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医療報道を斬る

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2011.10.13
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カテゴリ:医療
 このブログでは何度も書いていることですが、誤診自体はミスとは限りません。正しい診断が容易な所見がありながら誤診をするのはミスですが、診察をしたときには所見が無く、あとで病状が進行して初めて診断が付けられることはよくあることで、最初の診察で正しい診断に至らなかったからと言ってミスとは言えません。ですから、以下の記事を見たときにはびっくりしました。

ガス爆発で入院の女性、のどの熱傷見落とし死亡

 岐阜県立多治見病院(多治見市)は30日、県内の40歳代の女性患者に気道熱傷があるのを見落とし、死亡させる医療事故があったと発表した。

 遺族との間では、和解金4500万円を支払うことで合意したという。

 発表によると、死亡したのは、2009年10月11日に自宅で起きたガス爆発で顔や頭にやけどを負った女性。救急搬送された際、喉頭にカメラを入れるなどして医師4人が診察し、気道熱傷はないと判断、入院させた。しかし女性は翌12日、呼吸が苦しいとナースコールで訴え、緊急の気管切開が行われたが、気道閉塞による低酸素性虚血性脳症で障害が残って寝たきりとなり、10年8月、肺水腫で死亡した。

 原田明生病院長は「搬送された際、気道熱傷と診断していれば、女性は集中治療室で適切な治療と管理を行い、気道閉塞などは避けられた」と診断ミスを認め、謝罪した。
(2011年9月30日22時51分 読売新聞)


 顔面の熱傷で気道熱傷を疑わなかったのだとしたらミスと言われても仕方がないと思いますが、きちんと疑って複数の医師が診察をしています。それで気道熱傷の所見がなかったのであれば、気道熱傷と診断することはないでしょう。見出しや、院長の「搬送された際、気道熱傷と診断していれば、女性は集中治療室で適切な治療と管理を行い、気道閉塞などは避けられた」と言う発言は、典型的な後出しジャンケンです。

 見出しはともかく、医師である院長が医療者から見ておかしな発言をしているのは解せません。案の定、毎日新聞の記事を見ると、問題は最初に診断できなかったことではなさそうです。

医療事故:容体急変の女性放置 賠償金支払いへ--県立多治見病院 /岐阜
毎日新聞 2011年10月1日 地方版

 県立多治見病院(原田明生院長)は30日、頭部などのやけどのため09年10月に搬送された40代の女性が、搬送翌日に容体が急変したにもかかわらず医師が長時間にわたって診察しなかった医療事故があったと発表した。女性は低酸素性虚血性脳症のため意識不明となり、10カ月後に死亡。病院は、管理責任を認め、遺族に4500万円の賠償金を支払うことで示談がまとまったという。

 女性は自宅のガス爆発で頭部などにやけどを負って搬送された。当初の診断では気道熱傷の症状は見られなかったが、翌日に意識不明となり、昨年8月に死亡した。

 病院側は、搬送翌日に看護師が女性の容体の変化を報告したにもかかわらず、約8時間にわたって当番医が診断できなかった点について管理責任があると説明。「搬送翌日の担当医師、看護師の処置に過誤はなかった」としている。

 病院は昨年11月、遺族から損害賠償を請求されていた。医師らの処分は考えていないという。【梶原遊】


 読売の記事では最初に診断が付かなかったことが問題とされているように読めますが、毎日の記事では急変後にも診断できなかったことが問題となっていると読めます。

 気道熱傷で怖いのは喉頭浮腫です。最初はたいした所見が無くても、後に声帯が腫れて気管の入り口をふさいでしまうことがあります。おそらくこの事例も喉頭浮腫でしょう。その様な状態で8時間も放置したのであれば病院の責任を問われても仕方がないと思いますが、ほんとうに診断が付かなかったのか、私には疑問です。

 気道の閉塞自体は誰でも診断できます。でも、対処は難しいでしょう。特に喉頭浮腫は気管挿管も容易ではないですから、迅速に気管切開をする必要がありますが、これは訓練を受けていなければ出来ません。治療に当たっていた当番医というのは、シフト制勤務の救急医ではなく、翌日の勤務もする、おそらくは救急医ではない医師でしょう。要は荷が重すぎたと言うことではないでしょうか。

 結局、満足な結果を得たければ満足できる救急医療体制が必要なのです。救急専門医がシフト制を敷き、24時間体制で診療するような施設であれば、この記事の患者も助かったでしょう。でも、それだけのコストの負担を社会は許すでしょうか。





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Last updated  2011.10.13 05:33:06
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