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山形達也85歳の心理学

山形達也85歳の心理学

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2020.06.03
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カテゴリ:友だち
JOYさんの一人娘は卒業就職と同時に家を出て独り住まいを始めただけでなく、JOYさんが訪ねることも拒絶している。JOYさんは絶望の底に落ち込んでいる。どうしたら彼女を慰めてあげられるだろう? 以下は私の書いた四通目のメイルである。


現実に一人娘から疎まれて嘆いていらっしゃる老師を本当に気の毒に思っていますし、どのように慰めたらいいのかと私の心も痛んでいます。

悲しみのどん底の老師に「諦めて放っておきなさい」と酷いことを言って心が痛むのですけれど、これは老師が悪いわけでもなく、純佳さんが悪いのでもありません。日本で子供を育てたためかと嘆いていらっしゃいますが、これは世界の趨勢です

私たち人間は万物の霊長だと言ってこの地球の上で威張っていますが、生き物であることに全く変わりはありません。地球上の生物種の一つに過ぎません。

試しに動物の世界を見てください。鳥は巣を作って卵を産んで雛が孵れば、子育てに一生懸命です。寝食を忘れて子どもを育てるために餌を採ってきます。日本や中国では春になると戻ってくるツバメの子育てはよく見られますね。ペンギンなどは餌を取るのに二、三日外海に泳いで行くのですよ。そのままか帰ってこられない親もあります。こうやって心身すり減らして日夜子供の面倒を見ても、時間が経って数週間後に雛が育ってくれば必ず子供は巣立ちして、そうなると、もう親子の関係は切れてしまいます。生物学的には血縁関係が続かないようにするためですね(同じ系統の遺伝子が交配しないようにと言う意味です)。

鳥の例では、私たちとあまりにも違いすぎるとおっしゃるでしょう。哺乳動物で見てみましょう。

ライオンは子供が育つと娘は一緒の家族としてかなり長く暮らしますが、息子は育つと追い出されます。オスが群れから排除されるのはライオン、ジャッカル、ハイエナなどの肉食動物では普通に見られる現象で、これは鳥のところで書いたように同系の遺伝子が偏らないようにするための生物学的原理の結果です。娘が残って家族を形成するのは、肉食動物が獲物の動物を襲う(狩)ときに有利だからです。

アフリカで見られる草食動物も同じですね。シマウマ、ガゼル、インパラなど、肉食動物と同じように、育った娘は一緒の家族と一緒に暮らしますが、息子は群れから追い出されます。家族がさらに他の家族と群れを作って暮らすのは、肉食動物から身を守るためです。息子が追い出されるのは上に書いた生物学的原理のためです。

雑食動物のチンパンジー、ゴリラなども同じです。強い雄親を中心にして群れを作り、家族はこの群れにいますが、息子は群れから追い出されます。

人はどうでしょう。二足歩行になって手が自由になり、火を使うことを覚えて肉の消化が良くなって脳が発達してきた人類は、それでも足は遅く、腕力も弱く、肉食動物の襲撃に怯えて集団で暮らすしかありませんでした。

女系社会と父系社会の両方ができましたが、大勢は父系社会でした。狩猟社会でも、その後の農耕社会でも、限られた食で生きていくためには家族は団結するしかなく、親の権威が守られてきました。人類の社会的発展をずっと見ると長くなるので、このあたりのところは話を随分端折っています。

蒸気機関が発明されて産業革命が起こると、職種が増え、それに従事する若い人たちは親から離れて遠くに暮らすようになります。つまり自立するようになります。世の中がますます進むと、欧米諸国、特に、親から離れて自分たちの天地を求めた人たちの暮らの移民の国のアメリカでは、大体が親と一緒でないので、親から経済的に離れて独立することが自然な勢いになります(アメリカでは自分の才覚でいくらでも夢を追求して、富を築くことが可能でした)。

鳥や他の動物で見てきたように、一緒に住む利益(一緒に狩りをする、集団で纏まって肉食動物から身を守る、など)がなければ、親から離れるのはごく自然な生物学的成り行きなのです。

この風潮はアメリカからはじまって、西欧諸国、そして日本と続き、いまはそうではない他の国でも何時かはそうなるでしょう。子供が親から離れるのは自然の摂理なのです。

自分のことを書きますと、すでに書いたように、貞子と結婚しようと思って母(親)に告げた時、強く反対されました。姉も反対しました。東大大学院の修士課程を終わる時でしたので(当時は東京都目黒区に住んでいました)、その後東大大学院の博士課程に進むか、名古屋大学理学部から助手として勧誘されたのを選ぶかの選択肢がありました。私は口うるさい母から離れたく、私たちは結婚して、その後の進路として名古屋大学を選んで名古屋に赴任しました。給料は安かったし、頼ることのできる親戚も知人もなく、それはもう大変な生活でした。。。

一年前に姉は結婚してうちを出ていましたし、私もいなくなって一人になった母はとても辛かったと思います。年に二度くらいしか会えなくなって、私たちの関係はかなり良くなりました。私も努力したし、それ以上にひとりぼっちの母は大いに努力したことと思います。

結婚して十数年立って給料もすこし良くなってからは、母に毎月仕送りを始めてそれをずっと続けました。やがて私は一人で東京に職を得ましたが、実家が勤務先から遠かったので別のところにアパートを借りて住み、母をよく訪ねました。そのうち、母は私の近くに家を建てて住むようになりましたので、始終訪ねました。母が90歳近くになって少し頭が怪しくなってからは毎日朝晩訪ねて面倒を見ました。

若い頃どんなに親と衝突しても、母に対する優しい感情は失われないのですよ。親子の自然な愛情を表す気持ちを彼女が取り戻すためには、今は、彼女をそっとしておく時間が必要です。





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最終更新日  2020.06.03 07:30:04
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