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ゲーム理論(ゲームの理論)というのが流行ったことがあった.今も広く受け入れられている理論なのかどうかは知りません.本日は突然この理論のことを思い出したので,それについて書いてみる.
ゲーム理論の概略はウィキペディアとかで調べられると思うけれど,話のいきがかり上,とりあえず説明します. まず,ゲームのような場面を想定する.ゲームの相手は「人」でも良いし,自然現象のようなものでも構わない.自分がどういう行動をとるか,その選択肢がm通りあるとする.対してゲームの相手がどういう行動をとるかの選択肢がn通りあるとする.そうするとm×nの表ができる.その表のマス目1つごとに,自分の「利得」を書いてみる. たとえば集団でバスを借り切ってバードウォッチング大会を計画したとする.君はそのリーダーである.前日になったが,天気が崩れそうな雰囲気がある.それでも大会を実行するかどうか,それを決定せねばならない.中止する場合,夕方5時までに連絡すれば,バスのキャンセル料は少額で済む. いま君の眼前には,5時までに中止を決めるか,このまま実施に向けて突っ走るかという,2つの選択肢がある.一方,相手(翌日の天気)には「雨が降る」「降らない」の2つの選択肢がある.こうして2×2の表ができる. 次に「利得」を考える. 大会を実施する・雨は降らない の組み合わせを10ポイントとしよう. 大会を実施する・雨が降る の組み合わせは最悪.参加者はがっかりするし,しかもバス代を払わねばならない.がっかりプラス支出で「利得」は -5ポイント. 注釈その1.「利得」と呼ぶけれど,負号がついているから,じつは5ポイントの損失です. 注釈その2. 雨が降ると双眼鏡が使えないのでバードウォッチングは不可能に近い.さまざまな野外活動の中で,とりわけ雨に弱い行事です. 続けます. 中止を決める・雨は降らない の組み合わせなら,-3ポイント程度かな. 中止を決める・雨が降る の場合は,-1ポイント. というふうにして2×2の表が完成する.さて大会を中止すべきでしょうか? 1つの判断基準としてミニマックス原理というのがある.君の眼前にある選択肢の1つ1つについて,「最悪の結果」を考える.それらを比べて,最もマシな結果となる行動を選択する. 上記の場合だと,大会を実施した場合の最悪の結果は -5ポイント.中止を決めた場合の最悪の結果は -3ポイント.後者のほうが,よりマシな結果であるから,この場合は「中止を決める」のが正解. というのが,ミニマックス原理が示す答である. もっと現実に即して言うと,雨天になる確率が,たとえば70%だったとする.そうすると「利得」の期待値は, 「実施する」場合. 10 × 0.3 + (-5) × 0.7 = -5 「中止する」場合. (-3) × 0.3 + (-1) × 0.7 = -1.6 となる.つまり「中止する」ほうが利得が大きい(損失が少ない)ので,この基準から見ても「中止する」のが正解となる.もちろん雨天になる確率の数値によっては,実施するほうが正解となる. というのが「ゲーム理論」です.学生時代に少しかじった程度の知識なので,あまり信用しないでください. さて,問題は「利得」の数値だ.何ポイントとか簡単に言ったけれど,実際には様々な要素が関係しているだろう.それらを考慮に入れて,最も妥当と考えられる数値を設定せねばならない.上記の例では,(1) 参加者の満足ないし失望の大きさと,(2) バス料金またはキャンセル料,の2つを考慮してポイントを設定した. ゲームの理論は,もっと大きな問題を扱うこともある.しかし基本的な手法は同じである.可能な選択肢のそれぞれについて,予想される利益や損失,リスク,必要な経費,などをまとめて「利得」のポイント数が設定される.妥当な数値が設定されたら,どの選択肢を採用すべきかは自ずと明らかになる. ところで,私の理解不足かもしれないけれど,その事業を進めるために「今までにかかった経費」は,ポイント換算は難しいと思う. 実社会では,少なくとも日本では,「今ここでやめたら,今までの努力(出費)は何だったんだ」という議論をよく耳にする. 「ここまでやった以上は,最後までやり通すべきだ」. 「今までの努力(出費,犠牲)を無駄にしてはいけない」. そうだそーだ,と思わず同調したくなるが,冷静に考えて欲しい.続行か中止か,どちらの選択肢を選ぶべきかの判断は,ゲームの理論では,予想される「利得」によって決められる.その判断に際し,「過去の投資」はほとんど何の意味も持たない.「ここまでやった以上は~」という議論は,精神論としては理解できるが,エコノミスト的には全く無用の雑音でしかない. というふうに思ったわけです.八ッ場ダムの建設続行を決めた人たちは,どういう根拠でそう決めたんでしょうね. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 23, 2011 10:28:32 PM
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