ル・ジュー・ドゥ・ラシエットでランチ、ル・ジャルダン・デ・サヴールで夕食
朝から代官山でミーティング。折角代官山だからと、2月にオープンしたばかりのル・ジュー・ドゥ・ラシエット(渋谷区恵比寿西2-17-5 サンビレッジ代官山2F 03-6415-5100)でランチにした。オコションローズが改装してレ・プレ・ディル・マルジュとなってわずか1年ちょっとで井上シェフが高松に移られることになり、オーグードゥジュールグループの4店舗目として内装もそのままにル・ジュー・ドゥ・ラシエットとして生まれ変わった店。シェフは、ルブルギニオン、ミシェル・ブラスそしてフランスのトロワグロ等を経た下野氏。サービスは、びっくりしたことに、オーグードゥジュールの岡部さんの後任として、ルブルギニオンの支配人をしていた中村氏。彼は、こちらの斜め向かいにあるラブレーにもいらした方だ。オコションローズ時代は、まるで喫茶店のような内装だった記憶しかなかったが、びっくりするほど様変わりしていた。趣味の良いシャンデリアに、落ち着いた床材、奥には4人用の個室、そしてセンターには8人用の個室があり、かつサービスしやすいように鏡を多用して死角をなくすよう考えられており、オーグードゥジュールグループの中では、最も高級感溢れる店になっている。ランチは3500円(前菜、魚、肉、デザート)と5500円(前菜2品、魚、肉、デザート2品)の2種類と他のオーグードゥジュールグループの店よりワンランク上の価格帯になっているだけでなく他のオーグードゥジュールグループの店と異なりサービス料もチャージされる。オーグードゥジュールグループの店の料理は、会話を邪魔しない美味すぎない料理に特徴があると思うのだが、その点でもこの店は異なり、ル・ジュー・ドゥ・ラシエットの料理は食べ手を真剣にさせる料理だと思う。私は3500円のコースにした。食べたものは以下の通り。前菜:アスパラガスの冷製クルヴェットグリーズのジュレを添えて(ジュレの美味さ、甲殻類のソースともに完璧な清々しい料理)魚:スズキのポワレ 豚の背脂風味 人参ソース(スズキの火加減もよろしく、パリパリの皮の上に薄くスライスした豚の背脂が乗せられている。甘い人参のピュレ仕立てのソースと一緒に食べるのだが、いかにも今フランスで流行っていそうな構成だ)肉:ゆっくり火を入れた鶏胸肉のソテー くるみバターソース(しっとりと仕上がった鶏胸肉に、ガーニッシュには中国野菜が添えられていたりする)デザート:インカのめざめのミルクレープとオリーブオイルのグラス(インカのめざめと言うのはジャガイモの品種らしいのだが、サツマイモのような甘さのあるものだった。優しい味わい)オーグードゥジュールグループの他店との店と異なり、真剣に食べさせる料理という表現はわかりにくいかと思うが、オーグードゥジュールやメルヴェイユの料理は、シンプルな美味さに特徴があると思っている。それに比べ、ル・ジュー・ドゥ・ラシエットの料理は香りの重ね方を初めとして、繊細かつ複雑な味わいに特徴があると思う。その意味では、良くも悪くも食べ手に緊張感を強いるように思える。それ故、料理を口にした瞬間に、一瞬会話を中断させるように思えるのだ。女性を対象としたオーグードゥジュールグループの他の店と異なり、ちょっとマニアックなプロ向きの料理の印象を受けた。私は好きだけど。奥の個室では、子連れでもOKだそうだ。今のフランスを感じさせる店として純粋に料理を楽しみに来たいと思った。夜はお客さんと食事の予定になっており、てっきり和食だと思っていたのに、フレンチのリクエスト(と言ってもゴチで店は私が選べというリクエストなのだが)。初めからわかっていたら昼はフレンチにしなかったのにと思いつつ、きっとカウンターフレンチを喜んでくれるのではと思い、軽い気持ちでル・ジャルダン・デ・サヴール(中央区銀座6-16-11 銀座山本ビル 1F・B1F 03-3542-2200)を選択した。こちらは一度ランチで利用したことがあるだけだったが、夜は昼とは次元の異なる圧倒する美味しさだった。何しろ、香りの良さ、酸味の使い方を初めとしてバランスの良い料理なのだ。夜は、3皿のコース \10,000~(アミューズ、前菜、魚料理、肉料理、デザート、コーヒー) と4皿のコース \13,000~(アミューズ、前菜2品、魚料理、肉料理、デザート、コーヒー) の2種類。私は3皿のコースにした。アミューズのウイキョウとホタテのムース仕立ては優しい美味しさ。酸味とのバランスが非常に良い。前菜はミシェル ブラスのスペシャリテ温野菜のガルグイユ。これはやはり美味しい。洞爺湖に行かなくてもガルグイユが食べられることが純粋に嬉しい。魚は、真鯛のポアレ。カリカリに焼いた皮に決まった塩加減。ガーニッシュの野菜の酸味といいメリハリの効いた熟練の味だ。そして肉は、窒息鳩の料理としたのだが、これが信じられないほど美味いものだった。ジビエのような濃厚な血の香りのする鳩肉は、火加減も塩加減もそしてブータンノワールのような濃厚な味わいの内臓を使ったソースといい完璧な仕上がりでマジで美味い。これまで食べた鳩料理の中ではベストに近い味わいだった。そしてデザート。さわやかなレモンのデザートは清々しい香りで、そしてフォンダンショコラ。これがマジで美味い。ミシェル ブラスのスペシャリテはクーランショコラだが、それを進化させたような一品で、コニャックの香りを含んだ濃厚な温かいフォンダンショコラは、クーラン以上に刹那な罪深い味わい。常々、最近の若手シェフの店は、前菜は美味いものの、メインに力のない店が多いと思っているのだが、この昂揚感は50代前半の脂の乗り切ったシェフならではのものだと思う。この世代のシェフが、厨房から離れコンサルに転向してしまう傾向のある昨今、中澤シェフには是非とも第一線で頑張って欲しいと心から思った。レストラン・飲食店blogランキングへ!料理・グルメブログランキングへ!