる。しかし彼女の考えはよくわからない。「あたしは嫌い、かな」「……」「茶渡君の力は他の人を護るためにあるんだよね?死神の力も滅却師の力もそうだよね」「井上の力も」「あたしのは違うよ」何故そこで笑うんだ。「私は拒絶する」魔法の呪文。「私は拒絶する」万能の呪文。「私は拒絶する」絶対の呪文。「防御兼回復役のつもりだったんだけどなあ」「……実際そうだろう」「違うよ。回復系ヒロインは心清くて優しいと決まってたんだよね、考えてみたら」全然違うよ。「全てを拒む人間にそんな資格はないよ」「私は拒絶する」「俺たちは、井上を拒絶しない」「……ありがとう、茶渡君」井上は何を拒絶したいんだろう。それがわかれば全て解決するような気がするのに、俺はつまらないことしか言ってやれなかった。