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テーマ:DVD映画鑑賞(14212)
カテゴリ:映画
■日本で「ファーゴ」を撮ったとしたら、こういう映画になるってことだろうか。冒頭真上からのカメラが写すのは真っ白な画面。で、その右下には女性の死体。ひとりの通学途中の小学生がそれに近づいて、泣き出して走って逃げていくとすれば、それは(同じ監督の撮った)天然コケッコーの世界なのかもしれないが、この映画で彼がしたことは全然違う。
■90年代の日本の田舎にはこんな風景もあったのか。こんな不幸のどんづまりのような家族の物語もあったのか。挿入される「ロード」とか「夏の日の1993」みたいな歌が、ものすごく昭和の匂いを感じさせるように聞こえるんだが、実際はほんの10年とちょっと前の過去でしかない。 ■予測不能であること、劇的な会話が全くないこと、人間関係の説明が甚だ不親切なこと、おそらく観客より役者の方が笑いを堪えていること。それらは全て映画の弱点になりえる要素なのだけれども、それらを逆手にそれを魅力的に見せる技はこの監督の手腕なのだろう。 ■新井弘文、山中崇、木村祐一、三浦友和。脇役役者総動員で誰もが主役に見えないように演技を重ねていく、しかもみんな自然体だ。当惑の新井、気弱な山中、無気味な木村、不遜な三浦。特に山中崇の巻き込まれる男の転がりぶりが情けなくも微笑ましい。 ■不安定極まりない音楽のもたらす効果も抜群。かつてこれほど吐き気さえも共有できる映画的気分はあったっけ。途中から騙されているんだろうな思いつつ、タイトルの意味なんかどうでもいいと腹を括って見とれていたのだが、ちゃんと整合性を持ったラストを用意する手際にも感心しきり。エンディング・タイトルのボアダムスのノイジーな爆音を聞きながら実は腹を抱えて笑い転げてしまったではないか。 ■似たような事件を基にして、脚色してみましたという冒頭のテロップからして監督のフェイクは始まっていた。こんな事件聞いたこともない。こんな話あるはずがない。でもさ、じゃあ、絶対起こらないかと言われれば、断言できないスレスレで創作できてしまうこういう物語をわたしは特別面白いと思うわけさ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/01/23 11:43:43 PM
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