2024/03/14(木)05:45
(令和6年3月14日)中日春秋丸写しで一句 神話の名打ち上げれなく陽炎に♪
中日春秋 (書写)
神話の名打ち上げれなく陽炎に
カイロスは、ギリシャ神話の「時」の神。頭の前部に長い髪があ
るが、後部は髪がないという▼男の神だが「幸運の女神には前髪し
かない」という言い回しもある。好機が来たら逃がさずつかまえな
くてはいけないとの意とされる。後ろ髪がないので追いかけてつか
まえることはできない―▼今回はチャンスを逸した。カイロスとい
う名の民間小型ロケット1号機が昨日、和歌山県串本町の発射場で
打ち上げ直後に爆発した。上昇を始めて間もなく炎に包まれた映像
に息をのんだ。宇宙開発に失敗はつきものだが、見る者の記憶に残
る挫折である▼打ち上げを担う宇宙事業会社スペースワンはキャノ
ン電子やIHI子会社などが出資。カイロスとの命名には、商いと
して時間にこだわり世界でも契約から最短で、頻繁に打ち上げるこ
とを目指す野心を込めたという▼神話ではプロメテウスが火を盗み
人類に授けたとされるが、文明が発展した今もなお、全能ならざる
人間は火を意のままに扱えない。他国との競争もあり、時間の経過
は悩ましいが、謙虚に原因を究明するほかなかろう▼カイロスの名
に似た神話のイカロスを思いだす。父と一緒に島の迷宮に閉じ込め
られ、父考案のろう付けの翼で空を飛んで島を脱出するが、太陽に
近づきすぎてろうが溶け、海に墜落した。結果はともかく、窮地を
脱してみせるという闘志は見習いたい。