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カテゴリ:夫
入院している夫の
ベッドと窓の間にできた1畳に満たない狭い空間の床の上に 20日間、 無理を言って泊まらせてもらった時のこと。 お隣の部屋の患者さんは、75才くらいのお爺さんだった。 私が、病棟の端っこにある図書室に行き、帰ってくると 必ず、このお爺さんに部屋の前の廊下で出合う。 5日ほど、そうこうしていて思ったのは、 ひょっとして、この人はストーカー? いえね、 私も、そーとーの婆さんだし、 病院の、 まるで、ホームレスの巣のような床で暮らしてるし、 すっぴんで、髪もでたらめで、風呂にも入っていないから、 いやが上にも、薄汚い婆さんだというのは自覚しています。 ストーカーうんぬんだなんて言ったら、人様に笑われる。 ストーカーされる女か?あはは…って。 しかし、 私が、廊下に出て、帰ってくると、 必ず立ってるんですよね。そして、じ=と、私を見る。 体が縮まったような形で、額には、ひどくつらい人生の深い皺をよせ、 引っ込んだ小さな濁った奥目で、私を、じ=と、見る。 歩幅10センチくらいで、よちよちよちよちと歩くのだが、 すごく早い。何だか恐ろしい。だんだん気持ちが悪くなって、 私は急いで部屋に逃げ込むようになった。 それからは、 部屋を出る時は、コトリともいわないように、 そ~~っとそ~~っと、しずか~~~~~に、 出て、ドアを、キィとも鳴らないように静かに静かに閉めて、 隣のお爺さんの部屋の前を通らず、 ぐるりと回り道をして、出かけ、そして帰ってくる。 と、 ちゃんと、廊下にたたずんでいるお爺さん。 何なの? 変でしょ? すごく鋭いセンサーを持っているのですよ。 その後 私達が退院する3日前くらいに、 初めてその人の部屋にお見舞いの人が来て、 長々と居られたみたい。 その後からは、ぜんぜん部屋から出てこなくなったのも、不思議。 お爺さんも、さみしかったのかもね。 かわいそうなお爺さん。逃げたりしてごめんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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