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2008年06月29日
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テーマ:著作権(162)
カテゴリ:オーディオ
何やら揉めていてややこしそうな「ダビング10」が7月4日午前4時から開始されることが決まったらしい。しかし私のテレビは未だにアナログ環境なので,とりあえず今のところはあまり興味がない。

むしろ,CD音源をPCトランスポート経由で聞くことの多い私にとって気になるのが,CDのデジタルコピーと著作権の問題。自分で買ったCDを自分で聞くためにハードディスクにリッピングするのは「私的使用のための複製」に当たるので問題ないという認識で良いのだろうが,ややこしいのがレンタルで借りたCDをコピーする場合。例えば1週間だけ借りていたCDのデジタルデータを返却後も保持しておいて問題にならないかなど,気になったので調べてみた。日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合のページのFAQがよくまとまっていてわかりやすい。とりあえず結論はこんな感じらしい。

 1. アナログ方式でコピー → 問題ない
 2. CCCDなどのコピーガードをはずしてコピー → 違法
 3. MDなど特定のメディアにデジタルコピー → 問題ない(要「コピー代」)
 4. その他のメディアにデジタルコピー → (今のところは?)問題ない


まず1.の場合は,デジタル方式であれば劣化なく繰り返しコピーができるので著作権者への不利益が大きいが,アナログであれば不利益はないということらしい。このあたりの線引きの理由からしていまいち分かりにくいのだが・・・。MDはデジタルコピーとみなされているが圧縮による劣化があるし,逆にアナログ方式でもMDより高音質でコピーできる環境もあるだろう。


2.の場合は,そもそも著作権者が許可していない複製をしてはならないというのが著作権法の前提のようなので,コピーガードをかけている→著作権者は一切の複製を禁じている→コピー制限を解除した時点で違法とみなされる,ということらしい。もっともCCCDの場合,プロテクトをかける決定をする「著作権者」はたいていレコード会社で,アーティストは関与していないことが多いようだが。


3.の「特定のメディア」とは「私的録音録画補償金制度」の対象となるメディアのこと。この制度では,対象となるデジタルメディアを用いて録音,録画する場合には,利用者は一定の補償金を管理団体に支払わなければならないとされており,その補償金はメディアの販売価格にあらかじめ上乗せされているようだ。これまでDAT,DCC(デジタル・コンパクト・カセット),MD,CD-R,CD-RW,DVCR(デジタル・ビデオ・カセット・レコーダー),D-VHS,MVdisc(マルチメディア・ビデオ・ディスク),DVD-R,DVD-RW,DVD-RAMが対象となっていたが,先日これらにBDディスクとBDレコーダーが加えられることが合意され,さらにiPodなどの携帯用音楽プレイヤーやHDDレコーダーも加えるかどうかで揉めているらしい。

レンタルの料金には著作権使用料も含まれている。具体的には,CDのアルバムを1回レンタルするにつき,作詞・作曲家に70円,演奏家に50円,レコード製作者に50円がそれぞれ支払われているようだ(1枚あたり70円程度で借りることができる楽天レンタルなどはこれでやっていけるのか心配になるが・・・)。これまで私は,レンタル時のこの著作権使用料で「私的使用のための複製」の料金も賄われていると認識していたが,この認識はどうやら間違っていたらしい。「著作権使用料」はあくまで聞くためだけの料金であり,デジタルコピーするためには新たに「補償金」も支払う必要があるようだ。(しかしいつからこんな「コピー代」の概念が出てきたんだろう・・・。)

ただ,この「補償金」はメディアの購入時に支払われるため,自分で買ったものを自分で聞くためにデジタルコピーする場合でも支払う必要があることになる。つまり,2.の場合でもそうだが,自分で買ったものとレンタルで借りたものとを区別していないことになり,これがどうも腑に落ちない。この私的録音録画補償金制度の目的が,自分で買ったCDのコピーを防止することであるとはとても考えられないからだ。すぐ返さなければならないCDを,CDを買った場合と同じようにデータとして永続的に所持できるレンタルCDのコピーの場合ならまだしも,自分のCDを単にバックアップすることを禁じても,著作権者にとって何の利益もないはず。そのデータがファイル交換ソフトで流されることを防止するためなどと言われることもあるが,そもそもそのような重大な違反から起きる損失はわずかな補償金などではとても賄いきれまい。ほとんどの善良な消費者からもそういった違反の補償金を取るのは納得がいかないし,逆に,払っていればそういった違反をしてよいのか,という話にもなる。やはり,買ったCDとレンタルCDとを同列で扱うことに無理がある。


そして,問題の4.の場合。今のところハードディスクなどは私的録音録画補償金制度の対象となっていないため,補償金の支払いの義務はないという認識で良いのだろう。ハードディスクを音楽データの保存に使わない人も大勢いるだろうから,MDなどのように販売価格に上乗せして徴収することは難しいようだ。ただ,MDへのコピーだと(購入時にあらかじめ,という形とはいえ)支払い義務のある「補償金」が,ハードディスクの場合には支払わなくて良いというのも不公平感があり,ハードディスクを主に使っている私などは何となく後ろめたさがある。ピュアオーディオにおいてもハードディスクやネットワークアタッチトストレージ(NAS)などを利用したファイル管理が増えつつある時代に,いかにもそぐわない課金体制のようにも思える。



ともかく,ほとんどの消費者にとってこういった議論が煩雑で分かりにくいのがまず問題だ。質問掲示板のYahoo!知恵袋などでも同種の質問が絶えず投稿されている。それに対する回答も,レンタルCDのコピーは全て違法というものから,コピー自体は良いが返却期限が過ぎたらデータを削除しなければならないといったもの,そして私的使用ならOKというものまで様々で,まだまだ理解が行き届いていないことがわかる。違法なら違法ということでいいから,ここまではOKというシンプルで明快な線引きをし,それを周知徹底させてもらいたい。好きなアーティストにきちんと利益が還元される仕組みであれば誰もが納得するはず。世界でCDレンタルがこれほど普及しているのは日本だけのようだが,早く安心してデジタルコピーできる体制を作って欲しいところ。

そもそも,こういったデジタルコピーを制限する仕組みは音楽製作者など著作権者の利益のために作られているはずだが,こういった縛りが本当に彼らの利益になっているのか疑問に感じるところもある。前述のように自分で買ったCDのコピーの場合もそうだが,何らかの形でレンタルCDのコピーを制限することも,結局は著作権者の首を絞めることになるのではないか。例えば私はCDを大量にレンタルしているが,そのために買うCDの数が少なくなるわけではない。むしろレンタルすることによりCDを買う機会が増えていると言える。というのも,レンタルで借りるCDはたいてい,気になってはいるが買うまではいかないCDなので,全く聞いたことのないアーティストのものも多い。ハズレだと感じる場合も多いが,その中からお気に入りのアーティストが見つかることもあり,そうなるとその次に出る新譜や評判の良いCDを買っていくことになる。そういったCDは,レンタルがなければ存在すら知ることもなかっただろう。DRMなどの著作権保護の仕組みやiPodへの「補償金」課金の動きなど,著作権によるこのような縛りのほとんどが,消費者の新たな音楽との出会いを奪う方向に向かっている気がしてならない。むしろ,ネットラジオや動画投稿サイトなどをうまく活用し,未知の音楽との接点を増やす努力をしたほうが,長い目で見れば著作権者にとっても得策ではないかと思うのだが。



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最終更新日  2008年06月30日 21時50分21秒
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