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江戸東京ぶらり旅

江戸東京ぶらり旅

燃えない無縁寺<池之端>

燃えないお寺<無縁寺>


 無縁坂は池之端の旧岩崎邸庭園の敷地の北にある,不忍池から東京大学方面へ向かう坂です。森鴎外(林太郎)さんの小説『雁』の舞台となった坂としても知られていますよ。鴎外さんは池の北側にある現在の「水月ホテル鴎外荘」に住み,この坂を上り下りしたのです。でも多くの人には,さだまさしの作詞・作曲でグレープが歌った「無縁坂」の方が知られていますけどね。

無縁坂.JPG



 この坂の名,写真の左側にあった称仰院(現在,講安寺)が「無縁寺」だったために,坂も無縁坂と呼んだのです。この周辺は武家屋敷が多かったので,武家に縁のある坂という意味で「武縁坂」とも言われたようですが。

 写真の右側は榊原家下屋敷(別荘)跡,明治からの旧岩崎邸でコンドル設計の洋館は国の重要文化財となっています。問題のお寺はちょうどこの写真の左側にあります。1708年にできた本堂は写真のように土蔵造りのお寺なのです。このような作りはめったに見ることはできないでしょう。外壁が漆喰(しっくい)で何度も塗り込められています。江戸では火事が頻繁に起き,1703年から27年間に18度も,お寺の近くまで火が来たそうですよ。それならば類焼を未然に防ぎましょう,危機管理,防火対策のつもりでこのようなお寺の造りになったのですね。銀座も防火対策で煉瓦づくりにしたのと同じ発想です。お寺には四代住職顕誉の防火の戒めの遺言「類火は格別,寺内門前共に自火の用心専一に致す可き事」という古文書が残されているそうです。

 文京区教育委員会は言います。「寺門,客殿,本堂,庫裏に至るすべてが旧規をよく保存しまれにみる第一級の文化財といえよう」と。そうでしょうが,漆喰で塗り固めたのではお寺という感じはしませんね。なんでも見た目が第一,なのかな?

講安寺.JPG


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