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テーマ:DVD映画鑑賞(14212)
カテゴリ:映画
■ガーリー(girly)映画と呼ぶにはこの映画に登場する女性たちはそれぞれ人生のとば口をとうに過ぎている感が強い。強いて言えばフィメール(female)ムービーとでも呼べばいいのか。
■フリーターの池脇千鶴、デリヘリ嬢の中村優子、OLの中越典子、イラストレーターの岩瀬塔子。20代半ばの女性4人の群像劇。それぞれ職業も違えば性格も違い、好きなものも嫌いなものも全く別々。そして映画の中で一瞬たりともこの4人が同じフレームの中に収まるショットはない。 ■こうやって価値観も容姿も根性も好きな男のタイプも信じるものも全然違う4つの人生をこれでもかこれでもかと見せつけられて思うことは、生きていくことの難しさやら生きていくことの面白さやら生きていくことの切なさの有り様なんだと思う。どの娘の人生が一番幸福なのか、どの娘の人生が一番共感できるのか、どの娘の人生が最も哀れに見えるか。一応そんなことも考えてはみるが、じゃあ、自分だったらどの娘を選ぶかと言われても返答に窮してしまうほど彼女たちの生身はとてもリアルで重たく見える。 ■彼女たちの性格描写を補強するうえでもたらされる演出が過剰すぎて目に焼き付いて困る。とりわけ棺桶をベッドにして眠る中村優子と、食べては嘔吐を繰り返す岩瀬塔子のふたりの印象は強烈。NHK朝ドラ出身二人組には要求すらできない過激さがあった。(ちなみにこの映画は中村と安藤政信のラブシーンのせいでR15指定の名誉を受けたという) ■小道具の設定も可愛らしく、池脇のアパートのベランダにあるブランコ、彼女の部屋にある透明な冷蔵庫、岩瀬のアトリエの照明器具、中村の部屋にある熱帯魚の水槽、そして無造作に置いてあるマウンテンバイクなどなど、さりげなく自分の部屋にも置きたい飾りたいアイテムが多数。そういえば岩瀬が着ていたTシャツ(フロントが「To Be A Rock」で、バックに「 Not To Roll」と書いてある。もちろんツェッペリンの天国への階段の一節だ。)のデザインが素敵だった。 ■驚いたのはデリヘリ嬢中村優子の客役で諏訪太朗、高取 英(月蝕歌劇団主宰・漫画評論家)、保坂和志(小説家)、戌井昭人(鉄割アルバトロスケット)という面々が登場すること。その誰もが一場面だけの登場であるが、これだけの非俳優的文化人を集められる監督の人脈もたいしたものである。わたしもちょっと保坂氏を見る目が変わった。 ■原作は魚喃キリコのコミック。ちなみに劇中イラストレーターを演じる岩瀬塔子は彼女自身。実はこの映画は原作者を主役に見立てたフィクションであるという見方もできる。そして脚本は狗飼恭子。かなりさりげなく美しいセリフ多数。残念ながらDVDでは相当ボリュームを上げないとはっきりと聞き取れないところ多し。 ■結局事件らしい事件など何も起こらず、彼女たちにも劇的な変化などは見られない。じゃあ見ているこっちは何を感じたのかと聞かれても、(色々感じたのであるが、)これといってここに書き残すようなコメントなどない。でもそれじゃ、この駄文も締まらないので無理矢理まとめるならば、女の子はイチゴが乗ったショートケーキが好きだって事かな。そしてケーキは英語ではケイクと発音する。それを漢字に当てはめれば警句となることも覚えておくに越したことはない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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