カテゴリ:忙中閑あり
数年前のある晴れた休日だった。12月だったと思う。
突然、そいつが我が家にやってきた。断りもなく、家に居座っていた。 もちろん、家の中ではなく、家の外だ。そいつは、ベランダの植え込みの 影に潜んでいて、初めて見たときは、その大きさに驚いたものである。 「なんだこいつは、でかい! ちょと、普通じゃない。」 発見してすぐに家人、娘をを呼び、観察した。 恥ずかしそうに下のほう、葉の陰に隠れたそいつは、大きいバッタだ。 暖冬とはいえ、もう季節は大きく冬に傾いていた。 晴れた日は、我が家の「金のなる木」の頂上近くにあがり、葉を食べた。 夜になると、葉陰に隠れるように、寒い風から隠れている。 気がつくと、年を越して、我が家滞在暦も、1ヶ月。 もしかすると、冬を我が家で越すつもりか?いつも、じっと隠れている。 なんか大きいくせに、恥ずかしそうにしててかわいいね。 名前つけなきゃ!うちで、大事にしてあげるの。と、娘が言う。 あれはきっと、今年、SEXできなかったオスだよ。 SEXして子孫を残すと、バッタって死ぬんだから・・・。違ったかな? だから俺は死なない!などと、私もバカなことを言って、逆に家人に バカにされてしまった。 でも、きっとそうだ。であれば、俺が守ってやろうと決めた。 天気予想で大雪だった日。 俺は、金のなる木にビニールをかけた。大きいごみ袋を、いくつも つないで、苦労してやっとかけた。1番上には、空気抜きを明ける。 暑くなりすぎないほうが良いと思った。 2月だったか、3月だったか忘れたが、 別れは突然やってきた。いつものようにベランダに行き、あいつは どこにいるかな、元気かなと探すといない。 妻に聞き、娘に聞いても、「知らないよ、いるんじゃない」とのこと。 そりゃないだろう、もう3ヶ月以上も一緒に暮らしているんじゃないか。 すこし、怒った。それで、娘と二人、ベランダを全部探しつくした。 やっぱりいない。 寂しいような、旅立ちを祝わないといけないような、複雑な気持ち。 やっぱり寂しい。 いつか、あいつの子や、孫が、うちに遊びに来るとよいな、と思う。 それにしても思い出すとき、大空を見上げるのはなぜか。 ふと、不思議に思った。 暖かくなった4月。 「あいつは、きっと今年生まれの若いメスとSEXをやりまくってるぞ!!」と バカなことを言って、今日も、家族にバカにされた。「お父さんのH!」 あれから数年たった。 今、思うと懐かしい思い出だ。最近の季節の変わり目に、ふと思い出した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.03.15 12:53:59
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