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テーマ:大河ドラマ『篤姫』(422)
カテゴリ:篤姫
■演出家との相性というのかな、この堀切園ディレクターの監督した回はこの作品の中でもかなり印象に残る傑作が多い。「日本一の男」「女の道」「妻の戦」「将軍の秘密」、そして今回の「徳川の妻」。おそらく前半のハイライトとなる次回もまた、順番でいけば彼の演出となるだろう。
■ハンディカメラによる不安定な画面、スローモーションによる印象的な動き、クローズアップの多用、独特のカメラアングル。色使いの巧みさ(今回大老選手権の際のふたりの着ていた朱色の着物のコーディネートは出色)今回も面白かったのが、突然将軍に会うと言いだし、表に向かう篤姫を追いかける女たちのシーン。こういう緊急時に備えて、足の速い年寄りもリクルートしておかなければならないと滝山がその後思ったかどうかは知らないが、後ろから何回も声をかけられるのは本寿院様ばかりではなかった。 ■今回の音声さんはかなり気をつかったことだろう。前半の幾島にマイクレベルを合わせたら、おそらく他の登場人物のセリフはほとんど聞き取れなくなってしまうだろうし、通常通りのボリュームならば、彼女のセリフの大きさに視聴者からはクレームの嵐。それほど、今回の松坂慶子は気合いが入っていたし、篤姫の最後の説得に全力を尽くした。稲森いずみとの対決も火花散っていたし、ああ、大奥はこれでなきゃ、なんて思って見ていましたよ。 ■薩摩の下級藩士たちの集まりもいよいよ自分たちの出番という勢いに溢れていた。なんだかそんなシーンを見ながら、まるでのだめのSオケのようだと思ったのは、その中に峰と大河内の姿が見えたからという理由だけではない。彼らのシュトレーゼマンは高橋英樹だと考えれば、打倒Aオケも打倒幕府のように見えたりする。ああ、篤姫もいずれは彼らを敵にまわすことになるんだなぁ。ホームがアウェイでアウェイがホームだ。 ■そんなのだめの終盤のハイライトは千秋が彼女を後ろからハグするシーンだったが、今回のラスト5分の家定と篤姫のシーンもこれから先、何度も何度も思い出されることになるだろう名シーンだった。「幕府もハリスも将軍も、そんなものが何もないところで、そちと一緒にいたい」「鳥に生まれかわるより人がいい」。もう聞いていて、どうにかなってしまうくらいクラクラするセリフの数々。もしも、わたしがあおいちゃんだったら、言葉だけで妊娠してしまいそうだ。そうなれば例のお世継ぎ問題も丸く収まるというのに。 ■まあ、冗談はともあれ、このふたりのシーンがいつもかなり印象に残るのは、堺君とあおいちゃんのセリフの間が非常に素晴らしいせいだ。脚本家もこの場面に命をかけている。そして演ずる役者も抜群のタイミングと相性でそれを活き活きとこなしている。宮崎あおいが今夜見せた幸せの絶頂のような微笑みはこの作品の肝になる。彼女を抱きしめた格好の堺雅人の不安な表情は本当にこの女性を失いたくないという気持ちに溢れて見えた。 ■そんな心あたたまる回を経て、奈落の底に突き落とされるかのような次回、篤姫は自分の足で立っていることができるだろうか。幾島との決裂はともあれ、薩摩の殿様、まして最愛の公方様まで。そんな流れを感づいてしまっているからこそ、ふたりの寝室のシーンがつらい。涙腺が緩むのはわたしだけではないよね。はたして今週のNHKは次回に備え、4年前と同じようにまた番宣を流すのだろうか。「あの笑顔にもう会えない」あの時のキャッチフレーズはまだまだ生きている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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