今までにも何度か書いたことと思いますが、日本の救急医療は「なんちゃって救急医療」です。第三次救命救急センターの看板を上げていても、夜間休日は救急専門医ではなく、各科の医師が交代で救急医療を行っているところが大半です。しかも、夜間はシフト制の夜勤ではなく、本来診療を行ってはいけないはずの宿直医が救急患者を診ているのです。
こんな状況で理想的な医療を行わなければ保険会社からも訴訟を起こされるとなれば、もう診た者負けですね。おそらく被告の香川大学は、市中病院から見たら、ずっと高度な医療をしたのだと思いますが。
AIU保険、香川大を提訴
香川大病院(香川県三木町)が適切な措置を怠ったため、交通事故の被害者に重い後遺障害が残ったとして、損害保険大手のAIU保険が同大学を相手取り、被害者らに支払った自動車保険金の半額約1億7500万円の損害賠償を求める訴えを高松地裁に起こしたことがわかった。
訴状などによると、香川大病院は2003年9月、知人運転の車で事故に遭った20歳代女性の救急搬送を受け入れた。女性は入院後、首の脱臼が原因の手足のまひを発症。女性は知人に対して損害賠償訴訟を起こし、高松高裁で約2億2600万円の支払いを命じる判決が確定した。AIU保険は判決確定までの医療費などを含め3億4876万円を被害者らに支払った。
AIU保険は「搬送時にまひはなかった。香川大病院が速やかに首を固定しなかったため、脊髄損傷が広がった」と主張、2分の1の負担を求めて提訴した。
AIU保険の広報担当者は「個別の訴訟案件については答えられない」とし、香川大の担当者は「係争中で、具体的なことはコメントできない」と話した。
医療事故情報センター(名古屋市)理事長の柴田義朗弁護士は「保険会社が医療過誤を問う訴訟は珍しい。同様の訴訟が増える可能性がある」と話している。
(2011年11月7日 読売新聞)
整形の専門医によると、麻痺の程度は打撃時にほぼ決まっていて、早く固定しても関係がないそうです。たとえ裁判で負けなくても、訴訟につきあうだけでも気が萎えるでしょうね。