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カテゴリ:真田丸
■実際、真田昌幸がどのような経緯で織田信長側につくことを決断したのかはわからないが、あの草刈正雄のように息子に紙縒りを引かせて赤か黒かどちらか出た方に命運をかけたわけはないだろう。しかし決断というものはそんな一種のギャンブルのような選択でもあり、何の疑いもなくどちらか一方を選ぶという行為はそもそもそういう名では呼ばれない。
■武田勝頼もまた、退路を断たれ苦渋の決断をする。父が築いた一切の名誉と領地と家来を剥奪された息子の悲哀について同情してみる。一族の歴史を自分が途絶えさせてしまうという不名誉について考えてみる。武田さんとこの坊ちゃんがさあって軽い感じで噂してくれる近所の人が現れるには300年早かった。生まれた時が悪かった。ちなみにその父、信玄役は林邦史郎氏。昨年10月に亡くなった大河ドラマ随一の立(殺陣)役者。 ■どうやら三谷は序盤の攻撃対象を高畑淳子にロックオンしたようだ。彼女が付けると泥もまたドロホルンリンクルに見えなくもない。草笛光子には大泉洋の声が耳に入らないという部分はきっと今後何かの伏線になっていると思う。木村佳乃の剛速球の明るさといい、群像劇の前半に人物の一面を殊更強調するという方法は最初から喜怒哀楽全部見せてしまうよりずっと効果的だと私たちは知っている。 ■裏切りに優劣をつけるとするならばその判定は誰が行うのだろう。褒められたくて参上したぬっくんが卑劣な男と罵られ信長の嫡男に成敗されても違和感がないのはあの情けない表情が天下一品だからである。彼にもまた家来がいて、一族を守ろうとする責任があった。だから生き延びるためにとった決断がある者からすれば裏切りに見えたに過ぎないのだ。 ■これから内野家康の手のひら返しを何回、目にすることになるのだろう。信長の野望に比べれば、今はまだ乱世向きには見えない小さい男だが、何年か先にやってくる長期政権の礎を築くだけの資質はこの頃からきっと備えていたはずだ。今回の家康と側近本多正信のツーショットは、どこかの国の総理大臣と官房長官の姿に見えなくもなかった。ただ彼が武田勝頼の死の知らせを聞いて「ちっともうれしくないのはなぜだ」ともらした感情は紛れもない本心だったと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016/03/06 09:58:06 PM
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