新国立劇場「ピーター・グライムズ」こぼれ話
大澤建、バス
Ken Osawa, bass
実はきょう、先日のNNTT、伝説の「ピーター・グライムズ」に出演した歌手の方に貴重なお話を伺うことができましたのでご紹介させていただきます。その歌手の方とは、運び屋のホブソンを演じたバスの大澤建さんです。
ホブソンは村人たちがグライムズの小屋に押しかけるときに、太鼓を叩きます。非常に印象的で鮮烈なシーンだったと思うのですが、それについてのエピソードです。
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大澤建:
これまで30年やって来て最高のプロダクションでした。参加できたことがぼくの誇りになりました。
ドラムは生涯初体験。しかし素人の強みでしょうか、楽しんで叩きました。和太鼓を意識した間の取り方にマエストロも共感してくださいました。
マエストロ(=リチャード・アームストロング Sir Richard Armstrong, CBE 、イギリス人の指揮者)からは「恫喝するような荒々しい音色で、ただし、リズムは厳格に!」と指示されました。それが、和太鼓リズムを取り出したGP辺りから、一切指揮棒を振らずに聴いて合わせてくれるようになったのです。あのシーン、鳥肌たつほど怖いですね!演劇として。
マエストロは流暢なドイツ語を話されますので、英語の下手なぼくは助かりました。(注:大澤さんはドイツの歌劇場で歌っていらっしゃいました。)初めのフェルマータを振らずに聴いてくれているのが見えたとき、「彼のために叩こう」と奮い立ちました。
リハーサルは厳格ですがとても優しい紳士です。また彼とやりたい!
Deckerさん(ドイツ人の演出家)の英語も見事なので、瞬時に使い分けて話していました。
最高の仲間達との出会い、財産です。
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大澤さま、貴重なお話をありがとうございました。この「初めのフェルマータを…」というあたりは本当に胸の熱くなるエピソードですね。全世界の歌手の中で大澤さんとマエストロだけの特別な瞬間ですね!大感動…!
ますますこのNNTT の Peter Grimes が好きになりました。
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大澤建プロフィール Ken Osawa Bio.
Richard Armstrong