京都壬生大念佛狂言(その8)「炮烙割(ほうらくわり)」
京都壬生大念佛狂言(その8)「炮烙割(ほうらくわり)」 壬生狂言といえば、毎年4月春の壬生狂言9日間公演中毎日の序曲として演じられる「炮烙割(ほうらくわり)」をご紹介します。無言劇ですので、あらかじめ筋書きを知っておく必要があります。「あらすじ」目代(役人)が新しい市場を開こうとして、「一番に店を出した者は税金一切を免除する」という奨励の立札を立てて去る。そこへ鼓を商う羯鼓売(かっこうり:太鼓売)がこの立札を見て、第一番に店を出そうとするが、誰も来ないので一寝入りする。次に炮烙売(ほうらくうり)が来て立札を見るが、先に羯鼓売が来ているのに気付き、寝ている際に自分の炮烙(昔、豆を煎ったりお茶を焙じたりする台所用品)と羯鼓をすり替えて、一番乗りを騙し取ろうとする。しかし、目覚めた羯鼓売と喧嘩になる。 そこに目代がやって来て、二人の持ち物を調べ、これを裁く。目代は二人に芸競べをさせ、どちらか勝った方を一番乗りにすると告げる。炮烙売はなんとかごまかしてやり抜き、いったんは羯鼓売が勝ちを譲る。炮烙売は早速、たくさんの炮烙を並べて開店準備をする。しばらくすると、物陰から羯鼓売が現われ、これらの炮烙を割ってしまう。結局、炮烙売は商売ができなくなってしまい、目代は羯鼓売の方に税金免除の立札を与え、一同は去って行く。{仕草}(炮烙を落とし割る)この狂言は毎年4月春の壬生狂言9日間公演中毎日の序曲として演じられる。京都では、2月の節分に壬生寺に参詣し、炮烙を境内で求め、寺に奉納するという風習が古くからある。この奉納された炮烙を、狂言で割ることによって奉納者は厄除け開運が得られるのである。この狂言の見どころは、なんといっても、炮烙を落として割る場面であろう。積み上げられた多数の炮烙が豪快に落ちていくさまは、まさに圧巻である。厄を除けるというよりは、厄を吹き飛ばすというくらいの迫力がある。ここの狂言堂は二階建てで、二階で演技している。炮烙が一階の土間まで落ちていきます。これを見ると、長年、京都の人々に親しまれ培われてきた庶民信仰に驚きを感じます。「囃子」(「ながし」)壬生狂言は昔から「壬生さんのカンデンデン」と愛称で親しまれている。カンはかねを表わし、デンデンは太鼓を表わしている。この基本のリズムである「カンデンデン」が「ながし」と呼ばれるものだ。この炮烙割は「ながし」が中心である。しかし、その中でも芸競べの際、柱に羯鼓や炮烙を打ちつけるのに合わせて、かねの打ち方を変化させるなど、幅広いバリエーションをもつ囃子でもある。