テーマ:今、健康ですか?(253)
カテゴリ:医療となかま♪
私が働く職場は「保健センター」で、外来も併設していますが、健診業務が主体なんですね。
つくばさんのブログでもご指摘があったのですが、現在の健診というのは治癒に結びつけるという意味でほとんど意味がないというのは大方「そのとおり!」といわざる終えない状況にあるんですね。例えば相当進行しても自覚症状がない糖尿病の方が、糖化ヘモグロビン10%以上(基準5.4%以下)なんていう状況で「はじめての健診」で発覚、その後病院に駆けこんで合併症を防げたとかいう場合を除いて、「将来動脈硬化がすすんで、心臓病や脳梗塞になるかもしれない予備軍の人がそうならないようにするためのシステム」はできていないのが現状なんです。それどころか自覚症状では「分からなかった」病気が「分かった」わけですから「要精密」との判定を受けた場合は即病院へ行き、薬で治療という人はどんどん増えていくわけで、健診を受ければ受けるほど有所見者(何か病気を持っている人)も国の医療費も増えるという矛盾した状況が進んでいくばかりなのです。国が平成13年度から掲げてきた「健康日本21」の5ヵ年計画で目標にあげられていた「適性体重を維持している人の増加」や「糖尿病有病者の減少」など目標値に至らなかったばかりか、逆に増えてしまっているありさまで、ことごとく失敗に終わっています。 そこで平成20年度から実施される医療制度改革の柱になっているのが「健診と保健指導の一体化」です。今までの「健診の後のサービス的保健指導」ではなく「これから重症化していくかもしれない人たちを抽出して保健指導をするために行う健診」になるということなんですね。抽出された人は保健指導を受けることが義務化されます。ただし、このように形だけ整えても、肝心の「保健指導」そのものが一番問題で、こちらから一方的に知識だけを押し付ける従来の「指導型」ではなく、「どうしてこういうことになってしまったのか、結果に対して原因を共に探り、どうしたらいいかをアドバイスする」専門家が求められています。 「あるある捏造」は話題になりましたが、「平均的な人という体の構造」に対して、「この食べものを食べるとどういうことが起こるか」ということを前提に情報を発信しているわけですから、捏造は論外ですけど、テレビの健康情報番組は基本的には「うそ」ではないと思います。ただ、視聴者には基本的な「体のしくみ」に対する知識が不足している故に「平均的な人という体の構造」という部分はほとんど印象に残らず、「結局何をすればよくなるのか」という「方法論」しか印象に残りません。ひどい場合は「方法論」しか言わない番組も存在します。さらに、「平均的な人というからだの構造」は、それぞれの生き方、環境によって異なることから、100人「中性脂肪200mg/dl」という人が集まっても原因は100通りなわけですね。体の仕組みをよく理解できると原因と結果が結びつきやすいですが、それができないと原因とは全く結びつかない方法を選択してさらに悪化していく人も多いと思います。 この「からだの構造、仕組み」について学ぶということは単発的にテレビなどで1回聞いて理解できるほど簡単ではありません。また、自分では完全に理解できなくても、身近に疑問に答えてくれたり、どうしたらよいか一緒に考えてくれるという「オーダーメイドな保健指導」をしてくれる専門家が必要だと思うんですね。そういう意味で今回ある程度エビデンス(研究され成果があるとされる)があるとされる「行動療法」を用いた「オーダーメイド的な保健指導プログラム」を標準化して、それできちんと効果があがったかどうかを健診機関は評価しなさいよ。保険者は効果をあげることができる健診機関に健診を委託しなさい。効果があったかなかったかによって保険者に支援金の増減というペナルティー、インセンティブを課しますよと国はいっているんです。今まで収入にはつながらなくても、糖尿病教室などで地道にオーダーメイド型保健活動を展開してきた私たちとしては、今回の国の提示は「やっとまっとうなことをいいだしたじゃない!」と思えるもので、やりがいもあると感じ、さらに多角的に教室を運営しようとプログラムを企画しているところです。 少し長くなりましたが、柳沢厚労相の失言の繰り返しをみるにつけ、(よりにもよって厚生労働省ですからね…)政府への不信感が強まる話題が多い中で、少しは未来に明るい期待の持てる情報提供になればと思い、UPさせていただきました お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年02月10日 15時30分33秒
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