2012年3月、プーチン大統領は(北方領土問題に関して)「われわれは、受け入れ可能な妥協点を見いだす必要がある。『引き分け』のようなものだ」と述べている。プーチン大統領は、自らが愛好する柔道にちなんで、「引き分け」という日本語を使いながら、北方領土問題について、踏み込んだ発言を行った。(
FNN2.21)
先日、ロシアを訪れた森元首相は上記「引き分け」論の真意を問いただし、プーチン大統領から『引き分けとは、勝ち負けなしの解決です』、『双方、受け入れ可能な解決を意味する』との回答を得たようだ。
この回答は森元首相には好意的に受け止められたようだが、うちの師匠は武道の視点からこの「引き分け」という言葉には注意すべきだと警笛を鳴らしている。それはプーチン大統領が「引き分け」という言葉を柔道の文脈で用いたからである。
プーチン大統領は柔道経験者であり、武道における「引き分け」の意味合いを森元首相よりは深く理解しているだろう。
師匠曰く、武道における「引き分け」には謙遜の意味が込められている場合が多く、特に上級者が下級者にそのように用いる。俺の方が強いと相手に誇示すのは品がないから、力の差のある相手であっても、引き分けということでその場を終えることがあるのである。
仮に、プーチン大統領がこの「引き分け」を武道の文脈において謙遜の意味を込めて使ったとして、それを聞いて日本が言葉そのままの意味で(対等な)「引き分け」と解釈してしまえば外交上痛い勘違いとなってしまう。