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テーマ:レンタル映画(818)
カテゴリ:映画
![]() ■90年の映画。監督は松岡錠司。最初に見たのはもう15年以上前になるわけか。出てくる女子も男子も確かに今から見れば、みんなどことなく居心地の悪い服装やら日常風景でもある。主人公のライバル東幹久の昭和のニューフェイスのようなハンサムぶりやら、浅野忠信の本人にとっては封印したいだろうような声変わり以前の子供顔とか、言葉をかえればお宝映像の玉手箱と呼べるものかもしれない。 ■筒井君のバカ面がすごい。両手で顔を横に伸ばすと、すごくマヌケな顔が出来上がるのだが(最近はそんなことはしないが)、ゴーグルをつけてもつけなくても、この映画の中では、全編彼はそういう顔つきをしている。たとえばプールの中でひとりぽかりと浮いている彼の表情を見て、どこかで見たことがあると思ったら、松本大洋が好んで描くような純粋な男の子の顔に似ていることに気づいた。 ■そういえば、この水泳教室のババア(白川和子)とカオル(筒井君)の関係は「ピンポン」の卓球場のオババ(夏木マリ)とペコ(窪塚)の関係とダブる。松本大洋が望月峯太郎のこの原作をリスペクトしていたかどうかはよくわからないけどね。 ■女の子を好きになってしまったら、その女の子が自分のことをどう思おうが、ひたすら彼女に思いの丈をぶつけていく。彼女に他に好きな男がいようがいまいが、お構いなし。エネルギーは愛。欲望だけあって目的はない。展望なんてなくて発散だけがある。 ■単純な男子高校生の物語であるためなのか、でてくる乗り物はモノレール(単線)と単車(HONDA GB4000T.T.)のみ。千葉近郊で撮影されたという風景は(実際には見たことも歩いたこともないのに)いつか通った道を思わせるような懐かしさにあふれている。虹とか夕焼けとか、空を映すショットの美しさも見事。 ■カオルの猛アタックにノイローゼになり、過食症になってしまうソノコ役を引き受けたふたりの役者さんの心の内はどんなだったんだろう。エンドロールに太ったソノコ○○○と書かれたクレジットを見て彼女たちはどんな想いがしたのだろう。今の技術ならいっそ高岡早紀がその役さえもCGで出演する方法だってあっただろうに。 ■ラスト近くの中途半端にしか水が入っていないプールでぶつかり合うカオルとソノコのシーンがすごい。男の子は女の子をかなり本気でぶっ飛ばしているし、女の子も男の子の頬をかなり本気でひっぱたいている。いまいましいのはオマエがオレを本気で好きさせてしまったことで、アナタがワタシを本気にさせてしまったことなのよ、とばかり、20代にも30代にも出せないエネルギーの発散がそこに映し出される。 ■この映画の後味がすごく清々しいのは彼らが何も考えていないように見えるところだと思う。発展性とか、かけひきとか、損得勘定とか、持続を前提としない刹那的なほとばしり。このあと、このふたりがどうなっていってしまうのかなんてことは物語の外にある。バタアシが似合うのは10代の特権であって、私たちには相応しくはない。だって、オトナになった私たちはもっと優雅に泳ぐ方法をいくらでも知っているわけだからね。それこそ、まるで金魚みたいにね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/09/23 01:09:16 AM
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