195492 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

タンゴ黒猫の音楽日記

タンゴ黒猫の音楽日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2007.01.09
XML
カテゴリ:日記
1月8日にラフォーレミュージアム六本木で行なわれたいだきしんさんのコンサート「ペルシャ編」で、エスファハーンのマスジェデ・ジャーメがかなりの時間にわたってフィーチャーされていました。エスファハーンと言えば、メイダーネ・エマーム(エマーム広場)にあるブルーの壮麗なマスジェデ・エマームが有名で、確かにこの寺院は、もうどこをどう歩いても驚き、圧倒されるばかりなのですが、同じエスファハーンにあってやや地味ながら、寧ろ落ち着いた深い経験ができるのがマスジェデ・ジャーメ(金曜寺院)なのです。この寺院は8世紀に建てられ始め、一通りの形を見たのは14世紀頃と言いますから、約600年にわたって増改築を繰り返してできた建物なのです。それだけに、ぐるりと見て廻ると、時代時代の建築様式が残されていて、さながらイランの建築の歴史を目の当りにするようです。そうでありながら、ちゃんと中庭を中心にしたイスラーム特有の建築計画に従っているのがすごいところで、この中庭を中心にして、夏でも涼しい場所、冬でも暖かい場所などが確保されていて、この地方に暮らす人たちの知恵の集積とも言える寺院なのです。

070109a

エスファハーンのマスジェデ・ジャーメ



070109b

そのマスジェデ・ジャーメ内部――渋く、落ち着いた空間



070109c

イラン随一と言われる有名なメフラーブ(部分)



しかし、それにしても600年! ひとつの寺院を造るのに、これだけの年月をかける発想の壮大さ。この年月を聞いて私が思いだしたのは、以前訪れたスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂です。ここはスペイン語でサンティアゴと呼ばれる聖人ヤコブの御遺体が安置されているというところで――ヤコブはイスラームからスペインを守ったとされる聖人なのです――、そのこともあって、イェルサレムがイスラームに支配されて以来、イェルサレムに代わる巡礼地となったところなのです。そこでこの巡礼の道そのものが世界遺産に登録されたところなのですが、そういう聖地の大聖堂ですから、やはりキリスト教の人たちの力も入ります。ここもやはり11世紀頃から16世紀まで500年、教会のそもそもの創建が9世紀ですからそこから数えると実に700年にわたって建てられたものなのです。

070109d

サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂



600年とか700年後の完成を目指して建築を計画するというのはとんでもないことですね。何と言っても計画した当人たちがその完成を見ることができないわけですから。このような遠大な計画に参加した人たちは、キリスト教であれイスラームであれ、同じような心を抱いていたのではないでしょうか。

サンティアゴに向かう飛行機の中で読んでいた本がありました。こうした人たちのことを知りたくて買った本で、ジャン・ジェンペル著『カテドラルを建てた人びと』(SD選書 1969)です。この中で、著者は次のように書いています。

「これからその発展ぶりを示そうとする『教会堂建築熱』の本当の意味での出発点は、中世の信仰のうちに求めねばならぬことはいうまでもない。当時の状況は宗教建築が開花するのにとくに都合がよかった。しかし中世がまず何よりも敬虔な時代でなかったとすれば、建築家の才能と商人たちの金とは、教会堂以外の対象に向けられたであろうことは明白である。そしてシャルトルもアミアンもストラスブールの大聖堂も残らなかったであろう。」(前掲書P47)

「中世のひとびとは気の毒なことに教会堂の完成を見ずじまいで、たえず工事をつづけている教会堂も、息子の時代には完成するだろうと想像することしかできなかった。建築材料を運ぶ荷車のゆきかう狭い現場の敷地には、彫刻師・石切工・石工・しっくい工・屋根師・とび・かじ・解体工(ピッタール)・鉛工・石切役(アパレイユール)など、あらゆる職種の人びとが立ち働いており、壁体に取りつけた足場のために教会堂の一部はつねに隠されていた。

「活気にあふれる現場の作業をみて市民たちは少なくとも、彼らの寄進した建設資金が正しく使われているかどうかを自分の目で確かめられる満足感を味えた。そこで彼らは将来の資金調達に当り、以前にもまして積極的に協力しようという気持ちになったと思われる。自分の財産の一部を絶対君主の娯楽のために投げ出そうなどという気を起した人は、一七世紀にはひとりもないのである。」(前掲書P67)

つまり、これらの大聖堂の建築を支えたのは、一般の市民であった、ということなのです。彼らは自分たちのためには勿論、その子孫の幸福のために、自分がその完成を見ることもないもののためにお金を投じたというのです。何という遠大な生き方なのでしょう。

様々な問題が噴出している現代の日本ですが、よりよい社会をこの国に実現するのに私たちに本当に必要なのはこのような遠大な発想ではないでしょうか。問題が起きる度に出される政策なり法案なりは、目の前の問題ばかりを対象にした対処療法的なものが多すぎるように思えてなりません。これだけ問題が出ているからこそ、じっくりと100年先、200年、500年、1000年先を見据えてものを考える必要があるように思うのです。

新しい年が始まったので、例の、ヒルティの『眠られぬ夜のために』(岩波文庫 1973)をその日付通りに読んでみようと思い起こされた方もいらっしゃるかもしれませんね。(ってそれは私くらいしかいないか!)その『眠られぬ夜のために』の巻頭、1月1日は次のような象徴的な文章で始まります。

「たえず偉大な思想に生き、ささいなことを顧みないように努めなさい。これは一般的にいって、人生の多くの苦渋と心配事を最もたやすくのり越える道である。」(前掲書 P27)

自分にはそんな力がないとか、現実はそう簡単じゃないとか、自分自身を過小評価というよりは矮小化する必要はどこにもないのです。小さく目先のことばかり考えるから自分の実力も世界も小さくなってしまうのかもしれません。あの、何百年も完成にかかる寺院や教会の建築に参加したのが普通の人々であったことを思い出そうではありませんか。

大きな世界に生きること。それが私たち一人一人にとっても、社会全体にとっても、よりよい未来への一歩なのではないでしょうか。私たち一人一人がそう生きる時、かつて巨大な寺院や聖堂が完成をみたように、必ずや皆が幸せに生きていける社会も実現すると思うのです。







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007.01.09 00:49:28
コメント(2) | コメントを書く
[日記] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
別の画像を表示
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、こちらをご確認ください。


Re:遠大なる生き方(01/09)   http://cialisda.com/ さん
homeopathic cialiscialis line prescriptionpurchase once a day cialiscompare cost viagra cialiscialis e viagra on linemisturar cialis com viagraorder cialis soft 8 tabletscialis motel sexsnl cialiscialis britancialis works better than viagraexpired cialis still safewirkungsweise viagra cialiscialis 2 5 mg effetti collateralicvs cialis price
is generic cialis from canada safe <a href=" http://cialisda.com/ #cialis-generic"> http://cialisda.com/ #cialis-generic</a> Cialis generika in deutschland kaufen
viagra and cialis for &#36;89 [url= http://cialisda.com/ #cialis-generic]Cialis tablets[/url]
cialis soft uk supplier [url= http://cialisiv.com/ ]Online cialis[/url]
cialis 20 mg how does it work [url= http://cialisiv.com/ ]Cialis generique[/url]
buy cialis cialis [url= http://cialisda.com/ ] http://cialisda.com/ [/url]
cialis 5mg best price australiavoordelen cialiscialis tadalafil side effectscheap cialis soft prescriptionshow cialis works after ejaculationcialis injury lawyer ohioque choisir viagra cialis levitra (2018.08.20 10:12:36)

Re:遠大なる生き方(01/09)   http://buycialisky.com/ さん
wo kann man cialis generika kaufensnorting cialisdifferenze tra viagra levitra e cialisviagra viagra edinburgh search cialis charlescialis 20 mg espanadiffrence between cialis and viagraeffet cialis dureedangers of finasteride and cialishow to get prescription of cialis softque es mejor cialis o viagra o levitrareview of cialis black
precios de cialis generico <a href=" http://buycialisky.com/ #viagra-cialis-levitra"> http://buycialisky.com/ #viagra-cialis-levitra</a> Cialis great britain
combinacion de cialis y viagra [url= http://buycialisky.com/ #viagra-cialis-levitra]Cialis 5 mg[/url]
online order cialis soft in england [url= http://buycialisky.com/ ]Discount cialis[/url]
does cialis delay ejaculation [url= http://buycialisky.com/ ]Generic for cialis[/url]
low dose cialis side effects [url= http://buycialisky.com/ ] http://buycialisky.com/ [/url]
20mg professional cialiscialis 20 mg costcoupons for cialispotenzmittel viagra cialis levitra &amp; cocialis rezeptfrei kaufencan you cut cialisgeneric cialis free viagra (2018.08.21 05:52:04)

PR

ニューストピックス

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

日記/記事の投稿

バックナンバー

2024.04
2024.03
2024.02
2024.01
2023.12

カテゴリ

プロフィール

タンゴ黒猫

タンゴ黒猫

フリーページ

お気に入りブログ

武蔵野式部日記 武蔵野式部さん
雑記 天の羽衣999さん
 ∞  12の主体の耳… みどりのいるかさん
てんにょ日記 きいろのてんにょさん
MUGI日記 mugigiさん
For world peace... Voielacteeさん
DAICHI 通信 pax mundiさん
生きてる 書いてる… 森生3000さん
カーテンスタイリスト TANPOPO… カーテンスタイリスト TANPOPOさん

コメント新着

affennapync@ ブランドN級品ブランドコピー 代引 人気スーパーコピーブランド時計激安通販…
ゆうなぎ@ Re:『ホツマツタヱ』~ヒルコの話(3)ワカヒメ、歌でイナゴを祓う(01/05)  初めまして。 ホツマツタエの中で イ…
http://buycialisky.com/@ Re:遠大なる生き方(01/09) wo kann man cialis generika kaufensnort…
http://buycialisky.com/@ Re:「ユダの福音書」(1)~納得いかなかった「ユダの裏切り」(07/04) cialis billigcialis aus chinawhy does c…
http://cialisda.com/@ Re:遠大なる生き方(01/09) homeopathic cialiscialis line prescript…

© Rakuten Group, Inc.