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3月末から4月初めにかけて、Paques(復活祭)の休日を利用し、サン・セバスチャン(San Sebastian)への、3泊4日の小旅行に出かける。サン・セバスチャンとは、スペインのバスク地方、大西洋に面し、フランス国境に近い街だ。この都市のことは、今回フランスに来るまで知らなかったのだが、多くの知人に勧められ、いつかは行きたいと思っていた。サン・セバスチャンは、海辺のリゾート地だが、とりたてて観光名所があるわけではない。この街を有名にしているのは、何といってもその美食である。旧市街にはバル(居酒屋)がひしめいており、バル巡りが定番となっている。また、より洗練された、ミシュラン星付きのレストランも、市内及び近辺に数多くあるようだ。
サン・セバスチャンは、スペイン・バスク地方の主要都市ビルバオまたは、フランス側のビアリッツまで空路で飛び、そこから向かうのが一般的だが、パリからは、鉄道で行くこともできる。TGVで、スペイン国境手前のアンダイエという駅まで4時間40分程度。そこから、スペインの近郊線に乗り換えて、40分程度。合わせて5~6時間かかるが、飛行機の場合と比べてもトータルでそれほど時間のロスはないし、荷物やパスポートのチェックも無いので、何といっても気楽だ。
ややゆったりと、パリを昼頃出て、夕刻、サン・セバスチャンに着く。 ホテルにチェックインし、買出し等を済ませた後、20時頃、いよいよ夕食に繰り出す。 復活祭の休暇期間ということもあって、海岸沿い、さらに旧市街も、人で溢れている。少し前、ロンドン出張の際に会った知人が、たまたまサン・セバスチャンも以前訪れており、彼から、ロンドンの日本人コミュニティで出回っているらしき、お勧めのバルリストをもらってあるのだが、果たして、目当ての店に入れるのか、心もとない。
そのリストのお勧めNo.1である、Nestorという店をまずは目指す。 Nestorは、数席のテーブル席と、カウンターがあるだけの小さな店だ。テーブル席は当然全て埋まっており、また、立ち席であるカウンターにも、びっしりと人が並んでいる。カウンターに陣取る人の肩越しに、少し様子を伺う。美味しそうなトルティーヤ(スペイン風オムレツ)が焼き上がり、店員が、客の名前を呼びあげながら、配っていく。どういう仕組みになっているのか全く分からない。イギリスのパブであれば、カウンターに人がひしめいていても、待っていれば順に、店員が声をかけてくれるが、ここのカウンターに陣取っている人達は動く気配がないし、店員が声をかけてくれる様子もない。待っていてもらちが明かないので、後ろから店員に声をかけ、ビールと、名物の一つである、しし唐を注文しようとすると、店員が、食べ物の注文に関しては現在満員で、順番待ちだといい、長いリストを見せられる。仕方ないので店を出て、その真向かいにある、これもお勧めの店、Zerukoに入る。 ここも人でごった返しており、どう注文すればよいのかも分からない。強引に、カウンターの周りにひしめく客をかき分けて、一見強面の店員を捕まえて、まずはこの店の名物らしき、ウニを注文する。さらに何品か注文しようとすると、皿を渡される。どうやら、カウンターに並んでいるピンチョス(つまみ)を自分で皿に乗せて店員に渡すと、調理してくれるシステムらしい。ともかく、首尾よく妻が空いたテーブル席を確保したので、そこに陣取り、ようやく食事にありつく。さすがお勧めの人気店だけあり、ピンチョスはいずれも非常に美味しい。特に、自分で、小型の火鉢のようなもので焼く干し鱈は、適度の塩味と甘みが素晴らしい。
2日目は、バスク地方を巡るツアーを入れてある。一応、混載ツアーの設定だが、客は我々しかおらず、実質的にはプライベートツアーだ。このツアーでは、ビアリッツ、バイヨンヌ、サン・ジャン・ド・リュスという、フランス側バスク地方の3つの街を巡る。スペイン側のサン・セバスチャンから、逆にフランス側に戻る形となるが、バスク地方はパリから訪れるのも中々大変なので、この機会に回っておきたいと考えたのである。
天気はやや荒れ模様で、朝方にはかなりの雨が降っていたが、幸い、出発する頃には降り止む。まずはビアリッツへ。大西洋に面した、フランスでも最もメジャーな部類に入るビーチ・リゾートである。
そして、バイヨンヌへ。バイヨンヌの名を知ったのは、名物であるハム(Jambon Bayonne)からである。ちょうどこの時期、ハム祭り(foire au jambon)が開かれており、まさにベストのタイミングだ。会場内には、沢山のハム業者の店舗が開かれている。その中で、ガイドが、ピエール・オテイザ(Pierre Oteiza)氏の店に案内してくれる。オテイザ氏は、失われかけていた、バスク地方特有の豚を再生させ、バイヨンヌをハムの名所として繁栄させる立役者となった人物とのことだ。彼の造るキントア(Kintoa)ハムは、「幻のハム」として、日本のデパートでもかなりの高価格で販売されているようである。驚いたことに、この伝説的なオテイザ氏その人が、店舗に立っており、気軽に試食などもさせてくれる。
バイヨンヌを発ち、最後はサン・ジャン・ド・リュスへ。こじんまりとした、美しい港街だ。
サン・セバスチャンに戻り、この夜もバル巡りだ。一軒目はBar Sport。その名の通り、スポーツバーのようなところで、開店時間が早く、旅行者には便利な店だ。二軒目は、前日に続いてSirimiri。やはりこの店は心地よい。
3日目、ようやくサン・セバスチャンの観光に終日を充てる。 荒れ模様だった前日とは打って変わって、今日は朝から快晴だ。 海岸からずっと見えていた丘の上へと登っていく。丘の上からは、サン・セバスチャンの旧市街と大西洋が一望できる。
12時過ぎ頃店の前に行くと、まだ開店前だが、何人か待っている人がいる。店のシャッターは半分ほど開いており、準備中らしいことは伺える。 徐々に、開店を待つ人達が増えてくる。ある時、旅行者らしい女性が二人、半開きになっているシャッターの下から店内に入って、店員と何やら話をした後、「ridiculous!」と叫んで去っていく。一体何がridiculousなのだろうか。 13時頃、ようやく店が開き、我々は真っ先に店内に入る。 店内には少数のテーブル席があるが、これらは予約客専用とのことであり、後は立ち食いしかない。カウンターの一番奥のスペースに陣取る。ここの定番は、牛のTボーンステーキ、しし唐炒め、トマトサラダであり、それらを一通り注文する。これら以外のメニューを注文している人はいないようだ。店員がキッチンから、大きな皿の上に焼きあがった、美味しそうなトルティージャ(スペイン風オムレツ)を運んでくる。これを注文しようとすると、もう売り切れだという。開店早々なのに売り切れとはどういうことか。すると、店員が紙に書かれた名前を読み上げていき、その客に、トルティージャが一切れずつ配られていく。カウンターの自分達の場所の隣に、日本人の夫婦・子供がいるが、彼らもこれを入手している。聞いてみると、このトルティージャは、開店一時間前以降に一度店に来て、予約しておかなければならないらしい。おそらく、我々が店の前に並び始めた頃には既に、すべて注文は埋まってしまっており、あの「ridiculous」と叫んでいた女性達は、予約をしようとしたところできなかったことに腹を立てていたのだろう。 幸運にも、隣の夫婦が、子供の分が余ったというので、一切れ分けてくれた。以前、日本のスペイン料理店などで食べたトルティージャとは全く違い、中身がとろけるような半熟で、絶品である。さすが、人気商品であることがうなずける。昼と夜、一日に二回しか焼かないらしいが、それもこの店のこだわりなのだろう。
午後はのんびりと海岸を散策する。
夜、サン・セバスチャンで最後のバル巡りだ。 まず一軒目は、Txepetxa(チェペチャ)という店に入る。ここは、イワシ(アンチョビ)を使ったピンチョスで定評がある。アンチョビと、何か他の具材を盛り合わせる形で、非常に多くの種類のピンチョスがある。さすが、アンチョビは新鮮で美味しい。
三軒目、三夜連続のSirimiriで締める。やはりこの店は、リラックスできて良い。
翌日、昼過ぎのTGVで、パリへ戻る。さすが、美食の街と呼ばれるサン・セバスチャンを満喫する小旅行であった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 2, 2019 01:00:12 AM
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