建設の未来を思う
税理士会所沢支部の岸野です。最近は急に冷え込んで来ましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。年を重ねるごとに手先、足先からきんきん冷えるようになり、益々冬が嫌いになる今日この頃ですが・・・土曜日に、仕事で関与した病院の新築竣工祝賀会にお招きいただき、栃木まで行ってまいりました。耐震だの生命だのと言いながら、上へ上へと高いものを作り続け、環境だと言いながらスクラップ&ビルドを繰り返す、人間は懲りないものです。などと日頃から思いながら、やはり新しい建築物というのは興奮や期待を抱かせ、現代人に希望を与える力があるのは確かです。そのようなことで、新築病院を見ながら、周囲の皆様と様々な建設談義に花を咲かせてきたところですが・・・先の震災やオリンピック決定以来、日本中の建築価格が高騰していると言われ続け久しいところです。この建築価格の高騰には様々な要因があると言われていますが、実際のところはどうなんでしょうか。(1)現場作業員の都市部、復興地への偏在による人件費の上昇(2)建築需要そのものの増加による建築価格そのものの上昇(3)数年来の円安による輸入鋼材価格の上昇(4)好景気(比較的)による地価上昇の影響などなど、複合的な事情によっていると思われますが・・・実は、建設価格が全ての建設領域で高騰しているわけではなく、鉄筋鉄骨コンクリート造の建物において、顕著に値上がりしているそうです。他の木造、鉄骨造、プレハブなどの建物については、それほど価格は上がっておらず、鉄コンとの価格差が広がっているようです。確かに、上に向けて高いものを作り続けるならば、耐震、耐火を満たすために鉄筋鉄骨コンクリートの堅牢な建物が必要なのでしょう。そして、ある一定の地域に住居や施設を集中させるなら、上に向けて高いものを作ることは避けられません。しかし上に向けて作るものは、利便性や付加価値とともに、コストやリスクが伴うわけです。そのことは、例の「杭打ち問題」でも明らかで、それなりの重量物を置くならば、地盤にもコストとリスクが内包されます。価格も背丈も高いものを作って壊すから経済が回る、と言えばそれまでです。しかし、我々の技術革新は上へ、一点へ、ではなく、もう少し異なる表現はできないのかと、常に思うところです。耐用年数は短くとも、低めで広くて、薄く軽く強固で、メンテナンスも容易で価格が安い。現代技術であれば、そういう贅沢な要望を満たすこともできると思うのですが・・・なお、冒頭の病院は鉄筋コンクリート造の4階建てで、病院と言うのは非常時の生命を守る観点からも、すべからく鉄コンにすべきという病院建設の常識があるようです。それは実際問題であり、人が最後に駆け込む場所ということであれば、それなりの堅牢さを求められるものなのでしょう。しかし、全国的、一般的には日本の建築は地震大国であること、人口構成の変動が大きいこと、鉄鋼資源に乏しいことなどを踏まえると、「上を目指して硬くする」だけでなく、「横にしなやかに」という考え方も必要なのでないでしょうか。以上は素人考察ですので、専門的には様々な誤謬もあるでしょうけれど、新しい建物を見てふっと沸いた思いを述べてみました。もう12月、忘年会やらご挨拶やらで楽しく忙しい1ヶ月が始まります。健康に気をつけながら、年の瀬目指して邁進していきましょう。岸野康之 拝